天怒人怨(てんどじんえん)〔4〕
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うっすらと白く輝く湖の水、以前訪れた時と何ら変わらないアンマの地底湖でアキラとアイの親子は予定より少し遅れた夕食をとっていた。
「二人きりで野営するなんて随分久しぶりだね」
アイの言葉にアキラは料理したスープを飲みながら答えた。
「そういえば、小学校の頃、山で修行してた時以来じゃないかな」
「そんなになるのか、随分私はお前を修行させていなかったんだね」
「曽祖父が亡くなる迄は修行をつけてもらっていたし、後は独学で何とか修行は続けていたんだよ」
「お前は曽祖父ちゃん子だったからね」
「母さんは親父の捜索に殆んど海外だったから仕方がないよ」
「アキラは随分、剣技の腕があがってるわよ」
「この世界に転移させられて色々有ったし、なにより一度だけだけど親父に稽古をつけてもらったのが大きかったと思うよ」
「あの人の腕も相当上がっているのだろうね。あの人の剣技の知識を吸収しているスライム族達に戦いを挑む為に良い手段はないのかね?お前には家庭も出来たし無理強いは出来ない、でもあの人を少しでも早く解放してあげたい・・」
アイの本音にアキラは少し考えながら答える。
「確かに今、この世界が未曾有の災害を受け復興の最中だから逆に国家間の戦闘はなくなった。今が救出のチャンスかもしれない。ただ、親父と同等に近い剣技を持つ者が十数体に増えている可能性が高いと思う。こちらも親父と闘えるほどのゴーレム騎士が同数位は最低でも必要だと思う」
「私も同じような考えだったよ。この世界で鍛えている者達は確かに強くなっている・・だけどタケルが相手だとしたら数分ももたないんだよ」
「そうかもしれない、俺だってシャトルーズとチャアが相棒じゃなければとても対等には闘えないと思っている」
「あの人が鍛えた者達がいる「わの国」の騎士達には優れた者はいないのかい?」
「一人、凄い人がいるけど。話に乗ってくれそうにないな・・」
「誰だい?」
「パーナの腹違いの兄なんだけど、色々有って袂を分かち敵になっているからな・・」
「わの国の将軍だね」
「そうだよ。シャトルーズやチャアのおかげでどうにかなってるけど生身での剣技だと多分・・まだ敵わないだろうな」
「他には候補はいないのかい?」
「うん、親父の弟子達の事ならアレンさんに聞いたら少しはわかると思うけど」
「その人も「わの国」の人間かい?」
「そうだよ、親父と出会った時に遭ったんだ」
「一度この目で確かめに、わの国に行ってみたいね」
「この仕事が終わったらパーナと話し合ってみるよ」
アキラはそう答えながら母の親父に対しての激しく強い想いとその執念を感じ取っていた。
新章四話目となります、どうか本章もよろしくお願い致します。
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