「コンラート・ナカッ・ポンドオン」「ジャック・ヌムール」(7)
更新いたしました。
夕暮れ時となり再び街の食堂に皆で入ると、中は昨日と違い既に大勢の人々で賑わっていた。
「本日の場所取りは断られまして」
入り口で待つポインとホーゾンがすまなそうにニィーに言葉をかける。
「七人だが空いてる席は有るかな?」
ニィーが店員に尋ねると、忙しそうに行き来する店員が振り返りながら答える。
「すみません。一番奥の厠の前のテーブル席でしたらが空いてますが」
ニィーが皆に同意を求めながら奥に歩み始める。
「注文をしてきます」
ポインとホーゾンそして、チューンが調理カウンターへ向かう。
「凄く、人が多いですね」
テーブル席につくとアキラがトロフに話しかける。
「ああ、実はあれから街の様子もケイトと共に見に行ったんだが、奥様方が市場で買い物をするわけでもなく立ち話に夢中だったよ」
「私が異邦人だからでしょうが、私に気が付くと話を止めてしまうのよね」
ケイトがすまなそうに話す。
「いや多分、ラジオの件の話だろうから街の人以外の者だと皆、同じ反応だろう。アキュラはパーナとは連絡を取ったのだろう、その・・なんだ、様子はどの様な感じだった?」
トロフの問いかけにアキラは少し口籠りながら答えた。
「え・・、事態をやはり深刻にとらえてたよ。裁判が私的に行った犯罪と王として判断した行為を同列に扱っていた事に問題が有るって話をした」
「そうか、私もそう感じたが街の者達はその事には興味はなさそうだったな」
そう言いながらトロフは隣のテーブルで盛り上がっている地元のドワーフ達に目線を向けた。
「だから、俺がブリーテンの造船所に出稼ぎに行ってた時に聞いた話じゃ、異邦人の国では選挙といって、手を上げたものの中で一番、皆から支持された者が王ではなく大統領という役職について国を治めるそうだ」
「なかつ国でも同じようになるって事か」
「ラジオ劇と同じならそうなるんだろうよ」
「うちの嫁も同じ様な事言ってたな」
「俺ラジオ劇、あまり聞いてなかったからさっぱりだよ」
「女達の方が詳しいもんな」
「毎晩、飲みに出てるからだぜ」
「飲み以上の楽しみが有るとは思ってもみなかったんだよな」
「いや、飲むのが一番楽しいぜ」
「この国も変わっちまうのかな」
「しるかよ、ただ、飲み物も異邦人が納めているブリーテンの街の飲み屋の方が色々な種類の酒が置いてあって旨かったけどな」
「ホントかよ、俺も出稼ぎに行ってみようかな」
「造船所だったら、いつでも募集中だぜ」
「きな臭くなる前に家族共々出稼ぎに行こうかな」
「それは、奥さんも喜ぶんじゃないか」
「ホントかよ・・、怒鳴られないかな?」
「まあ、お前んとこだと、何とも言えねえな」
「おいおい」
エールや料理を待つ暫くの間、アキラは食堂内で会話された街の人々の本音であろう話をチャアの力で盗み聞きしながら、パーナが言っていた「王族、貴族はは国民と共にある」という言葉と、この国の現実とが余りにもかけ離れすぎていることを実感していた。
新章、七話目となります。どうか本章もよろしくお願い致します。
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