開天闢地(カイテンヘキチ)〔9〕
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早朝の「わの国」の首都WA、いつもの公園に朝の鍛錬前の走り込みにアレンとジルが訪れると、いつもは見かけた事のない黒いフードを被った人物が草の上で寝ころんでいた。
「おはようございます、大丈夫ですか?」
そっと近づき二人が声をかける。その声にビックとした後、身体を起こし二人を見つめながら答える。
「大丈夫です、少し考え事をしていたものですから」
その人物を見た瞬間、アレンはいきなり敬礼をする。
「国務魔導長官」
その声にジルも驚き遅れて敬礼をする。
「ごめんなさい。朝から驚かせてしまって」
フォーが二人に謝ると、驚いた表情でアレンが質問する。
「護衛も付けずに、何故このような所に」
「魔道具の開発が煮詰まっちゃて、少し気分転換に夜中に一人で抜け出しちゃったのよ」
フォーの言葉にジルが慌てて話しかける。
「え、もう日も出る頃です。屋敷は大騒ぎになっているのではないですか?」
「そういえば、星も見えにくくなっているわ。もう帰らないといけないわね」
「屋敷迄お供いたします」
「そう。・・そうね、じゃあお願いしようかしら」
そう言うと、フォーは立ち上がり歩き出した。
「魔道具の開発も大変なのですね」
道すがらアレンが尋ねるとフォーは溜息をつきながら答える。
「ラジオの次の魔道具なんだけどね」
その言葉にジルが反応する。
「テレビですか!」
「あら、貴方は初代の異邦人なの?」
「いえ、二世になります。親父がよく話してくれていたもので」
「そうよ、別に機密事項でもないから話すけど、安く量産するのが難しくてね、困っているのよ」
「そうなんですか、って事は既に完成はしているのですね!」
「完成はしているけど高価すぎて、まだまだ改善しなければならないの」
「それで、気分転換をしていたのですね」
今度は、アレンが質問する。
「私達の元の世界でも、最初は白黒画面だったそうですね」
「あら、貴方も二世?」
「いえ、私は三世です。祖母に聞いた話なんです」
「そう、白黒・・、白黒、いけるかも!最初はそこまで鮮明でなくても良いのよね」
そう言うとフォーは暫く黙って立ち止まってしまった。
その様子に、上空で偵察していたフェアリースライムのラートリーが声をかける。
「テレビって何なんですか?」
「遠く離れた所で音だけではなく目で見た光景を見ることが出来る魔道具だよ」
アレンの言葉にラートリーは驚き答える。
「そんなことが出来るの、凄い魔法ですね」
その様な会話をしていると、フォーは急に早歩きで進みだす。
「急いで帰ります。ありがとう、完成したらお礼をするわね」
その言葉にアレンは残念そうに答える。
「部隊が再編される事が決定していまして、要塞都市「バリキシメト」の部隊と合流して暗黒大陸に向かう予定なのです」
「あら残念ね、完成したら駐屯地に届ける様に手配しますね」
「ありがとうございます」
「もう、裏口に着いたから、護衛はここまでで結構ですよ。本当にありがとう」
フォーが屋敷の裏口に進もうとした時、アレンは遂に出してはならない質問を声にだしてしまう。
「大統領になにか変化は感じられませんか!」
フォーは裏口に立ち止まると驚いたように振り返り赤い目を見開くと、じっとアレンを見つめ小刻みに顔を揺らし屋敷へと消えていった。
新章九話目となります、どうか本章もよろしくお願い致します。
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