天に星 地に花 人に愛を(7)
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(ム!)
ホウ(犼)は突然視界に現れた黒いゴーレムにただならぬ気配を感じて急停止した。その直後、目の前を魔力のこもった閃光が側面からかすめ通り過ぎていった。
そして、寄生しているホウ(犼)の魔力によって強固に守られたゴーレムの側腹に僅かだが一文字の傷が入っている事実に深く驚嘆する。
(貴様は何者だ!)
ホウ(犼)の問いかけに黒いゴーレムは何も答えず静かに剣を構えた。
(・・)
ホウ(犼)も無言で自身の最高の焔をその両腕に纏い構えを取る。
(先程の攻撃はバットウジュツだったな。フジワラの徒弟か・・)
一刻の間、互いに機をうかがっていると黒いゴーレムの後方からコンコン(龔工)を切り裂くシャトルーズの膨大なオーラが届いた瞬間、ホウ(犼)は思わず技を繰り出していた。
ホウ(犼)のその前肢の爪から発せられる二筋の蒼白い刃は刹那の時間差をあけ黒いゴーレムの「次の手」のさらに先を読み襲い掛かっていった。
「斬!」
ラーバンはそう叫ぶと二筋の蒼白い刃に向かって跳び身体をねじる様にその刃の僅かな隙間に跳び込んでいき、強固な魔力によって守られたアダマンタイトが蒼白い刃にふれ削られてもなお突き進み、ホウ(犼)の横を一瞬で通り過ぎていった。
そしてその直後、ホウ(犼)の片腕が宙に舞う。
(片腕を犠牲にして剣すじを変えなければ真っ二つだったな・・。フジワラの徒弟、我が身命を賭してでも葬る価値がありそうだな)
更に残った前肢の爪に集約された魔力に包まれた蒼白い刃を細長いレイピアのような形状に変化させアンガルドの構えを取る。
対するラーバンの黒いアダマンタイトゴーレムも平刺突の構えを取った。
間髪入れずにお互いが同時に技に入ると互いのゴーレムの身体の一部が吹き飛ぶ、そして再び対峙する。
数回続いた後、黒いゴーレムが構えを正眼の構えに戻す。
「まだ共有されたくなかったのだがな」
ラーバンはそう言うと突きを放つ。それは只、素早いだけの平凡な一重の突きのようにホウ(犼)には感じられたが。
(多重突き!)
そう認識した時にはゴーレムに寄生していたホウ(犼)自身のスライム身体は最後の五段目の突きによって貫かれていた。
満身創痍のアダマンタイトゴーレムの中でラーバンは呟く。
「フジワラだったら八、いや九段は入っていた。理論は共有できても鍛錬を怠るとフジワラには遠く及ばんよ」
そう言うと背後で感じられたシャトルーズのオーラを思い出し再び呟いた。
「この先、鍛錬を重ねたフジワラと同等の存在が現れたらその時、義弟なら必ず超えてみせるだろう」
合流するその時までラーバンの黒いゴーレムは倒れることなくその場で不動の姿勢を取り続けていた。
最終章七話目となります、どうか最後迄よろしくお願い致します。
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