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「アレン・ブラッオ」「ジル・ニューブ」(7)

更新いたしました。

 ニィーと共にシャトルーズで別荘のような作りの臨時の王宮に到着すると、一人の男が二人を待ち受けていた。

「ご無沙汰しております。アキュラ殿、いえ聖戦士殿ですな」

アキラはシャトルーズから降りると懐かしそうに返事をした。

「ツオ大使、お久しぶりです」

「もう大使ではありませんが・・、あれから此処で我が王のお傍で仕えさせて頂いております」

かつて、「なかつ国」で大使を務めていたツオはこの王宮で王の側近となっていた。

「ご案内いたします。ニィー殿と共にお入りください」

王宮の門が開き三人は奥へと進んでいった。



「お連れいたしました」

ツオが声をかけると、執務室の扉が開き応接室と兼用となっている空間の奥から見覚えのある国王が姿を見せた。

「随分久しぶりとなってしまって申し訳ない、聖戦士殿。王城から撤退の際は随分と尽力してもらい、更に「ぜら・あな」商会でもミスリルゴーレムの確保に助けられていると聞き及んでいる。中々礼をする機会に恵まれず、今回この様な形でお招きすることが出来た。感謝する」

深々と礼をする王に、ニィーが慌てて声を上げる。

「王・・」

その様子を見てアキラも慌てて王に声をかける。

「どうか、頭をお上げください。その場その場で私が出来る事を行ってきただけですので」

王は頭を上げるとアキラを見つめながら言葉を繰り返した。

「本当に感謝しているのだよ。・・お茶お用意させるので席についてくれ。パーナ女王から聞いた話についても君の直接の意見も聞いておきたいのだよ」

アキラは随分と年を取ったような表情の王を見つめながら、その後の苦労を感じ取っていた。


「なるほどな、わの国の軍事侵攻は当面ないと君も考えているのか」

王の言葉にアキラは答える。

「しかし近い将来、ラジオを使い民衆を扇動し内乱もしくは革命と呼べる事変を起こし国の体制を変え経済で支配してくる予定だと思います」

「ラジオとはそのように恐ろしい物なのか?ツオはどう思う?」

少し考えながらツオが答える。

「なかつ国の王都では、既にほとんどの者がラジオを聞いていると耳にしています。私も聞いた事が有りますが、音楽やユーモアを交えた時事ニュース、そして最近ではドラマという劇が流行ってきたと聞き及んでいます。人々の娯楽の一部になっているようです」

「娯楽、楽しいものなのか?」

「はい皆、楽しんでいるようです」

「そのような楽しいものが内乱へとつながって行くのか?」

王の率直な疑問にアキラは少し困ったように話す。

「我々が居た元の世界では、既に幾度となく利用されていた手段なんです。本当に放送が中立性を守らなければ恐ろしい結果となります」

「国境の警備用のミスリルゴーレムはようやく定数が揃った。パーナ女王の言う様に、これからは民が不満を持たない様に尽力する事に力を入れよう。だが、放送局の事で協力できることは何時でも行ってほしい」

「はい、ですから私の褒美は必要ありませんので、どうか国民の安定に尽力して下さい」

「本当に良いのか」

「はい、これからもよろしくお願いいたします」



スイの国の「ゾンゴ王」との会談を終えると、アキラは自分の世界の歴史を思い出しながら溜息をついていた。



新章、七話目となります。どうか本章もよろしくお願い致します。


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