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先輩と私  作者: メイリ
7/9

私④

今日は先輩の様子がおかしい。

図書室には来ているけど、何故かキョロキョロして、私と目があうとスッと逸らしてしまう。


ギュッ


心臓がイタイ。

そんな風にされたら、さすがに私も傷つきますよ?

先輩は何か言いたげに私のことを見ている……と思う。

断言できないのは、確認するために先輩の方を見るとスッと視線を逸らされてしまうから。


今日はこんな感じで過ぎていった。

結果、先輩とはお話しすることは叶わなかった。


別に付き合いたいなんて大それたことは言わない。

ただ……ただ先輩と普通にお話しをしたいだけなのに、それすらも出来なくなってしまうのだろうか?

考えただけで心臓が苦しい。

気を抜くと涙が溢れそうになる。

私は重い足取りで帰宅の途についた。



「凛ちゃん!」


後ろから声を掛けられて、振り向くとそこには健斗さんがいた。


「健斗さん……今、帰りですか?」


「ああ、そう。大学の帰り。それよりどうしたの?後ろからでも落ち込んでいるように見えたけど。」


うわ〜、健斗さんが後ろから見てもわかるくらい落ち込んでいるんだ、私。

先輩と話せなかったくらいで落ち込むなんて、メンタル弱すぎだよね。


「ちょっと……テストの点数が悪くって。」


私は先輩のことを言うのは恥ずかしいと思い、とっさに違う言い訳をした。

すると健斗さんはウンウンと頷いてこう切り返してきた。


「そっか〜〜、テストって凹むよね〜。俺もそうだったし。……ねえ凛ちゃん、明日ヒマ?」


明日?特に用事は無かったけど。


「……ヒマですよ。」


健斗さんは私の答えを聞いてニッコリ笑ってこう言った。


「じゃあさ、気分転換に買い物行かない?俺さ〜、プレゼント買いたいんだよね。ほら、ユイの誕生日だからさ〜。」


ユイさんというのは健斗さんの可愛い彼女さんだ。

とっても可愛いのに、性格が男前で、私にも良くしてくれる。

……うん、そうだね!

ユイさんの為にもプレゼント選びにお付き合いさせてもらおう。


「良いですよ。私で良ければお供させて下さい。」


「やった〜〜!じゃあ、明日よろしく。家に迎えに行くから、待ってて。」


「ちなみにユイさんとは明日会わないんですか?」


「ああ、ユイは明日バイトなの。大丈夫、心配しなくても夜ちょっと会えるから。」


健斗さんはそう言うと、バイバイと手を振りながら家の中へと入って行った。

私も自分の家へと入ることにした。

さっきよりも気持ちが軽くなっているのは健斗さんのおかげだね。



ーー次の日


私は久しぶりのお出かけということもあり、珍しくスカートも穿いて普段よりも身だしなみを気をつけた。


ピンポーン


チャイムがなった。

健斗さんが迎えに来てくれたみたい。

玄関のドアを開けると笑顔の健斗さんが待っていた。


「あ、おはよう凛ちゃん!」


「おはようございます健斗さん。」


私たちは揃って家をあとにした。

今日は駅前のお店を見て回るらしい。


「健斗さん、ユイさんにどんな物贈る予定なんですか?」


「それなんだけどさ〜、俺女の子が何が好きかよく分からない上に相手がユイだから、困っているんだよね。だって前にユイに何が欲しい?って聞いたら『サンドバッグ!』って即答されたんだよ。ありえないでしょ〜。さすがにそれを誕生日プレゼントにするのはどうなの?」


さ、さすがユイさん。

ユイさんは趣味で格闘技を嗜んでいらっしゃる。

前に型を見せてもらったけどカッコよかった。

でも、彼女の誕生日にサンドバッグはないよね〜。


「そ、そうですね。サンドバッグは今回はやめておきましょう?ほ、ほら、プレゼントを一緒に選ぶ為に来たんですからいろいろ見てみましょう!」


私は健斗さんを励ましてお店を回ることにした。

とりあえず、無難にアクセサリーショップから。



「健斗さん、これなんて如何ですか?」


私は綺麗なピアスを健斗さんに見せた。

前にユイさんがピアスをしていたのを見たからだ。


「あ、綺麗だね。うーん、そうだなぁコレも良いけど、こっちも捨てがたい……」


健斗さんがウンウン唸りながら真剣に悩んでいる。

なんか良いね、こういうの。

彼女の為に真剣にプレゼントを選ぶ男の人ってカッコ良いと思う。

私は唸っている健斗さんの隣で、キラキラ光るネックレスを眺めていた。

その時、『篠宮さん?』と誰かに声をかけられた。

振り向くとそこには…………



「え?……せ、先輩?」


そこには先輩が立っていた。

しかも……先輩の隣にはとても綺麗な女性がいる。


「篠宮さんも買い物?」


「あ、はい。先輩は…………もしかしてデートですか?」


私は自らにとどめを刺すような質問をしてしまった。

でも、気になる。


「え、デート?いや、俺は……」


「そうなの!デートなのよ。」


先輩の言葉を遮るように隣にいた女性がそう答えた。

……そっかぁ、失恋か〜。

私は痛み出した心臓を押さえ、先輩の邪魔をしないようにその場を離れようとした。


「あ、そうなんですね。お邪魔してしまって申し訳ないです。じゃあ、私はこれで……」


私がそう言って離れようとした時、名前を呼ばれた。


「凛ちゃん!」


健斗さんが呼んでいる。


「し、篠宮さん!俺は!」


先輩が何か言いかけたがその前に健斗さんが私の前に立った。


「うん?君、凛ちゃんの知り合い?凛ちゃん、やっと決まったから買ってきたよ。あとコレ。さっき凛ちゃん見てたでしょ?今日のお礼にあげる。」


そう言うと健斗さんは、さっきまで私が見ていたネックレスを私につけた。


「あ、あなたは篠宮さんの彼氏なんですか?」


いつもは紳士的な先輩が感情的に健斗さんに質問している。

対する健斗さんは、飄々と


「うん?俺?うーんっと、凛ちゃんは大事な女の子だよ。」


そして健斗さんは私の手をとって歩き出した。

後ろから先輩が何か言っているが、あちらも彼女さんが先輩を引きずって行った。



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