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お題「古代生物」「馬車」「声」

「お嬢ちゃん、旅人かえ?」


 ゆっくりと過ぎてゆく草木をぼんやりと見つめつつ馬車に揺られていたときでした。隣に座っていたご老人がおもむろに話しかけて来て、私は意識をそちらへ向けました。

 好々爺然とした笑みを浮かべたご老人。見たところ敵意はないようですし、ただの暇つぶしの会話でしょう。乗合馬車ではよくあることです。すでに馬車に乗り込んでから一時間以上経過していますので、おそらく暇を持て余したのでしょう。


「ええ。そんなところです」

「まだ若いのに凄いねえ……。わたしゃ、孫が住んでいる地域へ移動している最中なんだが、こうして久々に外に出るだけでいつあいつらに襲われるかはらはらしておるよ」

「そうですか。しかし、私には自衛の手段がありますので問題ありません」


 適当に相槌を打ち、隣に立てかけた大剣を軽く叩きます。

 身の丈ほどあるその大剣を見てご老人は納得してくれたのでしょう。なるほどと頷いた……ちょうどそのときでした。

 馬がいななき、馬車が大きく揺れて急停止しました。私はすぐに剣の柄を握り、窓から外を覗きます。


「噂をすれば、ですか」


 そこにいたのは――古代生物。金属の皮膚に覆われた体に、異様に伸びた手足。見た目が人型なのが、より一層その不気味さを助長しています。

 隣のご老人含め、他の乗客も古代生物を目視できたのでしょう。馬車の中に悲鳴が木霊(こだま)していきます。

 本当はもう少し馬車で移動したかったのですが、こうなっては仕方がありません。貴重な馬車を壊されても困りますし、多少ですが会話を交わしたご老人を見殺すのも寝覚めが悪いです。


「――お、お嬢さん!? どこへ行くつもりじゃ!?」

「どうぞお構いなく」


 ご老人の制止を振り切り、私は大剣を携え後部の扉から飛び降ります。御者席へ向かうと男性が腰を抜かした姿勢のままポカンと古代生物を見つめていました。一人で逃げたわけではないようですね。

 御者の男性は私に気づいたようで、おもむろに視線を降ろしました。


「き、きみは確か……」

「私があれの相手をします。死にたくなければ、急いで移動してください」

「で、でも、そんなことをすればきみが……」

「戦闘に巻きこまない自信はありませんよ」

「……わ、分かった!」


 御者の男性が頷いたのでこれで大丈夫でしょう。あとはこの馬車を巻き込まないように戦うだけです。

 馬車が発進したのを見送った後。地面を踏みしめながら歩いてくる古代生物へ向き直ります。


『イブンシ……ハイジョ……』


 古代生物から無機質な唸り声が響きますが、彼らが話すのはとうに滅びた旧世代の言語です。残念ながら何を言っているのか理解できません。

 私は腰を落として大剣を脇に構えます。


「同じ古代生物のよしみです。すぐに楽にしてあげましょう」

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