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お題「しゃりしゃり」「風鈴の音色」

 とある晴れた日のこと。

 一面に田園が広がる中にポツンと存在するお店。そのお店の前に置いてあるベンチに、二人の少女が並んで腰かけていた。

 おそらく同じ学校なのだろう、ブレザーに身を包んだ二人。しかし、胸元に着けたリボンの色だけが異なっていた。


 お店の軒下に取り付けられた風鈴の音色が響く中。二人は黙々とかき氷を口に運んでいた。しゃりしゃりという音が、風鈴の音色に紛れて聞こえてくる。

 しばらくして、赤いシロップのかき氷を食べていた赤いリボンの少女が、突如片手で頭を押え始めた。


「うっ……」

「どうしました、先輩? 邪気眼でもうずき始めました?」

「ううっ……し、静まれ……! 今はまだその時ではない……! って、違うわ!」


 先輩と呼ばれた赤いリボンの少女が、隣にいた少女の頭にコツンとチョップを入れる。


「失礼しました。先輩の場合、邪気眼じゃなくて左腕の封印でしたね」

「――へうっ!? な、なんでそれを……!?」


 とても分かりやすくうろたえ始めた先輩少女。そんな姿を、隣の少女が冷めた目で見つめる。黄色いリボンを着けたその少女は後輩なのだろう。しかし、その冷ややかな目には敬意のかけらも存在していなかった。


「そんなことより。その頭痛のこと『かき氷頭痛』って言うらしいですよ?」

「いやいや、そんなことじゃないよ! なんで左腕に天使を封印しているって設定知ってるの!? あたし、言ったことないよね!?」

「そうですね、今初めて聞きました。綺麗な自爆ありがとうございます」

「まさかの誘導尋問!?」


 スプーンストローを持った手をおろし、後輩の少女が小さく頭を下げる。それを見た先輩の少女は頭を押えた。


「どうしました、先輩? またかき氷頭痛ですか?」

「いや、これは違うから……。っていうか、その『かき氷頭痛』ってのもどうせ冗談でしょ……?」

「いえいえ、これは本当ですよ。ほら、この澄んだ目を見てください。嘘ついているようには見えないでしょう?」


 後輩少女が自身の目を指差しながら、先輩少女の顔に近づけていく。薄らと赤く染まっていく先輩少女の頬。そして、お互いの顔が触れそうな位置まで来たとき、先輩少女が後輩少女の顎を押すようにして遠ざけた。


「分かった、分かったから! それ以上近づくな!」

「分かってくれたのなら良かったです」


 再び風鈴の音色と、かき氷を食べるしゃりしゃりという音だけが、二人の間に響く。

 しばらくして、かき氷を食べる手を止めた先輩少女が、ぽつりと呟いた。


「……それで、本当は?」

「『アイスクリーム頭痛』って言います」

「やっぱり嘘じゃんか」

「てへぺろ」


 舌を出してウインクする後輩少女。その顔を見た先輩少女は「はあ」と息を吐き。再びかき氷を食べ始めた。

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