「藤原 武尊」「ヴェルビー・ナァ・ラーバン」(3)
更新いたしました。
「そんなに警戒しないでもらいたいな」
カーメルが商会の建物その最上階の執務室で商人特有の満面の笑みを浮かべる。
「とても偶然の出会いとは思えませんでしたが」
警戒を解かずにアキラが答える。
「いや、偶然と言えば偶然だよ。フジワラが視察に来るという話を聞いたので「アムス」行きを一週間延ばしたんだからな。君もその話を聞いてこの街を訪れていたのだろう?私は従業員に新顔で東洋系の異邦人で黒髪の少年を見かけたら私の大事な客だから報告する様、伝達していただけだよ」
「・・流石ですね、俺が親父を訪ねてくると予想していたのですか?」
「勘だよ勘、君は特に東の大陸「わ」の国の勢力圏ではお尋ね者なのだが・・しかし、ここブリーテン諸島は元々は獣人族、エルフ族、ドワーフ族の共有地だった場所だ。まあ今はほとんどドワーフ族と私達異邦人の産業、貿易の拠点となっているが・・。まあ、君だったらこの立地のチャンスを生かそうとするんじゃないかという予感がしたんだよ」
「親父に会えると思いますか?」
「そうだな、ラーバン将軍の動き次第だな。君が起こした事による作戦の失敗はフジワラが未知の災厄による事故として不問としたが、多くのゴーレム隊を失ったことで君への報復を考えているようだがね」
「エルフ族のラーバンさんですよね」
「そうだ、メンツをつぶされた彼は君を決して逃したりしないだろう」
「凄い人に狙われているんですね」
「彼は手ごわいぞ、聖戦士君」
「!、え・・」
「聖戦士、君の情報は「わ」の国の上層部ではすでに共有されている。その様子では自覚は無い様だが、君は最重要人物になっているんだよ」
「俺を拘束するおつもりですか?」
カーメルは先程とは違う少し困ったような微笑みをすると。
「まさか、フジワラの息子だと知ってしまっているんだぜ、軍には突き出せない・・。少し尋ねるが、私の商会に入る事は出来ないか?そうすればフジワラの立場を守れるし、君が自由に「なぁの国」に出入りできる様な仕事を考えてやれると思うのだが」
「ありがたい言葉ですが、それは難しい話です」
「しかしなぁ・・おそらく、「なぁの国」に侵略戦争を仕掛ける事は無いと思う。東の大陸は近い将来、新たな産業と文化によって飲み込まれていく。その先に待っているのは君主国家の瓦解と新国家の誕生だ。我々の歴史を再現する事となるよ」
「貴方方の戦略は街の様子を見れば狙いもわかってきます。しかしもし第3の巨大な勢力がこの世界に存在しているとしたら結末は違ったものになるかもしれません。聡明な方です貴方は、多分その力が有るが故に召喚されてしまったのだと思います。だから父に有ったら話そうとしていた事ですが。やはり貴方にこそ伝えるべき内容なのかもしれません、どうか話を驚かずに聞いてくれませんか?」
アキラは、黒い大洋に沈む幻の大陸「ランディア」の海底迷宮で経験した全てをカーメルに話し始めていた。
次話もどうかよろしくお願いします。
もしよろしければ小説家になろうでの、評価、ブックマーク・フォロー、感想などを頂けますと幸いです。




