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お題「こたつでごはん」「月の涙」「カンカンカン」「明け方の街」

 朝。目が覚めた私はまず、スカイブルーのカーテンを開けた。窓の向こうには、まだ薄暗い世界が広がっている。

 仕事柄、私の朝は早い。お日様が昇る前に起きる必要がある。そんな生活を何年も続けていたからか、今となってはもう目覚ましが鳴る前に起きる癖がついてしまっている。

 顔を洗ったら軽くストレッチ。といっても、手足や体の筋を伸ばす程度だ。若くはないが、歳でもない。そんな中途半端な年代の健康を保つには、早起きとあわせてちょうどいいだろう。

 ストレッチが済み次第、朝食の準備に取りかかる。トースターに食パンをセットしたら、焼き上がる間にフライパンを火にかけ卵を割り落とす。昨夜のうちに作っておいたレタスとトマトのサラダと、インスタントのコーンスープを用意し、焼き上がったトーストと目玉焼きを皿に盛りつけたら終わりだ。おっと、バターを忘れるところだった。トーストにたっぷりとバターを塗れば、今度こそ完成だ。

 事前に電源を入れておいたこたつまで朝食を運ぶ。こたつの中は既に温かくなっているようで、足を入れるとじんわりとつま先から熱が伝わってくるのを感じる。暦の上ではもう春なのだが、今日のように早朝は冷えることが多い。まだしばらくこたつとはお別れできそうにない。

 テレビを眺めながらのんびりとこたつでごはんを食べる。白米に味噌汁、焼き魚といった定番の和食も嫌いではないが、用意に手間がかかってしまうのが難点だ。朝はゆっくりと過ごすのがモットーな私には、準備に時間がかかる和食はあまり合わないのだ。

 日課で見ているニュース番組では、合間に真珠の特集をやっていた。『月の涙』と呼ばれる大きな真珠を使ったネックレスが、かなりの高額で落札されたらしい。他にも、真珠を使った指輪やイヤリングなど、様々なアクセサリーが紹介されている。そんな真珠のアクセサリーを見ながら、私はトーストを齧る。

 ああいう装飾品に心惹かれないわけではない。普段使っている腕時計やネクタイピンはそれなりの値段がするものだし、ショッピングモールでセールをやっているとつい目がいってしまう。しかし、私個人としてはキラキラした宝石よりも、こういうのんびりとした時間を過ごすための雑貨などにお金を使いたい気持ちのほうが大きい。

 再びニュースに戻ったテレビを見ながら食器を片付け、その間にコーヒーを入れる。コーヒーには少しこだわりがある。急ぎのときは仕方がなくインスタントにするが、基本的にはドリップだ。豆も専門店から買っておいたものを使う。さすがに焙煎から行うわけにはいかないが、使う直前に手動で豆を挽く。ドリッパーも穴が少ないものを使用し、できるだけ味に深みを出すようにしている。その分時間がかかるが、こればかりは譲れない。

 ベランダに出て、明け方の街を眺めながら、コーヒーを飲んで一息つく。この時間が至福のひと時だ。まだ路上の電灯は灯っているが、同時に白み始めた空。二重の明かりで夜と朝が交わり、境界がなくなる。清少納言が『春はあけぼの』としたためた気持ちが少しだけ分かる気がする。

 小鳥のさえずりと微かに聞こえる車の走行音、たまにカンカンカンと鳴る踏切の音をBGMにコーヒーを飲み終われば、ちょうど時間である。身支度を済ませ、玄関の扉に手をかける。

 さて、今日も一日頑張るとしよう。

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