なぜかなぜかの江戸時代
ここは・・・どこだ!?
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これは夢なのか、否か。
夢である、と信じたい。
だが、世の中そんなに、甘くない。
ここは、どこ、どこなんだ・・・。
朝、目が覚めたらもうここにいたのだ。
何ら変わりない生活を送り、普通に過ごしてきて15年と6ヵ月。
何が起こったかって?
俺が聞きたいところだ。
なぜここにいるかが分からない。
先ほど言った通り、目が覚めたらもう既に、ここにいた。
江戸時代の、城下町に。
あたりにはを屈強な男や着物を着た女性たちでてんやわんやしている。
ここに来た時にはもう俺は着物で下駄をはいた姿になっていた。
結構便利なシステムだ。
人ごみに流されてふらふらと歩いていくと、蕎麦屋を見つけた。
思い出したように腹の虫が鳴く。
昨日の夜から何も食べていないのだ。新作小説に夢中になって・・・つい・・・。
吸い寄せられるかのように店に入っていくと、かなり賑わっていた。
「いらっしゃい!」
快活な娘の声だ。
よく見ると、かなり整った顔立ちをしている。
見たところ俺と同じぐらいか少し年下だろう。
娘「ご注文は?」
そうだ、そばを食べに来たんだ。
この娘の顔を見に来たのではない。
俺「えーっと、ざるそばで」
今思った。江戸時代の言葉なんて知らないが、ざるそばってあるのだろうか。
娘「はいよ!大将、ざる一丁!!」
あるらしい。
娘「はいおまたせー。黒緋屋特製ざるそば!おいしいよー」
クロアケ・・・店の名前か。変な名前。
それはさておき、確かに繁盛するだけある。うまい。
五分ほどで完食。
・・・したのはいいが、俺は重要なことに気づく。
(金、持ってねえ・・・)
俺「あ、あの」
娘「はーい!少しお待ちくださーい!」
どうしたものか。役所に突き出されでもしたら素性を聞かれるだろう。
平成から来たなんて言えないし。ここに家族いないし。
食い逃げ・・・か?
いやさすがにそれは出来ない。俺の良心が許さない。
娘「おまたせしましたー!追加注文ですか?」
・・・話ずらい。かなり・・・。
俺「あ、あの、その・・・」
娘が不思議がっている。早く言わなければ・・・。
俺「その、俺お金、も、も、持ってないんです!」
二人「・・・」
言った。言ってしまった。どうしよう。
娘「ふ・・・ふふっ」
・・・!?
俺「えと・・あの?」
娘「そんなの知ってますよ!」
は!?
娘「私、そういうの分かるんです!仕草とかで」
ますます混乱。なんか・・・なんだこいつ。
娘「でもお兄さん悪い人じゃないですよね?見ればわかります。」
娘「それにお兄さん イ ケ メ ン だし!お金は私が入れとくので大丈夫!」
・・・。今、イケメンって言ったか?今江戸時代じゃなかったのか?
娘「お兄さん、平成から来たでしょ。」
・・・!?今、平成って言った?マジでなんなんだこいつ!?
娘「私は黒緋 椿。私もお兄さんと一緒。」
椿「平成から来たの。」