「藤原 晃」「ヴェルビー・ナァ・パーナ」(3)
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「大々的に誕生祭を、ラジオで生放送を?」
アキラはパーナの執務室でパーナが自室の子供達を寝かし付けている間、キラとトロフに事の成り行きを先に相談していた。
キラの発言の後にトロフは、「誕生祭を私は大々的に行って欲しいと思っていたんだ」と答える。
「しかし、ラジオを使うとなると・・」
キラが視線を落とすと、トロフは腕を組み笑顔を消して目を閉じながら答える。
「神殿の聖職者達が反対するだろうな」
その様子に気づきアキラが尋ねる。
「そうか、神殿の聖職者達はラジオを嫌っているんだったよね」
「パーナには報告しているのだが、少し事態は深刻化しているんだ」
トロフが再び目を見開きアキラを見つめながら答える。
「このまま表に出ないまま事態が進行していくよりは、態度を表面化させた方が良いかもしれませんね」
その時、執務室と自室の扉を静かに開け閉めしながら母親から女王の表情となったパーナが現れ答えを出す。
「聞いてたのか?」
アキラの問いかけに、パーナはフェアリースライムの皆と共に止まり木に座っているフィルに一瞬だけ目を移すと話を続けた。
「私達のラジオを少しでも早く普及させたいカーメルの要望は受け入れようと思います。その際に神殿の聖職者達や信者達がどういった行動に出るのかを見極める良い機会になるかもしれません」
「しかし、想定以上の行動に出て後戻りできない状態になったら・・」
キラがたまりかね発言する。
「昔の様に大きな内乱になるような事は避けなければならない、だからこそ少しでも早い内に裏から表に出てきてもらうべきだと思うの」
「パーナ・・。ではこの場はここで退席させてもらう」
キラは少しうつむきながら答え、一礼すると執務室を後にした。
「パーナ、これで良かったのか?キラ、苦しそうだったよ」
「おそらく既に、キラの一族内でもはっきりとした動きが有って、だからこそこの場でこれ以上の話には加われないと判断したのよ」
「パーナ、国の祝賀行事になる事案だ。聖職者達も交えての会議になる・・必ず一波乱あるぞ」
トロフも溜息をつきながらパーナに意見する。
「あなたからの報告を受けて、私なりに考えていた事なのよ。ラジオ放送を無理矢理止める事は「なかつ国」の様な革命のきっかけを敵に与える事となるし、だからといってこの国だけを鎖国状態になんて現実的な話じゃないわ」
「俺達異邦人の世界の歴史でも無理に時代を逆行する事は不幸を招くだけだったよ。この世界には余りにも多くのむりやり転移させられた異邦人達がいる。多分、俺も含めた全ての存在を消し去らない限りは昔の様に戻る事はできないんじゃないかな。そもそも元をたどればその様な魔法大系を生み出した「あいつら」が全ての原因なんだということを聖職者達にこそわかってもらいたいんだけど・・無理なんだろうな・・」
「無理ね・・残念だけど古の戒律により呪縛されている我が国は特にね・・」
パーナは溜息をつきながら振り返り部屋の国章をずっと見つめていた。
人ノ篇、最終章三話目となります。どうか本章もよろしくお願い致します。
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