「コンラート・ナカッ・ポンドオン」「ジャック・ヌムール」(3)
更新いたしました。
スイの国、リュウの街から程近くの国境近くの高台に完成した放送局。その中の簡易スタジオでカーメル、アンジェラ、マラジジ、ドル、ピガン、そしてパーナとアキラがミーティングを行っていた。
「ぜら・あな商会の「なかつ国」から避難してきた従業員からピガンが選抜してくれた人員で不足は補われたと思うけど。もう本放送開始には問題はないわよね」
パーナの質問にドルが答える。
「放送そのものは何時でも開始できます。マラジジの協力で試験放送も既に終わっており、「なぁの国」「スイの国」、そして「ハサンの国」は、一部地域を除いて「わの国」製のラジオでの受信も確認されています」
「ありがとうドル。では何が問題なの」
次にカーメルが自分に言い聞かせる様に答える。
「問題なのは、放送の構成作りなんだ。「わの国」では元の世界で放送に携わっていた異邦人が、ある程度いたが・・ここでは、そのノウハウは知る人間が余りにも少ない。素人同然の人間が作った放送では、視聴者に相手にされない。現在は歌や音楽だけをただ流している状態なんです」
「それでは、間に合わなくなります。各国とも民衆は今、なかつ国の話題でもちきりなのですよ」
「兎に角、もっと沢山の吟遊詩人や親しみのある声を持った人材を集めてきて下さい。アンジェラ達でラジオパーソナリティの訓練を行っていますが足りていません、長時間の録音は魔道具を使っても困難なので現状全てが生放送となるのです」
カーメルの現状報告にパーナは少し溜息をつきながらさらに質問をする。
「ラジオでの演劇、ドラマはさらに難しのですか?」
「もちろん人々に最も影響を与える物ですから吟遊詩人達に「わの国」の金権主義的な思惑に乗らせない様な脚本の制作を頼んでいますが難しそうです」
「そうですか、おそらく「ハサンの国」の民衆が扇動される日も近いと思っています。なかつ国が自由貿易港湾都市「アムス」の様な形態の国となり民衆は自由の名のもとに経済で支配される事となるでしょう。確かに選ぶのは民衆です。変われない私達のありようが否定されるのでしたら、それは歴史の必然なのでしょう。しかし、それが一部の人間達によって歪められたものだとすれば、私はその様な力には、あらがいたいと思っています」
凛とした表情のパーナの決意にカーメルは目を見開き一礼して答える。
「女王陛下、エクスペルの思う様にはさせませんよ。私は商才においては異邦人の中では突出していると自負しております。新しい経済プランを作成し民衆の気持ちを引き留めてみせます」
パーナは次にアキラの方を向き声をかける。
「アキラ、ハサンの国で顔が立つトロフを同行させますので、フェルの街の「ぜら・あな」商会の出張所にニィー達と向かい、商人として様子を探りながら国境に向かってもらえませんか、商会へは私から話を通しておきます。王には、今一度、親書を送っておきますが、もしも国境を閉じることがあれば、それが内乱の始まりになると考えています。「わの国」が裏で仕掛けて「ハサンの国」側の国境封鎖を試みる可能性が高いと思いますので可能な限り未然に防いで下さい」
「ゼラ・アナ」号で商会の従業員の輸送をパーナ達やニィー達、全員で行った理由がこの為だったのかとアキラはパーナの統治者としての力量に強い畏敬の念を感じながら頷ずいていた。
新章、三話目となります。どうか本章もよろしくお願い致します。
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