「藤原 武尊」「ヴェルビー・ナァ・ラーバン」(10)
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すっかり日も暮れ霧が立ち込め始めるが、アキラはベンチに座ったまま何もできずにいた。
「逃げた方が良くないか?ラーバン達がが戻ってくる可能性も有る」
カーメルの言葉にアキラは首を振りながら答える。
「此処デ待チマス、シャトルーズノ力ハ底ガ知シレナインデス必ズ帰ッテキマスヨ」
その言葉に呼応したのだろうか霧の中、黄緑色に光る影がゆっくりと舞い降りてきた。
「シャトルーズ!」
そしてゆっくりと中庭に着地すると詫びる様に頭を下げ中座した。
「アキラ・・」
横でチャアが目覚め空に舞い上がり、シャトルーズの前部を開け腕輪を取り出しアキラの元に舞い戻って手渡す。
「ありがとう」
アキラはチャアに礼を言い腕輪を付けると次にカーメルに向かって頭を下げる。
「色々と迷惑をかけてしまい本当に申し訳ありません、今の内に帰ろうと思います」
その言葉にカーメルは笑いながら答える。
「心配するな、これでも私は大統領の最上位のパトロンだったはずなんだが、それを軟禁状態にして脅しの道具として使われるなんてな、それなりの詫びは必ず入れてもらうよ。フジワラには必ず話は伝えてやるが他に追加は無いか?」
アキラはしばらく考え込むと首飾りタイプの魔道具を見つめチャアに繋いでくれと頼む。
「パーナ今話せるかな?」
「え、大丈夫だけとお父様には会えたの?」
「いや、罠だったんだ。でも伝言を頼める人が見つかったんで一緒にこの魔道具も渡しておきたいんだけど許してくれないかな?」
「お父様に渡してもらうのね、お父様のフェアリースライムにチャアは有った事ある?」
「大丈夫、認識できるよ」
チャアが自信をもって答える。
「それだったら、渡して大丈夫よ、危険な状態じゃないのね?」
「今から、シャトルーズでそちらに向かうよ、高い魔道具らしいけどすまないありがとう」
「待ってる、早く帰ってきてね」
通信が切れ、首飾りタイプの魔道具をカーメルに手渡す。
「これを親父に渡して下さい、お願いします」
「ああ、わかった。今の相手はパーナ女王か?」
「はい」
「そういう関係って事だよな・・、だとしたら何時までもお前の味方ではいられないかもしれないな」
「いえ、カーメルさん、貴方は親父の真の友人なんだと理解してます。ではどうかご無事で」
もう一度頭を下げるとアキラはシャトルーズに乗り込み霧の夜空に舞い上がって行った。
カーメルはシャトルーズを見送ると魔導士に話しかける。
「これだけ身近で見てしまってるんだ、「アン商会」の専属魔導士として雇い入れるから付いて来てくれるかな?」
急な申し出に魔導士は驚きながらもカーメルの後を追って高級宿泊所を後にした。
朝、全て飛行ユニットが破壊されたミスリルゴーレムの運搬で喧騒に包まれるブリーテンの駐屯地、そこに紺碧色の龍の様なゴーレムがそして鬼のような形相をした男が舞い降りていた。
次話もどうかよろしくお願いします。
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