段ボールの捨て仔猫
キャラ紹介程度の短いお話です。
一番古く覚えているのは、四方が囲まれた中に兄弟達と救いを求めて外へ呼びかけていた。
羽ばたく音共に時々黒い影が走る。
外の気配に集中する兄弟達は、誰かの上に乗り、少しずつ出ていって最後に自分だけが、取り残されていた。
向こう側で兄弟達の声と騒がしい音。しばらくしてやまった。
突然大きな黒いものがやってきて襲われた。
抵抗したがとてもかなわなかった。
気づくと視界が半分になっていた。体のあちこちも痛みがあって下肢も動かせない。
痛みが癒えることもなく周囲が暗くなったり明るくなったりを繰り返しどれだけ時間が経ったことだろう。下半身の感覚もなくなりますます体が動かせなくなりもう自分はこれでオシマイなんだと悟った。
『カラスにこっぴどくやられちゃったんだねー。アイツ、キミが死んじゃうの待ってるみたいだよ。そいで、ねっねっ、ワシの眷属になんない? 仕返ししたくない』
突然、何者かから声を掛けられた。それと訳のわからない要請?
『ねえねえー、外の景色を見たくない?』
襲ってきたカラスが居るのを観たくないから、いやだと伝える為に知っている言葉を紡ぐ。
「いや、別にいいんだけど」
『ほぉ、どっちにもとれるから肯定って事でっ!』
「えっ、いやちが・・・・」
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『出来たよーーーっと、じゃなかった治ったよ。ん、直ったかも』
自問自答している"アイ"と名乗った謎存在。
「あれ、何か見えかたがへんてこだ」
『あーそれね、潰れちゃった左眼の代わりにワシの持ってる多機能スマホの背面カメラを使ったからだよ。
サーモグラフィーも見られる赤外線域からブラックライトの紫外線域、ナイトビジョンはもともと種族的に持ってるけど目頭にはフラッシュライトもあるよ。小さな補助レンズもあって距離計測もばっちしさね。
本体はそのまんま使うわけに行かないから、脳内にイメージビジョンで可視化しているよ。フリックとかスワイプとか思考だけで操作できるからマスターしてよねっ。
中には便利アプリを詰め込んでるぞー。
さてお待ちかね。もともと先天的に不自由だった上に腱を痛めつけられてた脚ね、近くにある廃工場と閉業してるおもちゃ屋さんからいろいろかき集めてきてすんごいギミックに仕上げたよぉー』
声だけのアイはハイテンションでまくし立てた。ちょっと、なに言ってるのかわかんないです。
言われて下半身を見ると、歯車を重ね合わせてシルエットが出来ている。やっと今、自分が異形な化け物になったんだと自覚した。
自分の意思とは関係なく、振動してる歯車。突然回転し出したり、反転する歯車。
『まだ調整中だからギクシャクしてるけどね、使ってたらAIが学習しくくれるから大丈夫だよ』
いやいや、どう大丈夫なのか理解できません。
そして食料を与えられ、レクチャーするからと言われ体を動かし始める。
歩いてみたり、早足になったり、そしてターン。スキップもあるってこれ必要ありますか。
跳躍するように指示され言われるままやってみると押しつけられる感覚の後、ふわっとして自分のいた環境が、眼下に広がった。
『"空駆け"って念じてみて』
"空駆け"? "空駆け"!
落下しかけていた体が、空中にピタッ留まるが地に足が着かない感覚にじたばたと戸惑っていると『うまく誘えたね。あっちから来たよ。気をつけて』とアイから警告された。
どうする?
体は反射的に、ネコパンチを繰り出したけど効果はなかった。ホバリングは下手なのか一度離れて、加速を付けてまた接近してくる。
『残念だったねぇー、キックでやってみて。今度はアシストするよ』
近づいてくるカラスとの距離を測っていたのか、ここというタイミングで左眼が光った。その閃光に怯んだところへと高速回転する歯車が打ち込まれる。
『やったじゃないか。世の中を見て学習するのとその体に慣れるようにしばらく自分だけで生きてみて。頃合いを見て手伝って欲しいことをスマホのSNSでつたえるからねー。最後に、キミの兄姉弟妹がどうなったか知っておきたくないかい』
「いや、別にいいんだけど」
"チベたんサンド"もそうですが、以前から創ろうとしていたキャラです。ネコの性質上ドコにでも現われ、いつのまにかいなくなる。そんな存在。
サイバーパンク、スチームパンクなどに首を突っ込もうと欲張りすぎてしまっています。
どう生かせるか、持ち腐れになるのか期待しないでください。