滅びゆく国(10)
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「ここが、兵器保管庫よ」
もう既に静まり返って わずかな室内灯だけが巨大な空間に灯りをともしており、ケイトと共にアキラは残されたゴーレムを受け取りにここを訪れていた。
「もうほとんど空っぽだね」
「エルフ創始国、ドワーフ国の元に、大部分を送り出したからね」
「街の人達もほとんどいなくなってたみたいだし、凄く早い決断だったね」
「ああ、私達の報告を聞いた直後にまず王は街の民衆に、この場所が戦場になると大布令を出し避難を命令した、更に国中のミスリル鉱をドワーフ国へと運び出すここを決定した」
「この国にはミスリル鉱?が採れる鉱山があっんですか?」
「この国とエィミ国・・君が来た国ね、との国境に両国が管理するミスリル鉱山とダンジョンが有ったわ、もう既に異邦人達に占拠されているけど」
「その為の戦争だったんですか」
「ミスリル鉱の鉱山はこの世界では数か所しか見つかってないからね」
兵器保管所の奥へと二人が進むと一人の人影が近づいてきた。
「ケイト殿、お待ちしておりましたぞ」
現れたのは背の低いがっしりした体格の初老の男だった。
「まだ、城を出ていなかったのか」
「明日の早朝最後の部隊、ケイト殿と共にドワーフ王の元に戻るつもりです」
「そうか・・アキュラ、彼がゴーレム部隊の整備の責任者ドル殿だ」
「初めまして、アキラと言います」
「ドワーフ国から来たドルと申す、アキュラ殿をお待ちしておりました」
「待ってた?」
「実はゴーレムと共に収納していただきたい武具がありまして」
そう言うとドルは歩き出した。
中座する複数のアイアンゴーレムの間をすり抜けると二つのゴーレム用とおもわれる盾が二つ荷台に乗っていた。
「これですが、持ち出すゴーレムに装備して収納していただけませんか?、この試作盾はミスリルをふんだんに使っており納品されたばかりで運搬での移動はもはや間に合いませぬ」
「盾の中に小剣が収納されているのか?たしかに敵には渡したくないな」
ケイトは盾を見つめ溜息を突きながらアキラの方を向いた、しかしアキラは盾のさらに奥にあるゴーレムを見つめていた。
「シャトルーズ・・」
そのゴーレムの瞳は一瞬かすかに光りまた消えていった。
「どうした、あの黄緑色をしたロックゴーレムが気になるのか」
「同じ色だ・・、親父やおふくろの結婚記念日での外食・・幼いころみたエンゲージリングそれと同じ色のグラスに注がれていた洋酒、引き込まれたその色・・そう・・その名前はシャトルーズ」
「リキュールか?、なるほどアキュラ、気に入ったならあのゴーレムを使ってみればいい」
「あの、ロックゴーレムは珍しい色をしていたのでダンジョンから式典用に使えるんじゃないかと持ち込まれたものですじゃ」
ドルはゴーレムの経緯を話してくれた。
「チャア、融合してやってくれ」
ケイトが空を飛んでゴーレムを観察しているチャアに話しかける。
「わかったわ、アキュラ、ゴーレムの前に来て、お腹に腕輪をした方の手をついて」
アキラは言われるままに引き込まれるようにゴーレムの前に来て手をついた。
現れる魔法紋、アキラのゴーレム騎士としての第一歩が始まった。




