雨過天晴(うかてんせい)〔8〕
更新いたしました。
ランディアの海底迷宮の奥底では二体のスライムによる会話がなされていた。
(バイゼー(白澤)、あれも欠陥品なのか?)
バイフー(白虎)が転移紋のある部屋でバイゼー(白澤)に問うていた。
(あれらは、繁殖力が無いものですからな。まだまだ只の試作品に過ぎませぬ)
バイゼー(白澤)が少し残念そうに答えると、バイフー(白虎)が少し間をおいて再び口を開く。
(チーリン(黄麟)とチューチュエ(朱雀)がこの地に戻ってくる。なんとしても再び我らの元へと取り戻さなければならないからな)
(それは、良い知らせでしたな。私もその時の為の準備を進めるとしましょう)
(ショワンウー(玄武)も喜ぶだろう。大陸の浮上と共に全てが揃うのだからな)
チーリン(黄麟)とチューチュエ(朱雀)、シャトルーズとビルの奪還はバイフー(白虎)にとって全ては自明の事としてその青写真を思い描いていた。
アイによるラーバンとのゴーレムによる手合いは、お互いの技量をぶつけ合う死闘に近いものとなっていた。
「我流の太刀筋もあり、その中にも見え隠れする武尊の太刀筋、面白いね」
両刀の薙刀を振るいながらアイは緊張感のある死合いの最中にあってもなお笑みを浮かべていた。
「アイ、力を貸そうか?」
アルが心配そうに声をかける。
「大丈夫だよ、まだ今の内はね。一年先・・いや半年先にはアルの力が必要になりそうだね」
そうアルに声をかけながらもラーバンの一瞬の隙ともいえない程の挙動をついて薙刀がアーバンの駆るアダマンタイトゴーレムの剣を払えのけると打ち捨てさせてみせた。
「ここ迄だね」
アイの言葉にアーバンは少し悔しそうな口調で答える。
「・・ありがとうございました」
一礼すると皆の見守る輪の中には戻ることなく無言で背後の草原の彼方へと向かって行った。
「次は実力を見極めたいから、ビコウ、シャオ、チョゴ、三人纏めてかかってきなさい」
その言葉に三人はお互いを見つめ合いながら頷き、アイの元へと向かって行った。
手合いが始まるとビコウは細く長い金棍棒を使って、シャオは半月刃の付いた杖のような形状の武具で、チョゴは九歯の熊手の様な武具を使ってそれぞれが立ち向かっていった。
「良いか!この様な長い棒状の武具は、ゴーレムの手からは滑りやすい通常の武具と違って基本は両手を広く使う為に打ち捨てさせにくい、しかしこの様に持ち替える際や片手で技を繰り出す際等では可能となる」
アイはそう言いながら相対するビコウ、シャオ、チョゴ、それぞれの武具は次々にその手から離れ空高くに舞い上がっていった。
「なっ!」
三人の声なならない念話の叫びがアルの中継により周りで見守る皆のゴーレムの中にも響き渡っていった。
アイの、皆の師匠としてのゴーレムによる実戦形式の手合わせは更に続いていった。
新章八話目となります、どうか本章もよろしくお願い致します。
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