「藤原 晃」「ヴェルビー・ナァ・パーナ」(6)
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大勢の民衆に囲まれたハサンの国王宮、その中庭にゼラ・アナ号で緊急着陸を強行し、乗船可能な限りの王族と城内の非戦闘員を乗船させていた。
「急いでください、荷物は持ち込めません!いくらシャトルーズとビルであっても撃墜させずに制空権確保するのは容易な事ではありません」
チューンが王族の乗り込みの遅さに苛立ち叫ぶ。
上空ではアキラとアイが民衆を支援している所属不明のミスリルゴーレムの集団を巧みな剣さばきで腕や飛行ユニットを破壊しながら無力化し王宮上空の制空権を守っていた。
「なんて数のゴーレムなんだ。いったいどこから湧いてきているんだよ」
絶対的な数で制空権にほころびを作ろうとする敵の動きにアキラも思わず叫んでいた。
それは既にヌムールの「グラス」が民衆の中に数多くのゴーレム騎士達を潜伏させていた成果であり、ハサンの国でも革命という名の改革が、あたかも自然に発生したように仕向けた成果だった。
ようやく中庭からゼラ・アナ号が浮かび上がってくるとアキラはアイに声をかける。
「母さん、アル、後は俺に任せてゼラ・アナを」
ビルはゼラ・アナ号のコンテナにふわりと飛び乗ると、その紅色した光り輝く翼から球形の光が広がりゼラ・アナ号全体を包み込み守る。
「全開だとそんなに永くはもたせられないんだよ」
進路をゴーレムに塞がれ、ゆっくりとしか進めないもどかしさにアルが悲鳴を上げる。
「ハァッ!!」
アキラは気合を入れ叫び剣を構えるとシャトルーズが光り輝く黄色いオーラに包まれて進路のゴーレム達を弾き飛ばしていく。
ゼラ・アナ号は徐々に速度を上げ王都より離脱していった。
その様子を遠くから民衆に混ざり様子をうかがっていたヌムールは残念そうに呟く。
「今回は政治劇は開催できそうにないな・・。あれが「なぁの国」のシャトルーズとビルか、なぁの国では、やはり正面からではなく予定通りにからめ手でいくのが良いだろうな」
その直後に王宮を落とした合図の鐘の音が街中に響き渡りだしていた。
スイの国、リュウの街に到着したゼラ・アナ号から降りる王族達をゾンゴ王とゼラ・ロンが出迎えていた。
「よくぞご無事で参られた」
ゾンゴ王の言葉にハサンの王、パーシャは礼を言う。
「スイの国とゼラ・アナ商会の支援には感謝の言葉しか有りますまい。この場にはおられませんがパーナ女王にも感謝の言葉をお伝えください」
「ありがとうございます。必ずお伝えいたします」
ゾンゴ王が答えるとパーシャは天を仰ぎ再び呟く。
「国を追われるという事が、あれほどの事が有ったにもかかわらず現実の事とは感じられませぬ。余は、私は・・、何を間違ってしまったのだろうか・・」
一人の老人となってしまった男の呟きが、周りの者達にも重くのしかかって行った。
人ノ篇、最終章六話目となります。どうか本章もよろしくお願い致します。
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