天怒人怨(てんどじんえん)〔7〕
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アキラの発した覇気をパーナが窘めた後もフォーの異形の生命体についての説明は更に続いていった。
「そしてあれら、私達は蛹人と呼んでいます。蛹人は雌雄同体で単為生殖によって増殖しています。しかもあらゆる物を食べつくし食べた量だけ増殖速度が速くなるようです。既に「わの国」の西の大陸の北側は、あれらに食べつくされようとしています。我々のゴーレム隊は南北の大陸を繋ぐ元の回廊部分に防衛線をはり、南下を防いでいますが、飛行もできる為に防衛線が海上まで広がっており苦戦しております。この防衛線を突破されると、生き延び避難した人々の居る街が全て蛹人の食料となってしまいます。どうか御尽力頂けないでしょうか」
そう言うとフォーは立ち上がり再び皆に最敬礼する。そして、特使達も皆立ち上り同様に最敬礼した。
「皆さん、どうかお座りください。そして、質問をしたい。蛹人の進行を止めなければ、海を渡りこの東の大陸でも同様の事が起きる可能性があると思われますか?」
ゾンゴ王が冷静にそして静かに言葉を発した。
「はい。あれらは翅でかなりの長距離を飛べるようです。思わぬ方向から回廊の先の海岸線迄突破された事例が既にあります。南北の西の大陸を食い尽くしたら、暗黒大陸そして東の大陸へと移動してくるでしょう。その時点での総数は数十億単位になっているかもしれません」
パーシャ王が尋ねる。
「念話が通じると言ったが、交渉は出来そうにないのか?」
「試みましたが、食料としてしか認識してもらえませんでした」
目を伏せながらフォーが答えると、堪えかねたのかカーメルが声をだした。
「創造主もどきのスライム達は、何を目論んで送り込んできたのか?この世界を更地にしたいのか?」
「その意図を私も感じています。蛹人は全てを食べつくした後は自滅する様に造られたとしか思えません」
その時、パーナ女王が立ち上がり声を上げる。
「私達も彼等に造れた人種だと知りました。だからといって彼等の思う様に滅びようとは思いません。例え知恵があってもその様な意図をもって造られた人種なら滅びてもらうしか我々には選択肢は有りません。そして今回の災禍も彼等によって起こされたのではないのですか?」
その言葉にフォーははっきりと答える。
「はい、間違いありません。エクスペルは私に今回の災禍は創造主と呼ばれるスライム達によって引き起こされたと申しておりました」
会議室は一瞬静まり返ると皆それぞれが顔を見渡し頷き、そしてパーナ女王を見つめ返した。
「わかりました。この戦いはこの世界の生存権をかけた闘いとなるのですね」
一人立ち上っていたパーナ女王が言葉を発すると、皆で立ち上り全ての特使達と握手を交わし合い決意を共有しあっていった。
新章七話目となります、どうか本章もよろしくお願い致します。
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