「藤原 晃」「ヴェルビー・ナァ・パーナ」(9)
更新いたしました。
新月の深夜ミスリルゴーレムの群れが、ようやく試験放送が始まったばかりの仮設放送局の上空に姿を現わした。
「アル、行くよ」
そこには、城で子守をしているはずのアイとアルの姿があった。
ビルに乗り込んだ二人は、仮設の放送局の屋根にふわりと飛び乗ると、その紅色した光り輝く翼から球形の光が広がり仮設の建物全体を包み込み守る。
そして、ミスリルゴーレムの群れにまずケイトのブルーズが襲い掛かり、続けてポイン、ホーゾン、チューン、更に鍛えられた新人達のミスリルゴーレムが続いて襲い掛っていく。
「変だ、赤黒い大型のアダマンタイトゴーレムが居ない」
超高高度から偵察していたシャトルーズのアキラが声をだす。
「まさか、裏をかかれた?こいつらは囮?」
激しい、魔法を伴った攻撃の中、アイが声をだす。
その時、王宮のパーナから首飾りの通信用魔道具に念話が入る。
「アキラ、敵襲です。トロフと王宮騎士団が迎え撃っていますが、あの赤黒い大型のアダマンタイトゴーレムもいます」
チャアがその念話をアルにも繋いでおり、アイが声をかける。
「晃、ここは私に任せて王宮に向かいな」
「わかった」
更にパーナから通信が入る。
「なかつ国との国境を多数のゴーレム部隊が侵入を開始したとの連絡が有ったわ」
「なかつ国とも連動しているのか?パーナ、ゾンゴ王にも連絡を!」
「やってる、国境警備隊は苦戦を強いられているとの報告よ」
「今、そちらに向かっている。パーナ、シャルトとヴェルを頼む。ゼラ・アナ号もそちらに向かわせる、すぐに俺も到着するから無茶はしないでくれ」
アキラは、超高高度からシャトルーズを王宮に向かって急降下させていく。
「ついにこの日が、なぁの国よ私は帰ってきた」
なかつ国との国境でヴェルビー・ナァ・ラーバン将軍は歓喜の声を上げながら国境警備隊のゴーレムをその黒いアダマンタイトゴーレムで部下と共に蹴散らしていった。
「なぜお前が・・」
信じられないものを見るかの様に目の前の赤黒い大型のアダマンタイトゴーレムの剣技を前にトロフは叫ぶ。
その剣技は最もよく受け自身の身体が最も知っている間違えようのない友のものだった。
「キラ、なぜお前が!」
「・・・」
キラは何も語らずトロフの薄い青緑のミスリルゴーレムに強烈な刃を向ける。
「くっ!」
城に火の手が上がっていく様子を眼下に見つめながらトロフは決心する。
「私がお前を止める!」
ヌムールの立てた計画が今まさに実行されようとしていた。
人ノ篇、最終章九話目となります。どうか本章もよろしくお願い致します。
もしよろしければ小説家になろうでの、評価、ブックマーク・フォロー、感想などを頂けますと幸いです。




