雨過天晴(うかてんせい)〔4〕
更新いたしました。
ヤガーのどす黒く荒々しい野生の剣とは違い、トルバリアのミスリルゴーレムがふるう剣は美しささえ感じる正統派の騎士がもつものと同質のものだった。
「凄い、何処で学んだ剣なんだ。明らかに俺達の世界の西洋の騎士が振るっている騎士武術そのものだよ」
アキラが驚きながらも己の剣技に集中していく。
「たしかにアキラ達異世界人達がふるう剣とも、この世界のエルフ族がふるう剣とも違います。ましてや獣人族の冒険者たちが使う剣とも違いますね」
チャアもアキラと同じ様に感じているようだった。
「この剣は誰から学んだんだ」
アキラは両手剣でトルバリアの大剣をいなしながら叫ぶ。
「・・随分と余裕が有るのだな」
剣をふるいながらトルバリアが少し悔しそうに答える。
「この剣の型は俺達の居た世界のものだ」
更にアキラは問いかけ続ける。
「ふむ、基本の構えはLangortか」
二騎が闘っている上空でアイは冷静に観察していた。
「Zornhut!」
「vom Tagに構えなおして」
「次はAlber」
「OchsいやEinhornか」
「さらにPflug」
「なかなかだ、獣人の国にも武術をもたらした者が居るのか」
様々な西洋騎士武術の型を屈指して闘うトルバリアをアイは微笑みながら見入っていた。
「これも躱すのか?」
Schlüsselの構えから繰り出す彼女の誇るスピードを活かした奥の手の剣技まで躱され、トルバリアは流石に実力差を痛感させられていた。
「君に師匠はいるのか?」
再三のアキラからの問いかけに遂にトルバリアは答える。
「いた。王宮の師範役とし永く従事していた異邦人だ」
「いた?」
アキラが問い直す。
「そうだ、老師はもう随分前に亡くなった。幼かった私が最後の弟子となった」
「・・そうですか。素晴らしい剣でした」
「それを余裕をもっていなすお前は何者なのか?」
「なぁの国では聖戦士と呼ばれていた」
「呼ばれていた?」
「東の大陸の国々は先の異変による災禍によって事実上失われてしまっているんだ」
「東の大陸はそこ迄の被害が生じていたのか?」
「その上で東の大陸の使者として俺達の話を聞いてほしい」
トルバリアは剣を降ろし、囲い込である円陣を見渡しながら静かに答えた。
「私では判断など出来ん。暫くここで待っていてくれ」
そう言い残すと後方の円陣の方へ飛行していった。
その様子を察したアイは、上空からビルを一気に下降させシャトルーズの傍に並ぶと嬉しそうにアキラに声をかける。
「お疲れ様、お前のおかげで良いものを見ることが出来たよ」
そう嬉しそうに言い放つ母のスタンスにアキラは(母さんっていう人は・・)と改めて母の持つ人となりへの認識を今回もより強く再認識する事となっていた。
新章四話目となります、どうか本章もよろしくお願い致します。
もしよろしければ小説家になろうでの、評価、ブックマーク・フォロー、感想などを頂けますと幸いです。




