「ドル・ターラー 」「レディ・フォー」(5)
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ブリーテンの港に一隻の新造大型コンテナ船が停泊し、荷物の搬出搬入作業が行われていた。
「丁度良いタイミングでしたね」
フォーがコンテナを眺めながら付き添いの男に話しかける。
「はい、「アン商会」の販売網で東の大陸全て積み荷の小型ラジオが行き渡る様いたします」
「頼みますよ。・・カーメルは行方不明のままなのですか?」
「はい、フジワラ長官が行方不明になったとほぼ同時にでした。独立の英雄が二人も行方不明になるとは思いも及びませんでした」
「そうですね。しかし貴方にとっては、またとないチャンスが巡ってきたのですからこの機会を逃さないようにね。ヌムール総支配人」
「はい、勿論です」
ヌムールは深々と礼をすると、自信ありげに笑みを浮かべていた。
アキラは、再び地下迷宮「アンマ」にゴーレム探索に向かう前に工房のベルを訪ねていた。
「間に合ったみたいだね」
「はい、良い仕事が出来たと自負しております。今回、剣の柄と盾の骨組みにアダマンタイトを使用しております。どうぞお確かめください」
ドルの言葉に二つの盾をアキラは微笑みながら見つめ答える。
「ありがとう。ドル」
その時工房に一人の女性が満面の笑みを浮かべながら入ってくる。
「私は城でゴーレム騎士の新兵を鍛え上げなければならない仕事があるから付いて行けそうにないわね。で、今から手合いを始めるよ」
「母さん、今からかよ・・」
「そうよ、だって今からしかできないでしょう」
装備を終え、ビルに連れて行かれるシャトルーズを見つめながらドルは叫ぶ。
「いきなり壊さないでくれよ!。まっ・・大丈夫だとは思うけどな」
ドルは工房の外で飛び立つ自身が手掛けた装備を纏う神々しい二体のゴーレムをずっと見つめていた。
「なかなか良さそうじゃないか」
シャトルーズに合わせてアイのビルも薙刀を二刀に分けて対峙する。
「いいね。シャトルーズの魔力をのせなくても、自分の腕が上がったんじゃないかと錯覚するよ」
「私も同じ仕様のはずなんだけどね」
アキラの言葉に少し残念そうにアイが答える。
「武具に頼っちゃダメだってよく言ってたじゃないか」
「まぁね・・、では私もこの辺でギアをもう一段上げようかな」
「え・・、親父の様な事を」
目の前でアキラのまだ見ぬアイの二刀の剣技がさく裂した。
「これを自分のものにしろって言うのか」
叫ぶアキラにチャアの小さな声が聞こえてきた。
「ほんと・・似たもの夫婦ですね」
新章、五話目となります。どうか本章もよろしくお願い致します。
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