「ドル・ターラー 」「レディ・フォー」(10)
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「商談って、貴方を相手してなんて、私に不利じゃない」
フォーはその可愛い両耳をピクピクさせながら答えた。
「悪い商談じゃないと思うんだが。君は今のエクスペルに何か疑問を持ってはいないのか?」
カーメルの問いかけに、しばらく沈黙したのちに口を開く。
「・・神に操られている・・?」
「やはり君もエクスペルの変化に気づいているんだね」
「でも、魔術や魔道具は彼に使われた形跡は全くないわ」
「君は知らないかもしれないけども、私達の元居た世界では音や映像を使って人々を洗脳する技術が確立されていたんだよ」
フォーは少し驚いた様子で質問する。
「たしかにラジオを使って人心を誘導するだけではなく洗脳していくというプランがあるわ。彼も既に洗脳されていると?」
「映像も見てはいないかい?」
「・・、彼専用の魔道具は映像も見れるようよ、私にその魔道具の解析も依頼されているわ」
「次はTVも実用化しようとしているのか・・。君は神についての具体的な知識はどの位あるのかわからないが、今回の取引は神についての情報とラジオ放送局用の魔道具との交換が私の商談内容だよ」
「放送局ね、確かにそれが最も正しい対抗手段になるわね。私が応じるとでも」
「応じてもらわないと、本意ではないんだがフジワラの奥様のプランになってしまうんだよ。彼女もフジワラ同様ただ者ではない、そこも理解してもらいたい」
「応じなければ、私を攫って行くってとこかしら」
少し下がって周りを警戒しているアイが頷く。
「フジワラには沢山借りがあるから、条件を飲むわ」
そう言うと部屋にある机の魔法で鍵がかかっていた引き出しを開けると数枚の紙をカーメル渡す。
「ドルさん、すまないが確認を頼む」
ドルは魔法陣の図面が描かれていた紙を受け取るとアイの横で解析を始めた。
「おそらく間違いはないと思う。もっとくわしく調べるには時間がかかるが、ラジオの送信元の魔法陣を使用した魔道具の図面だと思える。これは素晴らしい!」
ドルの言葉にフォーは少し笑いながら答える。
「ほめて頂き、ありがとう。カーメル、神について話していただけますか?」
カーメルはアキラやアイに聞いた話を上手にまとめてフォーに伝えた。
「神は、いえ創造主は貴方達の世界の最先端の科学の知識を膨大な魔量を生みだす黒い大洋の力を使って呼び寄せ学習しているということですか?エクスペルは貴方達の世界の音と映像を使った洗脳を受けている可能性が高いということなのですか?」
「いや、高い知性が有り選民意識を持った者ほど洗脳の危険性が高い傾向が有るのでそこをつかれたと私は思っているよ」
「創造主は何を目的にしているのかしら」
「第一は、勿論失われた大陸の復活だが、それが叶わないなら暗黒大陸の世界樹を狙っていると私は考えている」
「この国はその踏み台って事・・」
フォーの言葉にカーメルは黙って頷いていた。
新章、十話目となります。どうか本章もよろしくお願い致します。
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