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先輩と私  作者: メイリ
1/9

私➀

私には好きな人がいる。

その人は私の一つ上の先輩で、工藤伸也先輩という。

先輩はとっても優しい。

同年代の男の子に比べても、高校生に使う言葉か分からないけど、紳士的だ。


出会いは高校の図書室。

私は大好きな本に関わりたくて、図書委員になった。

先輩は図書室の常連さんで、毎日本を借りに来ていた。


ある日、図書室で騒ぐ子たちがいた。

運悪く司書さんが席を外している時に騒ぎ始めたのだ。

見ると、先輩方のようだった。

声が掛けづらいが、図書委員としては何もしないわけにはいかない。

私は勇気を出してその人たちの方へと向かった。



「あ、あの。もう少し静かにしていただけますか?」


「はあ〜?」


「何?声が小さくて聞こえないんだけど?」


先輩方は私のことをニヤニヤしながら見ている。

どうやらからかっているようだった。


しかしもう一度注意をしようとした時、先輩方の顔色が変わった。

今までの小馬鹿にしたような顔ではなく、どちらかと言うと怯えているような?

すると、私の後ろから聞き慣れた声がする。



「ねえ、君達。ここが図書室だって知っているだろう?ほら、図書委員のカワイイ後輩が困っているんだからもう少し静かに過ごそうよ。」


私に代わって先輩方に声を掛けてくれたのが、工藤先輩だった。

先輩のおかげで騒いでいた先輩方もおとなしくなってくれたのだ。


この事がきっかけで私と先輩は図書室で会う度に少しずつ仲良くなっていった。



先輩は本当に本が好きなようで、毎日昼休みも、放課後も図書室で過ごしている。

だって、週に三回当番になっている私がいる日もずっといるっていうことは、毎日ってことだよね?

確かめてみたことはないんだけど、きっとそうだよ。


私はこの先輩に会える当番の日を楽しみにしている。

先輩が座る席は決まっていて、ちょうど当番で座っている席から見えるのだ。

仕事をしながらチラチラ様子を見ているのが今の一番の楽しみだ。

ス、ストーカーじゃないよ!

好きな人を見たいって気持ちは誰にでもあるよね?


先輩は窓際に座っている為か、たまに外を見ている。

その時は決まって笑顔になっているのだ。

一体何を見ているんだろう?

今度聞いてみようかな。



私は先輩を見ているだけで満足だった。

…………そのはずだったんだけど。


昨日、地味に凹んだ。

理由は、単なる嫉妬だ。


昨日、廊下を歩いていたら先輩を見かけた。

挨拶ぐらいはしても良いよね?と思い近づこうとしたのだが、諦めた。

だって、いつも紳士的な先輩が同級生らしき女子の髪を笑いながらクシャクシャってしてたんだもん。

それだけ?って思うでしょ。

でも、いつも紳士的な姿しか見ていなかった私はショックを受けたのだ。


ちょっとは仲良くなれていたと思っていたのに、私には絶対あんなことしない。

いつも丁寧に接してくれる。

まるで一線を引いているかのようだ。

私はきっとあの同級生の女子のような扱いはしてもらえないんだ。

そう思うと、悲しくなった。


私は結局先輩に挨拶はせずその場を後にした。



「篠宮さん。」


先輩が私のことを呼んだ。

当番の席でボーッとしていて、先輩にも気づかなかったみたい。


「あ、先輩。えっと、本の返却ですか?」


「うん、そうなんだけど……篠宮さん、大丈夫?ボーッとしていたようだけど具合でも悪いの?」


先輩はいつもと変わらず紳士的だ。

それが嬉しくもあり、悲しくもある。


「いえ、大丈夫です。では、返却の手続きしておきますので。」


私は先輩の顔を見ないように本を受け取った。

顔を見ていないから本に視線がいくのだけど…………あれ?

何故か先輩の手が震えている。

どうしたのかと思い顔を上げると、先輩の顔色が悪い。


「え?あ、あの、先輩大丈夫ですか?先輩の方が具合が悪そうですよ。」


「あ、う、うん、ダイジョウブ。うん、何でもないから。」


先輩はそう言うといつもの場所に移動した。

どうしたんだろう?

いつものように当番の合間に視線を先輩に移せば、今日の先輩はどこかおかしい。

難しい顔をしながら何かブツブツ言っているようにも見える。

難しい課題でも出たのかな?


先輩は気になったけど、司書さんにお使いを頼まれたから職員室に行くことにした。

テクテクと廊下を歩いて行くと、前方から見たことのある人がきた。

あの人は……昨日、先輩が髪を触っていた人だ。


私はなるべく視線を合わせないように廊下のはじっこを歩いてすれ違おうとした。

だけど、そう上手く事は運ばないようだ。


「ねえ、キミ。」


話しかけられてしまった。

廊下を歩いているのは私達だけだから、見えない誰かに話しかけていない限り相手は私なんだろうね。

しょうがないので立ち止まった。


「はい。何ですか?」


先輩は立ち止まった私をじっくり眺めた。

時折、うんうんと頷いている。

どういうことなんだろう。


「あのさ、キミは伸也のことどう思ってい……」


話している途中で、その女の先輩はいなくなった。

正確に言うと誰かに連れて行かれたのだ。

速すぎてよく見えなかったけど、アレは工藤先輩?

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