私➂
私は薫ちゃんと一緒に台所へ来た。
オムライス用のご飯は炊けたようだ。
じゃあ、まず最初にスープとサラダの準備をしようかな。
私と薫ちゃんは細かく野菜を刻み始めた。
ジャガイモ、人参、玉ねぎ、キノコ、あと冷蔵庫で眠っていた野菜も全部細かく刻んだ。
ベーコンも刻んで、全部を鍋で軽く炒める。
あとは適当にお水入れて、コンソメ入れて煮れば完成の簡単スープだ。
サラダは最近薫ちゃんがハマっているリンゴ入り。
刻んだリンゴと大根の細切りにマヨネーズと酢、塩コショウであら簡単もう出来ちゃった。
そしていよいよオムライス。
玉ねぎ炒めて、コーンやウインナーも投入。
炒まったら、塩コショウをしてケチャップ、ソースを少々加えて、そこへご飯を入れる。
中身はコレでオッケー。
あとは人数分の卵を作っていけば完成だ。
私の隣で薫ちゃんが鼻歌を歌っている。
「ふふふ〜ん♪ オッムライス〜〜、早く食べた〜〜い。ふわふわ〜〜トロトロ〜〜。」
何故かオムライスを作ると歌い始めるんだよね。
作詞作曲薫ちゃんのオムライスの歌。
「ねえ、薫ちゃん。お兄さんのお友達のも作って良かったんだよね?」
作ってから言うことではないが、一応確認。
「うん、もっちろん!むしろそれが目当てみたいな……ううん、何でもない。それよりご飯はお兄ちゃんの部屋で食べるだろうから私が運んでくるよ。シノちゃんはどんどん卵を焼いちゃって。」
そう言うと薫ちゃんは完成したものからお盆にのせて運び始めた。
なるほど一緒に食べるわけではないようだ。
まあ、私的にもその方が楽でいいけど。
知らない人とご飯を一緒に食べるのは疲れるもん。
薫ちゃんが1人で何回か往復して、運び終わった。
私達もようやくご飯を食べられる。
「「いただきます!」」
仲良く挨拶をして食べ始める。
うんうん、やっぱり出来たては美味しいね。
薫ちゃんも会話もせず黙々と食べ進めていた。
「ふう〜〜、美味しかった!ごちそうさまでした。いつもながらシノちゃんのご飯は美味しいね〜。よし、このままうちにお嫁に来ちゃいなよ。」
薫ちゃんは機嫌良くそんなことを言っている。
もう、冗談ばっかり…………じょ、冗談だよね?
意外と真剣な目で言う薫ちゃんにタジタジになってしまった。
「ふふ、冗談だよ。……今のところはね?(ヘタレが動かないようならお兄ちゃんをたきつけて奪っちゃっても私は良いんだけどね。)」
冗談だよ、のあとはよく聞こえなかったけど、冗談のようで良かった。
目が割と本気っぽい感じだったからどうしようかと思ったよ。
ふと、時計を見るともう20時を過ぎていた。
そろそろ帰らねばならない。
「薫ちゃん、もうそろそろ私帰るね。」
「え〜〜、もう帰っちゃうの?泊まっていっても良いんだよ?」
薫ちゃんはそう言ってくれているが、そういうわけにもいかない。
家に帰ってからも仕事で遅い両親に代わり、洗濯などしておかないと溜まってしまう。
「ありがとう、薫ちゃん。でもやらなきゃいけないこともあるからやっぱり帰るよ。今日は一緒にご飯食べてくれてありがとう。嬉しかったよ。」
「そんなの気にしないで。私の方こそ感謝だよ〜。シノちゃんのご飯だったら毎日食べたいもん。」
薫ちゃんが嬉しいことを言ってくれる。
作り甲斐があるってもんだ。
「じゃあ、またね。お邪魔しました。」
「え、お兄ちゃんに送らせるよ。ちょっと待ってて……」
「ううん、大丈夫。明るい道だから大丈夫だよ。いっつもこのぐらいになったりするし平気だよ。」
私はそう言うと薫ちゃんの家をあとにした。
お友達が来ているのに付き合ってもらったら申し訳ないしね。
薫ちゃんには大丈夫とは言ったものの、夜道はやっぱりちょっと怖いので気持ち早歩きで家を目指した。
通常なら10分のところこのペースなら5、6分でつけると思う。
しかしここで予期せぬ出来事が起きた。
背後から足音が聴こえる。
最初は薫ちゃんのお兄さんがついてきてくれたのかもと思ったが、一向に話しかけてこない。
だけど私のペースと同じペースで後ろからついてきているようだ。
このまま家までついて来られたら困る。
私は家の近くのコンビニに一旦寄ることにした。
もしかしたら気のせいかもしれないし。
無事コンビニについた。
急いで中に飛び込む。
ようやく後ろを振り向く余裕ができ、振り返ってみたがそれらしい人影はない。
気のせいだったのかな?
私が1人百面相をしていたら、トントンと肩を叩かれた。
驚いて振り向くとそこには……
「こんばんは、凛ちゃん。」
そこにはお隣りの家のご長男、高村健斗さんがいた。
「あ、健斗さん……もう、びっくりさせないで下さいよ〜。」
「ごめんごめん。あんまり表情がクルクル変わっていたから気になって。で、どうしたの?」
私は今さっきあったことを話した。
「そっか〜、それは怖かったね。じゃあ、俺と一緒に帰ろう。俺もちょうど飲み物欲しくてここに来たんだ。どうせ帰る方向は一緒なんだからいいよね?」
そう言うと健斗さんは私を安心させるように頭をポンポンっとしてくれた。
「あ、ありがとうございます!」
「いいの、いいの。さあ、とっとと帰ろう。」
私は健斗さんに甘えて一緒に帰ってもらうことにした。