「藤原 晃」「ヴェルビー・ナァ・パーナ」(7)
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「待って、駄目!そっちに行ちゃ駄目」
フィルが後ろの上空で必死になってシャルトの服を引っ張て止めようとするが、シャルトはそれに構うことなく、ハイハイを続ける。
一方でヴェルはその様子をオモチャを振り回しながら楽しそうに笑って見つめていた。
「外に出たいの?貴方にはまだ早いわ」
パーナは広く囲まれたゲージをよじ登ろうとするシャルトを抱きかかえるとヴェルの横にチョコンと座らせた。
「パーナ、もう私じゃこのお転婆さんは手に負えないよ」
パーナの肩に乗りながらフィルが訴える。
「そうね、私は日中は執務に忙しいし・・。そろそろ誰か信頼のおける人を雇うべきかな」
パーナがそう言った時、突然私室の扉が開く。そう・・外の見張りの者の声掛けもノックもなくこの部屋に入ってこれる唯一の人物、アイが姿を見せる。
「お母様」
パーナが思わず声を上げると、続いて飛んできたアルが元気よく声をかける。
「フィルの叫びが念話で漏れて聞こえてきたから応援に来たの!」
そう言いながらシャルトの方へと飛んで行くと、アイはパーナに優しく尋ねる。
「私に、二人の子守を任せてもらえないかい?」
「いえ、でも師匠・・お母様は騎士達の訓練が有るのでは」
「本来なら子守もアキラの仕事なんだろうけど、今あの子はニィーの代役とラジオ局の再建で大忙しだからね。私の代役はトロフとケイトを呼び出してつい先程だけど任せる事にしてきたよ」
「お母様・・」
「初孫なんだから、私の我儘を聞いておくれ」
アイのお祖母さんとはとても見えないその容姿からこぼれる笑顔をみせると、パーナはただ黙って聞き入れるしか選択肢はどうやらない様だった。
「何だか急に二人共、おりこうさんになったわね」
フィルが不思議そうにシャルトとヴェルを見つめる。
「二人共、アイを怒らせたら駄目だとわかってるの」
アルの言葉にフィルが頷きながら答える。
「あ、なるほど・・私があなたを怒らせちゃまずいと思っているのと同じなのね」
「なんだそれ・・」
「ふふ、貴方は私達にとって特別の存在だから」
「アルがいつまでも大人になれないから?」
「貴方は多分、私達よりも長生きで、それに例えば先程の遠く離れた私の念話まで聞こえていたんでしょ。本当に色々とすっごーく優秀だからよ」
アルは不思議そうな顔をしながらフィルを見つめると少し納得したように答える。
「わかった!アルとアイは同じなんだね」
アルの言葉にフィルは二人をあやすアイを見つめながらその言葉に納得し頷いていた。
人ノ篇、最終章七話目となります。どうか本章もよろしくお願い致します。
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