開天闢地(カイテンヘキチ)
天乃篇最新話、更新いたしました。
「ここは・・」
見知らぬ部屋の窓から日差しが差し込み、外から小鳥の鳴き声が聞こえてくる。
トロフは目を動かし自分の置かれている状況を必死に探ろうとしていた。その時、ドアが開く音と驚きの声が遠くから聞こえる。その声の主はトロフを安心させるに足るものだった。
「パーナ・・?」
遠くに感じた声は、さほども遠くなく、すぐ近くから発せられたものだった。
「トロフ、目が覚めたのね。良かった・・、貴方ずっと目覚めなかったから・・、本当に良かった」
トロフは少しづつだが記憶が戻って来る。
「王宮は・・、皆は無事だったのですか?」
「ゼラ・アナ号に乗れた者は無事、避難できたわ。貴方が頑張ってくれたおかげよ」
トロフは更に記憶が蘇ってくる。
「キラは・・、キラはどうなりましたか?」
パーナは、少し俯きながら答える。
「貴方を発見したケイトによると、貴方のゴーレムの傍で貴方に覆いかぶさるようにしてキラは亡くなっていたそうよ」
「ケイトが私を?」
パーナは少し涙ぐんだ目でトロフを見つめると話を続けた。
「ケイトは応援に来てくれていたみたいだけど、大破した赤黒いゴーレムを発見して地上に降りたら、その向こうに倒れている貴方のゴーレムを見つけて近づいたら二人が倒れていたそうよ。多分、キラは貴方を回復する為に回復魔法や回復薬を使用していた形跡が有ったとケイトは報告しているわ」
「そうですか、キラが・・」
そう言うとトロフの目から涙が零れ落ちた。
「最後まで、あいつは・・」
そう言って目を閉じたトロフにパーナは優しく手を握りしめてあげていた。
東の大陸の山岳地帯、スイの国の飛び領土だったリュウの街に三か国の王室が身を寄せる事となり。「わの国」の支配権に囲まれる事となった現状を打破するべく首脳会議がとり行われていた。
「南側の国境地帯に多数のゴーレム隊が配備された今、北の山脈以外の三方を完全に封鎖されてしまっている現状を打破するには、もう一度、「ウロポロ」を奪還するしか手立てがないのではないか?」
ゾンゴ王の言葉にパーシャ王も同意する。
「王室の威厳が保たれている今なら、「なぁの国」の国民も我々についてきてくれるのではないか?」
その言葉に首を振りながらパーナが答える。
「今、戦えば我々が原因と称され、王都が火に呑まれてしまいましょう。神官達は神殿からの神託を大義名分に国民を納得させようとしております。神殿を主体とした神官達による院政と「なぁの国」の鎖国化を目指しているようです」
「そのような流れに・・」
パーシャ王が驚きの声を上げるが、そのままパーナは話を続ける。
「ウロポロより避難してきた信用のおける者からの上申です。この事から「わの国」の戦略が浮かび上がってきます」
「その戦略とは」
ゾンゴ王が尋ねるとパーナは、はっきりと答える。
「なぁの国の鎖国とは違う、この地の強制的な物流も含めた完全なる鎖国化、我々とこの地は存在しないものとして扱われるという事です」
パーナの結論に二人の王は声を失っていた。
最終、天乃篇が始まります。どうか本章もよろしくお願い致します。
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