お題「薬指の束縛」「きみ(人称変更可)専用膝枕」「色(種類自由)」「誘惑の果実」「指きりげんまん」
小さい頃、好きな女の子がいた。
家が隣同士で、物心ついた頃から一緒に遊んでいた。いわゆる幼馴染というやつだ。
その女の子は僕と同い年ながらも、昔からかなり大人びた子どもで……。僕は憧れにも似た好意を寄せていた。
だからある日。砂場で遊んでいた僕は、思い切って女の子にこう言った。
「あかねちゃん! 大人になったら、ぼくとけっこんしてください!」
今となっては、いきなり何言ってるんだお前、と思わず突っ込みたくなるようなセリフ。
案の定、女の子からは「大人になっても樹くんが覚えてたらね」とつっけんどんに返されてしまった。
けれど、その頃の僕は単純だった。好きな女の子との口約束。ただそれだけで舞い上がっていた。
「ほんと! やった、やくそくだよ! 小ゆびかして!」
嬉しそうにはにかんだ僕はその子の手を取り、お互いの小指を絡ませる。約束と言えば指きりげんまんだ。
「ゆーびきーりげーんまーん、うーそつーいたらはりせーんぼーんのーます! えへへー、やくそくだよ!」
「……うん」
◇◇
「おや、起きたのかい?」
微睡から目覚めた僕。出迎えてくれたのは見慣れた少し釣り目の女性の顔だった。いつの間に寝てしまったのだろう。
ふと、後頭部に柔らかな感触を覚える。どうやら膝枕をしてくれていたようだ。
「膝枕……してくれたんだ。ありがとう」
「ああ、きみがあまりにも気持ちよさそうに昼寝をしていたからね。いい夢見られたかい?」
「うん。とても懐かしい夢を見たよ」
「それは良かった」
ふわりと微笑む女性に、僕も笑みを返す。膝枕を堪能するように姿勢を横に変える。
「この膝枕……まるで誘惑の果実みたい。いつまでもこうしていたい気分だよ」
「ふふ。きみ専用膝枕なんだ。ゆっくり堪能したまえ。……と言いたいところだが、もうすぐ夕食を作らないといけないんだ。悪いが起きたのなら退いてもらえるかい?」
「えっ、もうそんな時間?」
がばっと勢いよく頭を起こす。窓から差し込む光はいつの間にか橙色に染まっていた。ちょっと横に、とばかり思っていたが、どうやらかなり寝過ごしてしまったようだ。
「ご、ごめん! 家事の邪魔しちゃったよね」
「気にするな、仕事で疲れているのだろう?」
そう笑って手を振りながら台所へ向かう女性。その薬指に嵌められたリングがきらりと銀色に輝く。
「――あ、茜ちゃん!」
「うん? どうしたんだい?」
「いつも家事ありがとうね」
「ふふ、どういたしまして。樹くん」
かつての小指の約束は、今は薬指の束縛となって、僕たちを結んでくれている。
きっと、これからも――。