天怒人怨(てんどじんえん)〔2〕
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グリフォンの奥手側に更に大人になった子達だろうか、数体のグリフォンが集まってくる。その内の一体がその両足に、力なくグッタリとしている白銀のミスリルゴーレムを鷲掴みにしている様子にチャアが気付き声をだす。
「アキュラ、一体がゴーレムを捕まえています。微かに人体、フェアリースライム共に生体反応が有ります」
その報告にアキラは一瞬、戸惑ったが直ぐにそのグリフォンに向かって行く。
シャトルーズが目の前に接近するとそのグリフォンは少し慌てた様子で親グリフォンを見つめ、少し回りの兄弟達をキョロキョロと見つめながら、足をシャトルーズに向けその捕獲したゴーレムを手渡そうとした。
「え、くれるのかい?」
思わずアキラが声をだしたその瞬間、足を離す。
「うわっ!」
驚きの声を上げ落下しようとするミスリルゴーレムを素早くシャトルーズで抱きかかえる。
グリフォンの子達は誇らしげに鳴き声を上げると。親グリフォンと合流して世界樹の方向へと飛び立っていった。
世界樹のふもとの広場にミスリルゴーレムを降ろすと、すぐにアルにビルのもつ回復魔力を当ててもらう。
「母さん、中の人は大丈夫だろうか?」
アイに搭乗者の気配が感じられないか尋ねると。
「生きてはいるみたいだけど、あの群れに無謀な喧嘩でも売ったのかね」
傷ついた飛行ユニットを見つめながらアイは答えた。
「あ、フェアリースライムが先に目覚めました」
チャアが順調に回復している様子を伝えた。
「話せそうかい?」
アキラがチャアに尋ねると、暫くしてからチャアが答える。
「念話は出来ましたが、騎士の許可なく喋れないそうです。騎士が目覚めたら、念話を繋ぐそうです」
「そうか、もう暫くこのままここで待機だな。母さんもそれで良いですよね」
「多分、わの国のゴーレムみたいだけど、とてもこんな場所で見捨てられないからね」
アイも同意し、意識が回復するのを待つ事となった。
「うわっ!黄緑のゴーレム」
突然、白銀のミスリルゴーレムが起き上がり剣も無いまま構えをとる。
「まず、貴方のフェアリースライムから事情を聞いて下さい!」
チャアが少し怒ったような口調で叫ぶ。
「え、どうなっている」
そう叫ぶと暫く静かになり、やがて構えを解いて名前を名乗り始めた。
「聖戦士殿、助けて頂きありがとうございました。私は「わの国」のベニンの駐屯地に赴任しているノアと申します。小隊を組んでアンマへ資材の確保に向かっていた時、世界樹の偵察をと考え禁を破り飛行したらこの有様となりました。反省しています」
「丁度、俺達も資材集めにここ迄来ていたんだが。かなり危ない所だったみたいだが、もう大丈夫そうだね」
アキラはシャトルーズの腰廻りにぶら下がっている袋を指差しながら答えた。
「仲間が心配していると思うので、どうにか合流したいのですが・・」
ノアの嘆願にアキラは答える。
「乗り掛かった舟だ、同行するよ」
アキラはビルが頷く様子を確認すると、もちろん道中で少しは「わの国」の近況も聞けるかもしれないとの考慮もあるので、予定を変更し世界樹の反対側へと向かうことにした。
新章二話目となります、どうか本章もよろしくお願い致します。
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