「藤原 武尊」「ヴェルビー・ナァ・ラーバン」(7)
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「悪いね、朝と夕方だけのまかない料理で」
アンジェラがそう言いながら抱えてきた食材で今日もまかない料理の準備を始めているとアキラも倉庫から出てきていつもの席に座る。
「大丈夫ですよ、いつも沢山頂いていますし此処にいると飲み水にも困りません、昼はテーブル席を動かして日課の鍛錬も行えてますし」
「とにかく、造船所の視察にタケルが来たその夜にはカーメルと此処に来るはずだからもう少しの辛抱だよ」
「迷惑かけて申し訳ないです・・」
「何言ってるんだい、私はあんたに会えて毎日が楽しいというのに。しかしカーメルも用心してこの店に来るのを止めてるのかもしれないけど買い出しの時も姿を見せないんだよ、私の姿を見つけるとわざとらしく高い最先端の魔道具なんかを薦めてきたりするのにね」
「今日、「アン商会」に寄られたのですか?」
「もうそろそろじゃないかと思ってね、そうだったらタケルの好きな果物でも追加で買っておこうかと思たんだけどね。出てこなかったよ」
「それは変ですね、あの段取りの良いカーメルさんが現れないだけではなく伝言すら残していないなんて」
「そういえばそうだよね、店員とも会計以外では誰も話しかけてこなかったよ」
「今日は、何を買ったんですか」
「パスタと香辛料だけど」
「その袋を見せて下さい」
「これだけど・・」
アンジェラが差し出した袋を受け取り中身を出してみるとその奥に四つ折りされた小さな紙が挟んであった。
「アンジェラさんこれ日本語です」
紙を開き中に文字が書かれてあるのを確認するとアンジェラに手渡した。
「なんて書いてあったの?」
「「危」、あぶないという意味です。カーメルさんからのメッセージですよ」
「そんな・・」
「ここを出ます、何もお返しできそうにも有りませんが本当にありがとうございました」
手早く、中二階の鞄を背負うと入り口の扉に向かうと外の様子を確認する。
(気配が、・・いるな)
「カーメルをあの人をお願い・・」
アンジェラのその言葉にアキラはうなずくと扉を開け潜り込むような体制で通路に飛び出す。
そこには仕込み杖を振りぬいたラーバンの姿があった。
「アムス以来だな少年、いや聖戦士。同行願えるかな」
「脅しとは思えないほどの技の切れでしたが・・」
アキラの返しにラーバンは微笑む。
「君がフジワラの息子だと今、はっきりと確信したよ。中の女性に迷惑をかけたくなければ付いて来るんだな」
通路はすでに閉鎖されており、多数の兵士が遠巻きにアキラを囲んでいた。
「さて、腕輪を渡してもらおう、そうしてもらえなければカーメルには不幸な事故が待っている事となるが」
ラーバンの冷たい目がアキラに決断を迫っていた。
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