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運命の人  作者: ミライ
6/18

#6 口実

「先生ってさ、リカちゃんが好きなんじゃない?」


朝食のおにぎりを食べながらタクミがさらっと言った。


『……!?』


「リカちゃん、すごい顔してる」


リカがタクミに言われて鏡を見ると、綺麗に目が丸くなっていた。とっさに顔を両手で挟む。


「な、何がどうしたらそんな発想に?」

リカは顔を両手で挟んだまま、探るように聞いた。


「いや、前先生さ、リカちゃんの歳、聞いてきたんだよね」


あいつ、なにやってんの……。

リカは黙って聞いていた。


「なんか引っかかってて。すぐには解らなかったけど、『どんな人?』はいいけど、『何歳?』って変だよね」


「そ、そう? 気になったんじゃない?」

「いや、見たら大体わかるじゃん。ママの妹なんだし」


うう、子どものくせにするどい……。


「私が頼りなく見えたんでしょ、ほら、私、31にしては若く見えるから!」


リカは得意げに言ったが、タクミは無視。


「リカちゃん、先生と付き合うの?」

「は?!まさか!」

「ふーん、まあ、ダメだよね」


タクミの方がよっぽど大人だ、とリカは思った。


「だ、ダメとか以前に好きじゃないし」

リカが焦って言う。


「先生、失恋だね。かわいそ」

タクミがケラケラ笑っている。


「何いってんの、先生が、だよ!私のこと好きな訳ないでしょ?」


「……なんで?」


タクミがリカを見る。

色々心の中読もうとしてる?

なんだかリカは落ち着かない。


「なんでって……。2回しか会ったことないし、そもそも好きになるほどよく知らないし」


本当は3回だけど……、

本当は色々知り合っちゃったけど……!


変なこと思い出させないでよ、取り消すように頭の中でばばばばっと手を振った。


「先生、ひとめぼれってこと?」

「だから、好きじゃないってば!」


リカはトーストを一気に口に押し込んだ。


そう、あいつ、本当は私のことなんか好きじゃないんだ。


リカは思った。


だって、だってあれから1ヶ月も放置なんだよ?

運命とか言ってさ、あんな強引なことまでしてさ、で、会いにもこないし連絡もないってどういうこと!?


「先生忙しいんじゃない?」


タクミが言う。


この子、本当に私の心、読めるんじゃ……。

リカの目が、また丸くなる。


「リカちゃん、その顔、解りやすい!」


タクミが笑った。


「へ、変なことばっかり言わないで、早く学校行ってきな!」


「あ、やべ、本当だ。行かないと」

タクミはランドセルを背負いながら言った。


リカが怒ったように言う。

「忘れものしないでよ!」




2時間後。


リカは玄関に置いてある袋を見つけた。


あれ?

これタクミの体操服?


そういえば、昨日タクミが忘れないようにランドセルにかけていた、と思ったけど……。


リカは時間割を確認する。

えっと、金曜日だから……。


「あ!やっぱり今日体育あるじゃん!」


どうする?

今日の仕事はテレワークだから、少し席を外すくらいは大丈夫だけど。


はっとする。


「え?まさか、タクミ……」


本当に忘れた?

まさか先生と会わせるために、わざと忘れた??


いやいやいや、タクミがいくらするどいからって、わざと私に届けさせようなんてしないよね?


でも昨日、確かにタクミは準備していて……。


リカの頭は軽くパニックだった。

この事態にどう対処すべき?


部屋の中をうろうろしながら、行く、行かないとブツブツ繰り返してみた。


そうだ。


リカは気付いた。


これはタクミが忘れたものだ、タクミが責任をとらなければ。


いちいち届けていたら、いつまでも忘れものグセが直らない。甘えさせちゃいけない。


よし、行かない。

リカは決断し、少しスッキリした。

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