表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
先輩と私  作者: メイリ
8/9

先輩④

篠宮さんの顔が見られない。

というか、会ってしまうとコンビニで見かけた男が誰だかを問い詰めてしまいそうで……。

もしそんなことすれば、篠宮さんは何で俺がその男のことを知っているかを疑問に思うだろう。

果てはストーカーと思われて…………イヤだ!

篠宮さんに軽蔑の視線を向けられたらシネル。

なので今日は話すことは無理だ。

俺の変な態度に篠宮さんもきっとおかしいと思ったはずだ。



俺は結局今日一日中、篠宮さんをチラチラ見るという腰抜け野郎だった。

自分の不甲斐なさにガッカリだよ。

家に帰り、自分の部屋のベットに寝転がる。

明日はちゃんと話せればいいけど。


コンコン


「伸也いる?」


この声は……

俺が返事をする前に俺の部屋の扉は開いた。


「なんだ、いるじゃない。」


「俺が返事をする前に勝手に開けたんだろう?」


「もう、男のくせに細いわね〜〜。そんなんじゃ本当に好きな子が出来ても好きになってもらえないわよ。」


グフっ!

なんて的確に人の傷をえぐってくるんだ。

我が姉ながら容赦がない。


「それはそうと用事があったのよ。明日、ちょっと付き合いなさい。」


「はあ〜〜?何でだよ。」


「あんたに拒否権なんてないのよ。いいからおとなしく付き合えばいいの。」


ダメだ、こうなったら何を言っても無駄だ。

下手に逆らえばどうなるかわからない。

明日一日ぐらいは潰れてもしょうがないか。


「わかったよ、付き合えばいいんだろう。で、どこに行くんだよ。」


「そうそう、素直にそう言えばいいのよ。で、明日は買い物に付き合ってもらうわ。」


「何だよ、それぐらい一人で行けばいいだろう。」


バシッ!


「いてっ!何すんだ。」


「あんたがアホなこと言うからでしょう。私が一人で出かけたらどうなるかわかるでしょう?」


ふんっ、顔だけは見栄えがするからか姉は一人で出かけると、やたらと男に声をかけられる。

中身はアレなのに……。


「はいはい、わかりましたよ。」


「あんたも出かけると声かけられるでしょう?だから、明日はちゃんと彼氏彼女の関係を装ってデートよ。」


「…………だりー。」


「ああ?なんか言った?」


「ナンデモナイ。」


こうして俺は、実の姉の買い物にデートを装って付き合わなければいけなくなった。

虚しい…………虚しすぎる。



ーー次の日


いや、本当に、何で、俺は姉とデートなんてしなければならないんだ?

はあ〜〜、どうせだったら……いや是非篠宮さんと、出かけることが可能であれば今までで最高のおもてなしをすると約束出来るのに。

何で、姉……しかも中身は凶暴。

男ってやつは何でこんなのがいいんだろうな。


「伸也〜〜用意出来たの〜〜?」


姉が下から叫んでいる。

俺は二階の俺の部屋から、いやいやながら重い腰を上げた。

断ればいいと思うけど、はっきり言って後が怖い。

ネチネチ責められるのだ。


「じゃあ、行くか。」


「もう!もっと嬉しそうな顔しなさいよ。それじゃあデートに見えないでしょう?」


「……見えてたまるか。」


ベシッ

無言で叩かれた。

これだから凶暴女は嫌なんだ。



「ほら、あのお店に行くわよ。」


俺は腕を引っ張られ、アクセサリーを扱う店に連れていかれた。

その道中、確かに姉に視線を送る男共を何人も見た。

こんな女のどこが良いんだ?

熨斗をつけてくれてやる。


店の中に入った俺は、姉に引きづられあっちへこっちへと連れて行かれた。

はあ〜〜、もう店の中ぐらい一人で見ればいいのに。

俺は特に興味もなかったからアクセサリーは見ず、周りを見渡してみた。


え?

あれって、もしかして。

俺は気付くと小走りでその人の元へと近づいていった。

後ろから姉が俺の名前を呼びながらついて来る。



「篠宮さん?」


俺の問いかけに振り返ったのは紛れもなく篠宮さんだった。

髪を下ろしているから雰囲気が違うが、本物の篠宮さんだ。

うわーー、私服姿も可愛いな〜〜。


「え?せ、先輩?」


驚いている篠宮さんも可愛い。

もう、何をしていても篠宮さんなら可愛いということになる。


「篠宮さんも買い物?」


それなら俺と一緒に……と思ったけど特大サイズのお邪魔虫がいるんだった。

篠宮さんはチラチラと俺の隣を気にしている。

俺の隣?


「あ、はい。先輩は…………もしかしてデートですか?」


いやいやいやいや、それはない!

俺は全力で否定しようとしたのだが、それを邪魔された。


「そうなの!デートなのよ。」


俺の腕を取り、俺の前では浮かべたことのないような笑顔でそう言いやがった。

このバカ姉!

それを聞いた篠宮さんは、お邪魔してすいませんと言って離れて行こうとした。

いやいや、お邪魔なのはこいつだから!

俺が篠宮さんを引きとめようとした時、俺をどん底に叩き落した人物が立ち塞がった。

まさか、こいつと出かけるために篠宮さんはこんなに可愛くしてたのかよ!

俺は勇気を出してその男に篠宮さんの彼氏なのか聞いてみた。

返ってきた答えは『大事な女の子』との言葉。

はは、大事な女の子かよ。

俺だって、俺にとったって篠宮さんは一番大事な女の子だよ!


それなのに俺は二人を追いかけることも出来ずにいる。

何なんだよ、俺はどうしたらいいんだよ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ