お題「『夢を見た。』ではじめる」「今夜だけは君を」「星」「ハロウィン」
夢を見た。
きたるハロウィンの夜、宿敵である彼女の内なる魔物が暴走し、無関係の人を襲う夢だ。私がそれを止めに入るが間に合わず……。彼女は次々とその手にかけていく。
やがて赤に染まった夜が明け、魔物の暴走は収まる。しかし、理性を取り戻した彼女は、その罪悪感に耐えきれず自ら――。
冷たくなった彼女を抱きかかえ、人の気配が消えた街で、私は一人咆哮を上げる。
夢はそこで途切れ、同時に私はベッドから跳ね起きた。汗に濡れた服が肌に張りついて気持ちが悪い。けれど、私の意識は別のことに割かれていた。
魔女の夢は予知夢である。とはいえ、それは絶対ではなく、覆すことのできる予知。
ベッドの脇に置かれたカレンダーに視線を向ける。今日は十月三十一日、ハロウィンだ。つまり今夜、彼女の内なる魔物が暴走してしまう。
「……絶対に止めてみせる」
決意を胸にそう呟くと、私はベッドから起き出した。
◇◇
「――今日は早いのね?」
世界が夜闇に包まれ、上限の月と星々が白く輝く頃。私は彼女と対峙していた。
紺色の制服に身を包んだ彼女は、いつものように不敵に微笑む。けれどその顔にはわずかに陰りが見えた。
「あまり調子がよくなさそうだな」
「あら、そう見えるのかしら? 私としては、むしろ力が湧いてくるのだけれど」
「それは君の内なる魔物が暴走しかけているからだ」
「……戯れ言ね」
やれやれといった風に首を振る彼女。そして次の瞬間、虚空から闇色に染まった巨大な大鎌を取り出した。
器用に、優雅に、大鎌をくるくると回す彼女。
「今日こそ通してもらうわよ、白夜の魔女」
大鎌を向けて微笑んでくる彼女に、私は自身の武具を取り出す。彼女の真っ黒な大鎌とは正反対の、純白の刀。
私はその鈍い白を、彼女へと突きつけた。
「今夜だけは君を逃すわけにはいかない、夜闇の魔女」