「アレン・ブラッオ」「ジル・ニューブ」(8)
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スイの国のリュウの街から程近くの国境近くの高台、その場所に放送局が完成しようやく試験放送が始まったその時、「なかつ国」の王宮での執務室でポンドオン王が青い顔をしながら部下の報告に聞き入っていた。
「工房の者達、商人達、そして農夫までもが、一斉に税の減額を要求してきております。要求に応じなければ、国を去り港湾都市「アムス」やブリーテン諸島に移住すると申しております」
「何故急に一斉に、その様な申し立てをおこなったのだ」
「は、かねてより「アムス」の発展を見聞きし、その豊かさを羨む者が多かったのですが・・、ラジオで放送されたドラマの影響が最も大きいと思われます」
首をかしげながら王は皆に問いただす。
「何だそのラジオドラマとは?」
「は、今、民衆に流行っているラジオという魔道具で最近、皆が夢中になっている連続放送劇が有りまして、そこで「アムス」での豊かな生活が語られていまして」
「そんなことで、この神聖なるドワーフ王国を捨てようと言うのか?」
「既に、国境を越え「アムス」に向かう者がかなりの数に上っております」
ポンドオン王は顔を真っ赤にしながら叫んだ。
「国境を封鎖せよ。「わの国」からの放送を止め民衆の目が覚めるまで陸路の交易は中止せよ」
「は、しかし暴動になるやもしれませんが」
「ゴーレム隊で威嚇すれば諦めるであろう」
「税の方は、どの様に回答いたしましょうか」
「王国会議にて善処するように努めると、答えておけばよい」
「では、その様に」
この決断が「なかつ国」に悲劇を生みだしていく事となる。
「国境封鎖と国内で暴動が「なかつ国」で起こっていると」
パーナはキラに聞き返した。
「とうとう、始まってしまった様です」
「我が国には、何か動きは?」
「国境は通常通りの状態ですが、警備は増やしておきました」
トロフが答える。
「ただ、やはり税への不満や「アムス」の豊かさに憧れを口にするものが多数出ているようです」
キラの追加の報告にパーナは。
「悔しいけど、あの計算されつくされたドラマと巧妙なアナウンスの流れではやむを得ないわね。「ハサンの国」の国王に急ぎ連絡を送って、「国境を閉める事は悪手に繋がり、民衆の言葉に耳をかたむけ国を安定させるのが得策」との私からの書簡を早急に送って」
「急ぎ手配いたします」
キラが答えるとパーナは一人、考え思う。
(カーメル、貴方に任せているラジオの新たなプログラム、早期の実現を期待しているわよ。間に合わなかったらアキラの言う通り、この東の大陸の国々が崩壊してしまう)
新章、八話目となります。どうか本章もよろしくお願い致します。
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