「藤原 武尊」「ヴェルビー・ナァ・ラーバン」(5)
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「それが、東の大陸での総意だったんですか・・」
アキラはカーメルの話に絶望的な思いにとらわれていた。
「そうだよ、北米大陸からほぼ獣人族を追い払った我々に極北の地、我々の知るカナダ辺りでの国家樹立は認めるが、今の地で国を建国することは東の大陸全てを敵に回すこととなると宣言されてしまっていたんだよ」
そのカーメルの言葉にチャアが割り込んでくる。
「アキラ、パーナやメィミェイは国家など認めない異邦人達と全面戦争だという流れを国家を認めさせる案までどうにか持っていったのよ。わかってあげて」
「君のフェアリースライムか・・、驚いたな翻訳以外の自分自身の言葉を伝えてくるとはな」
驚くカーメルにアキラは説明する。
「チャアの元のマスターはエルフの王族の「メィミェイ」さんだったんですよ」
「なるほど「メィミェイ王女」の・・、しかしその案に乗れば今の戦争は回避できたとしてもやがては獣人族が北進してくることは明白で滅びの道でしかない。我々は要求を呑むふりをしながら時間稼ぎを行い獣人族から奪った資材を使い秘密裏にミスリルゴーレムの量産化とゴーレム騎士の育成を進め東の大陸への侵攻を決意したという訳だ」
「他に方法は無かったのですか?」
「ラーバンの情報を主に戦略をたて、プライドの高い海側のエルフの国を責め山脈の向こうまで押しやれば北と南のドワーフ族の国は貿易による巨大な富を約束すると必ず手を結んでくるとの判断で侵攻を開始し、君がフェアリースライムの新たなマスターになる事となってしまったって訳だね」
「話し合うチャンスは全くなかったんですか?」
「君も学校で学んだだろう外交とは軍事力や経済力を伴わないと相手にもされないものだよ」
「生き残るためには必要であった武力衝突だったと!」
「怒るなよ・・。誰も殺戮を好むものなどいないよ「メィミェイ王女」は地理的に不幸な場所に王宮が有ったとしか言いようがない・・」
「和平派だった「メィミェイ王女」が真っ先に戦場に駆り出されるなんて・・」
アキラの呟きに、カーメルは。
「な、経済戦争の方が少しはましだろう」
「侵略には変わりませんよ」
カーメルはアキラの言葉に浮かない表情で溜息をつきながら言葉を続ける。
「まあ我々もいつ侵略されるかわからない状況にある事は君のおかげで収穫だったよ」
「さて、かなり時間を使ってしまったな、ここはしょせん商店でしかない。必ず軍に密告する者も現れるだろうなそれでも私を信用してくれるかい?」
「貴方の個人の部分は信用していますよ」
「では、私がこの街で一番信用している者を呼んである。彼女に付いて行ってもらえるかな?」
「わかりました」
アキラが返事をすると隣の扉を開け一人のカーメルと同世代の異邦人女性を紹介する。
「アンジェラです。あなたがタケルの・・」
アキラに視線を投げかけると彼女は楽しそうに微笑んだ。
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