天怒人怨(てんどじんえん)〔9〕
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東西の大陸の合同部隊は戦闘しながら西の大陸を北上し、蛹人の一番南に在った土塚の街を攻略していた。
「あんな小ちゃな蛹人も相手にしないといけないのか?」
戦いの終盤、土塚を破壊し中から這い出て来た蛹人を蹂躙していく「わの国」のゴーレム騎士達に思わずアキラは上空でチャアに疑問を投げかけた。
「アキュラ、蛹人は全て殲滅する様に会議で結論付けていた筈ですよ。それに私達フェアリースライムはラートリーに対蛹人のレクチャーを受けています」
「蛹人は念話で人を巧みに欺くって事だろう」
「そうです、わの国の騎士達が初動を誤ったのはそれが原因した。彼等は巧妙に念話を使って泣き叫び許しを請い相手を油断させると襲い掛かってきます。それは例えそれが小ちゃな蛹人であっても例外ではありません。アキュラが闘っていた蛹人たちも念話で泣き叫び許しを乞うていたのですよ、勿論アキュラに念話が伝わらない様にあえて私が遮断していました」
「そうだったんだ、済まないチャア」
「アキュラ達異邦人にはそれが可能ですがエルフやドワーフ族のこの世界の人達には念話が聞こえてしまうので土塚攻略時は東の大陸の部隊は上空警戒待機しているのですよ」
土塚の街の攻略も終わり。最後に索敵魔法が使えるエルフやドワーフ族の騎士達が低空で生き残りがいないか捜索を始める。
なぁの国のゴーレム騎士が土塚の街から少し離れた小高い丘が連なる場所の索敵中に小動物の様な無数の反応を察知し降下する。彼の不幸は余りにも小さな反応の為に確認を先行し報告を後回しにした事だった。
魔力でゴーレムに明りを発して小さな洞穴を覗きこむと、無数の小さな小さな蛹人がうごめいていた。
「怖い怖い」「来ないで来ないで」「見逃して見逃して」
様々な脅えた念話とすすり泣くような念話が彼に聞こえて来た。戸惑いその場で魔法を使ったり自身の剣で切りつける体制をとるのをためらい視線を外して部隊に連絡をとフェアリースライム命じたその時、別の洞穴から回り込んでいたであろう。小さな蛹人の群れが一斉にミスリルゴーレムの足元に取り付いてきた。
アキラ達が通信途中で音信不通となったミスリルゴーレムを捜索し発見した時には倒れこんだゴーレムの腹から上には無数の小さな穴が開いており、その中身は空洞となっていた。
火炎魔法で洞穴に火を放つと別のさらに小さな洞穴から這い出てくる蛹人を「わの国」のゴーレム騎士達は用心しながらも手際が良く殲滅していった。
今回の戦いでアキラ達東の大陸のゴーレム騎士はこの異種族との戦いの本質が如何に殺伐としたものであるのかを実感していた。
新章九話目となります、どうか本章もよろしくお願い致します。
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