「コンラート・ナカッ・ポンドオン」「ジャック・ヌムール」(10)
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ハサンの国との国境での警備隊として配属された、ヘンリー、ノア、エマの三名は退屈な日々を送っていた。
「これほど、緊張感のない任務だと思わなかったよ」
ノアは、これまでこの言葉を何度呟いた事だろうか、エマは呆れたように言葉を返す。
「WAの駐屯地での訓練が異常だったのよ、現場なんてこんなものよ」
更に伝令の役人と会話を終えたヘンリーも振り返りながら話しかける。
「次で最後だそうだ。その中に一人、ゴーレム使いが居るそうだ。それが終わったら訓練に入ろうぜ」
「国境が締まっている朝夕だけしか訓練できないからな。しかももう薄暗くなってる・・」
残念そうにノアが答える。
最後に国境のゲートから出てくる二人をヘンリーが呼び止める。
「すまないがそこの人。一応、護衛のゴーレムを見分させてもらえないだろうか?」
隣の容姿端麗な高級商人風の男が答える。
「それは任意なのか?強制なのか?」
「本来は任意なのだけれど、なかつ国での件で今は、まあほとんど強制になっているのでお願いしたい」
護衛の少年の様な男が商人に促されると、仕方なさそうに地面に手を突き魔法紋を開きゴーレムを呼び出す。
やがて魔法紋から跪いた状態のスマートな黄緑色をしたゴーレムが姿を現す。
「おお、綺麗なゴーレムですね、薄っすらと発光している」
ヘンリーが緊張を悟られない様に二人に話しかける。その横で何か言いそうになっているノアの横腹をエマが素早く軽く小突く。
「ええ、旦那に用意してもらった自慢のゴーレムなんですよ」
少年は少し嬉しそうに答える。
「もう結構です。ありがとう、良い旅を」
少年がゴーレムを収納していると、今度は商人が話しかけてくる。
「エィミ国の王都が有った場所が大規模な再開発をされていると聞きましたが、見学は可能ですか?」
ヘンリーが答えられずにいると、エマが代わりに答える。
「一部の市街地はもう完了して街らしくなってきていると聞いていますが」
「そうですか・・ありがとう。参考になりました」
そう答えると二人は旧王都への街道に向かって歩いて行った。
「おい、今の!」
二人の姿が遠のくと、ノアが少し怒ったように二人に話しかける。
「ああ間違いない、あれはアレン隊長が言っていた黄緑色をした光るゴーレムだ」
エマも続けて答える。
「あの商人もゴーレム騎士だと思うわ。妖精を本体と共に収納しているだけね」
「え?」
ノアが驚きの声を上げる。
「だって、あの人は女性よ男装しているだけ、それに二人の手を見た?あれはかなりの手練れよ」
「そうなのか?」
ノアに頷くエマを見つめながらヘンリーが二人に同意を求める。
「下手に部隊に報告したら、伝説のフジワラ長官と同等の相手に一戦交えて全滅しかねないと思う。ここは、アレン隊長に相談すべきだと思うんだが」
二人は頷きながら振り返り、もうすでに暗くなってしまっている二人が歩んでいった街道を黙って見つめていた。
新章、十話目となります。どうか本章もよろしくお願い致します。
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