「ドル・ターラー 」「レディ・フォー」(11)
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「チャア、これで最後かい?」
白銀のミスリルゴーレムの両手と飛行ユニットを破壊するとアキラがチャアに問いかける。
「郊外からの応援もこれで最後みたい。制空権は確保できたよ」
「よし、アルからの念話はまだ来ない?」
「ん、まだ来ないからこちらから念話してみるね」
しばらくすると、アルが元気よく答える。
「終わったよ、中庭でビルを出すから合流して」
「了解、ご苦労様」
「は~い」
洋館のような建物の中庭にビルが光を放ち現れるとその横にシャトルーズをゆっくりと着地させる。
「こっちだ」
カーメルが大声で声をかける、既にドルはビルの手の中に居た。
シャトルーズが手を差し出すとカーメルは、「優しく頼むぞ」と念をおす。
「任せて下さい」
アキラはそう叫ぶと、ビルと共に東の空へと舞い上がって行く。
窓からその様子を眺めているフォーは何かを決意したような眼差しで二騎のゴーレムをその姿が見えなくなるまで見続けていた。
前回、訪れていたフェアリースライムの牧場が有った島の岬の砂浜で「ゼラ・アナ」に合流するとドルが地上に飛び降りるとよろけながら怒鳴った。
「帰りがこんなに恐ろしいとは聞いてなかったぞ」
カーメルも続けて怒鳴る。
「優しく頼むといっただろうに」
降ろしたコンテナから魔石の粉の袋を両手に持って現れたニィーが二人の様子を見て詫びる。
「あの二騎のゴーレムは特別製ですので申し訳ありません。多分これでも精一杯、優しく飛行していたんだと思います。上手くいったんですか」
ドルは笑いながら服をめくり上げ腰に縛った図面を見せる。
「やりましたね」
「ああ。しかしこの船が天国のような乗り物だとつくづく実感したよ」
ドルがそう言うと三人はコンテナへと乗り込んでいった。
発進していく「ゼラ・アナ」の両側には既に魔石の粉を補給しているシャトルーズとビルが警戒にあたっていた。
「最後まで油断は禁物だけど、どうやら上手くいきそうだね」
アキラがアイに声をかける。
「上手はいったけど、あの獣人はさらって帰った方が良かったんじゃないかね」
「なんで、そこまでしない方が良かったんじゃないか?」
「何だか急にそう思えて来たんだよ」
「・・話が見えないよ、帰ったら詳しく説明してよ」
「只の勘だよ、勘だ」
その頃、「ゼラ・アナ」のコンテナの中ではカーメルとドルが再び悲鳴を上げていた。
「なんだ、このフェアリースライムの子供たちの集団は・・」
二人は賑やかなコンテナ内で再び最悪の帰路を味わっていた。
「ドル・ターラー 」「レディ・フォー」の章はここまでとなります。どうか次章もよろしくお願い致します。
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