雨過天晴(うかてんせい)〔5〕
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「そうか、あの者が噂の聖戦士であったか」
トルバリアの報告にカバック将軍は頷きながら答えた。
「その上で国家が失われてしまった東の大陸の使者として話を聞いてほしいとの事です」
「東の大陸の使者か」
「はい」
更に頷きながらカバックはトルバリアを見つめながら言葉を続ける。
「良い手合わせであったな」
「恥ずかしながら全てにおいて格上の相手でした・・」
「老師の最後のそして最も秀でていた弟子と言われ続けていたお前の口からその様な言葉が出る程なのだな」
「亡き師匠に合わせる顔がございません。精進がまだまだ足りておりませんでした」
「より高みを目指したいか?」
「はい、このままでは終われません」
「ならば、会い話を聞くべきだな」
「ではその様に伝えてまいります」
「ここは一旦全軍、駐屯地に引き返し、そこで会談を行う」
「はっ」
トルバリアは自身の純白のゴーレムで一礼すると、再びアキラ達の元へと引き返していった。
獣人の国の駐屯地で行われた会談でアキラはこれ迄に知りえた西の大洋に沈む幻の大陸「ランディア」の海底迷宮とそこに存在するスライム族について詳しく述べ、更に彼等が過去からこれまでに行ってきた出来事を蛹人の出現まで語った。
「聖戦士殿、つまり我々は「ランディア」のスライム族によって異邦人をベースに創り出された実験体だというのか?」
カバックの質問にさらにアキラは共闘に繋がる一つの結論を述べた。
「はい、彼等は元々はゴーレムに寄生し手足を得て、更にその長命種である特性を生かし魔法知識とそして我々の居た世界の科学知識をあわせ持つ異形の知的生命体であり、この世界では神の様にふるまってきていました。そして、この前の災禍と蛹人の件で私達は一つの結論に達しました。彼等をこのままにしておく訳にはいかない、この世界はいつまでも彼等の実験場ではないのです」
この会談に出席していた者達は一斉に騒めき始め、カバックも目をつむりながら天を見上げていた。
暫く間を開けた後、アキラは頭を下げながら再び口を開く。
「どうか、我々と共に戦ってほしい、彼等を倒し得る戦士が必要なんです」
その言葉にカバックは再び目を見開きアキラを見つめながら答える。
「神と呼ばれていた者へ戦いを挑みたいと言うからには勝算はあるのだな」
「はい、最後は彼等にイグドラシルの守護神と呼ばれていた五体のゴーレム同士の戦いになると思います。彼等にチーリン(黄麟)と呼ばれていたシャトルーズとチューチュエ(朱雀)と呼ばれていたビルの力を信じてほしい」
「神を倒し得る戦士か・・。我々にも可能だろうか?」
カバックの問いかけに今度はアイが答える。
「私が必ずその領域まで鍛え上げますので、どうか良い戦士を選抜して頂けないでしょうか?」
また暫く間をおき、ついにカバックは決意を示した。
「君達の言質の全てを東の大陸の使者のものとして認め、王の許可をえ次第、選抜作業に入る事としよう。この世界をかけた神々との戦いが始まるのだな」
将軍職に就くカバックの知性と認識力の高さに裏付けされた、その態度と決断にアキラは頭が下がる思いでいた。
新章五話目となります、どうか本章もよろしくお願い致します。
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