ラスト?
前回でラストにしようかと思ったけど、なんかアクセスとかブクマが付いてたのでオマケで。
神様に異世界転生を頼まれ、私は転生特典で貰った『記憶保持』の能力で記憶を引き継いだまま無事に異世界に降りたった。
「……んん。ここは――」
目を開けると、視界には物凄い高さの見知らぬ天井が広がっている。
「おお、ようやくお目覚めになられましたか!」
声がする方向に振り向く。
そこには立派な髭を生やした見知らぬ金髪のおじさんが……はっ! まさか、この人が!
「私のお父さんですか?」
「……は?」
馬鹿な子供を見るような視線が飛んでくる。
どうやら、この人は私のお父さんではなさそうだ。
「まさか、召喚魔法の影響で頭がパァになったのか……?」
「馬鹿な、今までそんなことは一度もなかった筈だぞ!」
ふと周りを見渡せば、この広い空間に沢山の人影がいた。
「いや、もしかすると、召喚対象を無理矢理女性に固定したせいかもしれんぞ……」
何か意味深な言葉が聞こえる。
こいつら、まさか……
「え? なにこれ……」
ふと自身の体が汚されてないかを確認すると、首におかしな物が付いてるではないか。
「はげぇーーー! ヤロウ、ぶっ殺してやる!!」
私は叫ぶ、届けこの思い。
ヤロウ、ぶっ殺してやる。
どうやら私はハメられたようだ。
「――あんぎゃああああああああああああ!!!」
突然、首輪から凄まじい電撃が体に流れた。
「いきなり発狂するとは……まさか、本当に狂ってしまった者が呼ばれたのか?」
私は逃げ出した。
「《ここから逃げ出す事を禁ずる》」
「――あんぎゃああああああああああああ!!!」
金髪髭おじさんの言詞と共に私の首輪が光り出し、そこからまた謎の電撃が体中に流れ出す。
「ふむ、逃げ出して直ぐ様そのような行動を起こせると言うことは少しは知能があるようだな……」
首輪を外そうともがく私を見て、金髪髭おじさんが少し安心したような顔で見てくる。
ドSなのだろうか。
「すまんが、少し話を聞いてくれんか、勇者殿」
「……勇者? それって私の事を言ってる?」
「うむ。ちょっと訳があってお主、勇者殿を異世界から召喚させて貰ったのだ」
神様から転生と聞かされていた筈が、どうやら私はテンプレな異世界召喚に巻き込まれたようだ。
「でも、あれ? 私って死んだ筈じゃなかったっけ……?」
確か、生前は隕石が落ちる所まで覚えているんだけど……?
「この勇者召喚の儀式は、異世界に生存している人間を此方に呼び寄せる魔法だ。むろん、勇者殿が彼方で何があったかは知らんが、生存していることは間違いない」
どうやら、私はまた生き延びてしまっていたようだ。
なら話は早い。
「なら、私を異世界……日本に帰してくれませんか?」
瀕死の状態ならいくらでも何とか出来る。今までがそうだったように。見てろ、ハゲ神。私は絶対に生き延びて帰って、お前の頭をハゲ散らかしてやる。
「勝手に呼び寄せて何だが、私達には勇者殿を召喚する術を持ってはいても、帰す術は持っていないのだ。だが、だがしかし、魔族の王の魔王ならばその術を知っていると聞いておる」
何だろうか、このテンプレ的な展開は……。
「なら、私を自由にしてくれませか? 後は勝手にこの世界で生き延びますので……」
とりあえず、先ずはこの首輪を外してくれないだろうか。
「その首輪は特別製でな、ちょっとやそっとな事では決して外す事は出来ぬ最高位の魔導具なのだ。私達人間には扱えはするのだが、外す事は決してままならぬ」
馬鹿じゃないだろうか。
そんな物を勇者に装着させるって、もう強制イベントをやれと言ってるようなものじゃないか。
「だが、だがしかし、魔王ならばその首輪を外す事が出来、唯一勇者殿を故郷に帰すこと事が出来るやも知れん!」
なんか後の死亡プラグにしてならない。もう、いっそのこと、コイツらをヤッてしまった方が早いのでは……
「勇者殿! どうかお助け願えないだろうか! 今、この国は滅びの危機を迎えているのだ!」
少し真面目に考えていると、金髪髭おじさんと周りの人達が頭を下げている。
「魔王の影響のお陰で、私達王族貴族、民も含めた全ての人間が国の運営を正常に勤める事がままならぬ事態にある。このままではいずれ国は衰退し、滅び行くかも知れない」
金髪髭おじさん曰く、この国の国王に当たる人が私に助けを求めるように膝をつく。
「どうか、どうか……!」
「勇者様、どうかこの国をお救いください!」
周りの人達、貴族の皆も少しやつれた顔をしながら私を見詰めてくる。
「うぐっ……」
こんなのは卑怯だと思う。
そんな疲弊した顔で助けを求められたら断るものも、断れなくなる。
「分かった、分かりました! 保証は出来ないけど、努力してみます……。私もちょっと訳が出来て日本に帰らなくちゃいけないし……」
神様への嫌がらせの為に。
「おお!! 勇者様ならばそう言って下さると信じておりました!!」
ならこんな首輪を装着させないでほしいのだが。
「では勇者殿、早速旅に必要な物の用意をするので、暫らく待っていてくれ」
そう言って国王は、近くにいる武器を持った兵士に何かを取りに行くように命じた。
もしかしたら、魔王討伐に必要な魔法の武器、聖剣や鎧なのだろうか。少なからずファンタジー世界の定番な武器に心が踊る。まさかとは思うけど、ただの木の棒切れと言う事はないだろう。
そんなこんなしてると、部屋の奥から複数の兵士が何か布が被せられた荷台を引いてくる。
重そうな顔をして運ぶ兵士の顔からして、余程大量の何かが積み込まれているようだ。お金かな? お金でもいいよ!
国王はこんもりと盛り上がる荷台に近付き、布を勢いよく外した。そこにはなんと沢山の、
「お待たせした、勇者殿。さぁ、受け取ってくれ! これらの品々は勇者殿に必ず力を貸して下さるだろう!!」
「……何これ」
お菓子が積み込まれていた。
「我が国、全てから集めた最高のお菓子を用意した! これを持って我が国を救ってくれ!」
国王はキメ顔でそう言った。
「馬鹿じゃないの?」
勇者はキメ顔で馬鹿にした。
「こんな物でどうやって魔王を討伐するの? フザケてるの? おちょくってるの? もうあんたらを討伐してやろうか?」
もういいからお金だけでも寄越せとせびる私に、プルプルと震えだした国王は、
「魔王を、討伐……だと? とんでもない!! 誰がそんなこんなをお願いしたのだ!!」
更にプルプル震えだした貴族も、
「馬鹿な!! 又もや同じ過ちを繰り返すと言うのか!!」
「これだがら野蛮な異世界人は……」
「何でも暴力で解決すると言うのは人としてどうかと思うぞ? 異世界ではそんな常識も教えてないのか?」
………は?
「勇者殿、何を勘違いしているかは知らないが、私達が勇者殿にお願いするすることは魔王討伐ではない」
「え、いや……どう言うこと?」
「勇者殿にお願いするすることは一つ、魔王城に住むと言われる伝説の魔王を拐っ……招待して連れてきてほしいのだ!」
「………は?」
「綺麗な黒髪で犬耳の美少女、永遠のロリ魔王。その姿は二百年経ってもほぼ変わらぬ、二百年前の当時の王様や貴族逹も魔王の愛くるしさや、お菓子を与えた時の可愛いさに心を病み、死ぬ間際まで自身の子孫等に聞かせ自慢し続け、異世界の萌えなる文化を今の世代まで国中に、いや、世界中に広めてきたのだ! 分かるか!?」
「ごめん、何を言っているのか分からない」
「もはや、私達は伝説の魔王を一目見たくて仕事が手につかない。私達は魔王に会いたいのだ、我らは餌付けしたいのだ!!」
「うん、こんな国滅べばいいと思う」
異世界に帰る手土産に、コイツら全員の首を魔王に持っていった方が喜ばれるのではないだろうか。
とりあえず、ロリコンは死ねばいいと思う。
多分、終わり。




