開天闢地(カイテンヘキチ)〔2〕
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三か国の王室の首脳会議が執り行われていた同時刻に「ぜら・あな商会」出張所の会議室でもカーメル、ロン、そして商隊を組み「ウロポロ」より決死の脱出を試み国境封鎖前に無事たどり着いた、ジャンニ、ピガン、セグーによる会議が開かれていた。
「遅れてすみません」
全員の真剣な様子に、アキラは慌てて挨拶をする。
「かまわんよ、急ぎ呼び立てて済まない」
ロンの声が静まり返っていた会議室に響く。アキラは恐る恐る皆を見渡すと皆の服装の変化に気づく。
「皆さん腕輪を装備されたんですね」
アキラの言葉に皆は頷き、腕輪を見せ、今度はカーメルが答える。
「王宮をぜら・あな号で離れる際にかさ張らない腕輪も最優先で積み込まれていたんだよ、つまり新人のフェアリースライム達も無事避難できたという事だ」
「それで皆さんが腕輪をされているのですね」
「我々もいざとなったらゴーレムで戦うという意思表示が必要だという事で装備する事となった」
「でも皆さん訓練されていないんじゃ・・」
「カーメル以外は、これでも皆若い頃は騎士だったんだがな」
ジャンニが得意げに笑うと、皆、同様に笑った。
「それでハンデの有る俺はフジワラの腕輪を借りる事になったよ」
カーメルの言葉にアキラは驚いて尋ねる。
「母さんが渡したのですか?」
「ああ、皆が勘を取り戻そうと少しアイ師匠にご教授願ったんだが、その時にな」
「偵察に行ってる間にそんな事が」
「ああ、さて本題に入ろう。南の国境はどんな感じだった?」
「はい、カーメルさんの言う通りでした。高高度からの偵察でしたがチャアが細かく分析してくれました。あれは攻め入る為ではなく流通を止めるための配備です。また、ゴーレム隊の駐屯地は街中にあるアン商会に隣接した場所に有りました」
アキラの報告にカーメルは頷きながら答える。
「やはり敵の戦略は、この地に我々を封じ込めておくという事だな」
「流通が止まると、生活できなくなるんじゃ」
「いや、幸い北の山脈より雪解け水が流れてくるこの地は飲料水や作物を栽培するには困らない、ある程度は自給自足が可能だ。しかし一つだけどうしても必要な物資が有る。今日はその為の会議だったんだが」
「必要な物って?」
「魔石だよ、魔石の粉はこの世界では燃料や電気の代わりとして使われている。しかし、この地には小さな迷宮すらない、魔石を集める手段が無いんだよ」
「また、俺達でアンマの地下迷宮に行きますよ」
アキラの考えに首を横に振る。
「シャトルーズが何日もこの地を離れる事が有れば敵は総攻撃をかけてくる。グラス達がこの面倒な作戦を実行している背景にはシャトルーズとビルと言う絶対的な戦力がこちらに有るからだといえるんだよ。かといってこちらから駐屯地のゴーレム隊を削ろうとしても、奴らは民間人に犠牲が出たとラジオを使って大々的に報道するだろう」
「良案は無いのですか?」
「商会で備蓄していた魔石は脱出の際にジャンニ殿達が商隊を組んで無事運び入れてくれた。それにこれから炭焼き小屋を新たに建設する計画を立てた、これで一年以上は何とかなるかと皆で話し合っていたんだ」
少し間を開けて苦笑いしながらカーメルは答えた。
新章二話目となります、どうか本章もよろしくお願い致します。
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