転生
トクントクン
一定の間隔で刻まれている
トクントクントクン
絶え間なく続くかと思わせる安寧の時
トクントクントクントクン
ぷかぷかと浮かんでいる。
トクントクントクントクントクン
頭の奥に響く心地よいリズム
僕は知っている。遠い過去から繋がれてきた音だ。
トクントクントクントクントクントクン
何故だろうか、動けない。
動きたくないのか?
何か大切なことを忘れている気がする。
幸せな気持ち、満たされた気持ち。
違う。
『違う。』
違うのか?
何も考えられない。
今はこのまま目を閉じて、ただ漂っていたい。
トクントクントクントクントクントクン
『どうして?』
わからない。
『どこにいったの?』
何が?
『大事なもの』
大事なもの?
確か色々あった気がする。
そういえばこんな風に幸せの海にぷかぷかと浮かんでいた気もするなぁ。
『誰と?』
トクントクントクントクントクントクントクン
誰だか思い出せないけど、たくさん、たくさん周りにいた気がする。
『そのあとは?』
思い出せない。
トクントクントクントクントクントクントクントクン
『そのあとは?』
やめてくれ。思い出せないんだ。
『思い出したくないだけだろう?』
トクントクントクントクントクントクントクントクントクン
・・・
トクントクントクントクントクントクントクントクントクントクン
『偽りの幸せにいつまで浸るつもりだ?』
そうじゃない。
『そうだろう。』
そうじゃない。
『思い出せ。』
何を?
トクントクントクントクントクントクントクントクントクントクンドクン
『忘れてるふりはよせ』
なんの話をしている。
トクントクントクントクントクントクントクントクントクントクンドクンドクン
『俺は許さない』
何をだ。何を許さない?
トクントクントクントクントクントクントクントクントクントクンドクンドクンドクン
何故邪魔をする。やめてくれ。俺はこの幸せに浸っていたいんだ。
『お前は憎しみから逃げられない』
お前はいったい誰なんだ?
『お前は』
ドクン
『俺だ』