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♪警備girl 共通①


没落した財閥、それがまだ理解できない少女にも雰囲気で何かを感じた。


『きゃあああああ!』


あたりは一面に火がまわり、焼け焦げるナニかの臭い。


『苦しい……痛いよ……誰が助けて』

『お嬢様……!!』


ああ、執事の八千夜(やちよ)が私を抱えて逃げたのだ。

それでも私はそのとき既に瀕死で、なぜ生きているのかさえ不思議だった。

たくさんの煙を吸って、足には酷い火傷があった筈なのに、不思議と後はない。


「またあの夢……」


――ついさっきまで何度も見てきた夢をみていたけれど、すぐに中身が記憶から消えていく。

しかしその夢を見たという事実や、誰かに首を絞められる感覚だけはまだある気がする。


「おはようございますお嬢様」

「おはよう」


執事の千葉八千夜、彼は没落しても唯一屋敷に残った人。


「約20分後にはお仕事の時間でございますが、朝食はいかがなさいますか?」

「え、もうこんな時間!?」


両親の事業が失敗し、没落して数年が経つ。祖父の遺してくれた貯金がなくなり、私が働かなくてはならない。


「裏口から出るわ!!」


大財閥と言われた堂宮(どうぐう)家のスクープを撮られるわけにはいかない。



『いいね君~バイトやっちゃいなよ~』


数日前に社長の天野零義あまのれいぎさんからスカウトされた私は、新しく開かれた芸能事務所の警備員のバイトをやる事になった。


『ついでといってはなんだが、アイドルがいない。探してほしいんだ……!』

『それ本末転倒じゃ……というか私がですか!?』


ということがあり、なぜか警備しながらアイドルの卵を探す事になった。


『何人探せばいいんですか?』

『それっぽいグループを作りたいから五人だね』


とかなんとか丸投げをされたが、お金を稼ぐことは大変なのだという教訓と思おう。


「ねえ、ここがレイキ芸能事務所?」


金髪の生意気そうな美少年がやってきた。これはスカウト必須物件ね。


「はい」

「下積みには良さそうかな……」


ラッキーなことにアイドル志望らしい。


「アイドルになりませんか?」

「は……!?」


さすがにいきなりすぎて怪しまれている。


「なれるならやるけど、いいの?」

「社長からスカウトもやるように言われてるんです」


彼が社長に会いにいったのを見送る。案外早くアイドル候補をゲットした。


「あいた!」


青髪白衣の青年が何もないところで転んで恥ずかしそうに周りを見ている。

私は彼の為に目をそらして見なかった事にする。


「まったく、このカイル様の出演を断るとは!」

「まあまあ、いくら金を積んでも事務所がないんじゃしかたがないだろ?」


なにやら知り合いがいた。


「ん?」


――やつは大嫌いな幼馴染で元許嫁の江東カイル、と知らないスーツの男。見つかる前に建物に隠れる。


「new事務所だな」

「よし、行くぞ」


どうやらアイドルゲットらしい。しかし、あの隣のマネージャーらしき人は知り合いではないが一年くらい前にテレビにいた気がするような。


『最近、アイドルの南波ソウト君を見ないんだけど』

『たしか売れなくてマネージャーに転身したそうですよ』


――そういえば彼はアイドルにあまり興味がない私が唯一と言っていいほどニワカのファンだった不人気アイドルだ。



「足りない……このままでは、また悲劇が繰り返される……」


さっきの青髪が不振な動きをしている。ちゃんと監視しておかなくちゃ。


「きゃあああああ!!」


悲鳴がして振り向くとすぐ近くで黒いコウモリの羽の生えた女が無差別に人を襲っていた。


「ねぇ……血をちょうだい……」


羽からレーザーが出て、それを浴びた人間も吸血鬼と化した。


「化け物……ヴァンパイアが出たぞ!!」


吸血鬼って夜中に出るもののはず。なのになぜこんな昼間にいるの!?


「ああ、始まってしまった……」


青髪の男は腰を抜かし、逃げる力もないらしい。


「シンソノ……血……」

「いやっ!」


私は足に吸血鬼のレーザーを浴びてしまう。しかしなんともない。


「とにかく、逃げなくちゃ!」

「え!?」


青髪の男の手を引いて、事務所の中へ入る。


「……ここにはこないみたい」

「いったいなんの騒ぎ?」

「街中にいきなり吸血鬼が現れて……」


まるで怪獣映画の撮影かといわんばかりだ。


「吸血鬼なんているわけな……」


金髪君が外へ出ようとすると、吸血鬼がこちらをみる。


「いたね」

「だからいるっていったじゃないですか」


気持ちはわからなくはない。いきなり吸血鬼なんて信じられないだろう。


「でも不思議と建物に入らないな」


金髪くんは発見されたのに、光線どころか追ってもこない。


「吸血鬼は招かれないと家に入れないって聞くよね」


青髪の男が手帳を取り出していう。

それでも、吸血鬼が襲ってきたらと思うと怖くてたまらない。


「外で何かあったのかい?」


零義社長は外へ出ていこうとする。


「あぶないですよ社長……!」


咄嗟に掴むと、ドクりと心臓が跳ねる。足が痛み出してその場にへたり込んでしまった。


「大丈夫?」

「はい、なんか足が急に痛くなって」

「やはりさっきの光線が……いや、それならすぐにヴァンパイア化する筈か……」


青髪の男はヴァンパイアについてなにか事情をしっているみたい。


「僕は川野ソヨキ。都心の学院に通ってる」


皆で彼の話を聞くことになった。


「あなたはただのオカルトマニアにしては、これを予知していた様子だったけど……」

「父は科学者で昔から吸血鬼が架空ではなく実在したのかについて好きで調べてたんだ」


医大生や科学者なんて人体実験とか未来で暴走する機械人間とか造っていそうでマトモな印象がない。


「で、あの吸血鬼が物語に出てくるやつと違うのはなぜだ?」


太陽を浴びられて、羽からレーザーを出したり、噛みついて血を吸わない。


「数年前にある科学者が吸血鬼を産み出すエイテル装置を開発した。それを今日、何者かが暴発させてしまったんだと思う」

「その科学者ってまさかお前の父親とか言わないだろうな」

「……叔父だよ」

「ええっ!?」


「よし、何がなんだかわからないが……家でアイドルやらないかい?」

「あれ……」


――これでアイドルが四人は集まったんじゃないかしら!!


「後一人、どうしようかな……」

「ユキノ様!」


――八千夜が入り口付近までやってきた。


「え、なにあの人」

「八千夜!こんなところに来たら危ないわ!!」


私は咄嗟に一階まで降りて、彼を建物に入れる事にした。


「ふむ……」

「……あの?」


入るやいなや、社長が八千夜の顔をじっと見る。


「まさか、彼をアイドルにスカウトなんて言いませんよね?」

「ダメかな?」


正直、後一人だから数合うわせにしたいのは山々ではある。


「ユキノ様がやれと仰るなら、私は構いません」

「ありがとう八千夜!」


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