やるんじゃなかった……。
お久しぶりでございます。
大変時間が空いてしまい申し訳ございません。
でも次からもこれくらい空くと思います……。
間が空いたので三行であらすじ。
断罪イベ終わったら次の刺客が現れた!
もしかして復讐フラグ立ってる?
昨日の敵(殿下)は今日も敵。だけど同盟結びました。
はい、本日も魔法実習場に来ております。
それとやっぱり先生とマンツーマン。
別に他の生徒を放っといてるわけじゃない。
だって私しか生徒居ないし。
ハブられたわけじゃねーから! ぼっち補習でもねーから!
闇魔法の授業は人気ないんだよ……。
どれくらい人気ないのかと言えば、光と同じほど適性のある人が少ないのに、それでもスルーされるくらいには人気がない。
言ってなかったけどこの学校生は単位制で、学科だろうが魔法だろうが剣術だろうが、単位数が足りてればどの授業を取っても卒業できる。
もちろん役に立たないのばっかとっても卒業してから困るけどね。
そんなわけだから平民の学校だったら適性があれば闇でも頑張るらしいけど、貴族様は平気でスルーしやがる。
だから余計に人気なくなるんだっつーの。
確かに見た目真っ黒で怪しい雰囲気炸裂な魔法ばっかだけど、光と同じくらい役に立つんだからなー?
お前らバカにしてるけど、闇魔法の耐性の無い魔物だって結構いるからなー?
ていうか昼間に出てくる魔物は大抵耐性がありません。むしろ光耐性持ってるっての。
なのに闇魔法は選ばれない。見た目怖いし。
不憫だ……私と同じくらい不憫だ……。
目の前の先生だってね、全身真っ黒のフード付きローブに覆われてていかにも悪の魔法使いって感じだけど、ローブの下は実は白髪ロリ形美少女という素敵テンプレが待ってるからな? これ知ってるのほんの一握りだけど。
授業中でもプライベートでも必要最低限しか喋らないけど、本当にただ無口なだけだからな? 仲良くなってもやっぱり喋らないけど、表情はころころ変わるから結構破壊力高いんだぞ。
ちなみに友人その一でもある。
二つ年上で去年までここの生徒だったんだけど、前の闇魔法の先生が引退するってんで卒業と同時にそのまま雇われたんだよね。
どんだけ闇魔法の使い手少ないの……。
「レア、お疲れ」
意訳:授業時間終わったから今日はこれまで。お疲れ様でした。
「ありがとうございました、サフィ先生」
頷くだけのサフィ先生。
本当はサフィニア先生とか、家名を使ってレッテル先生とか言うべきなんだけど、最初の授業でそれを言ったらものすごい拗ねられた。
なので二人しか居ないときには、お互い今まで通りということに。
授業中はさすがに“先生”をつけるけども。
「サフィ、光魔法の先生はまだ見つからないんですか?」
「まだ」
アイナ様の悪事の片棒担いでたから、どっかに飛ばされちゃったんだよねー。
そんな先生だから私にだけ単位をなかなかくれないわけだよ……。
「サフィがやるのはダメなんですか?」
「イヤ」
サフィは私と同じで全属性。ついでに実力も十分。学園長からも話が行ってると思うんだけど、それでも断る理由は……。
「そんなにローブを脱ぎたくないんですか」
「当然」
だよねー。しかもただ頷くだけじゃなくわざわざ言葉にしてるので、もうガチで嫌がってる。
闇魔法と相性抜群のローブなので、これ着たままだと光魔法の授業できないらしい。
じゃあ光魔法用のローブ作ればいいじゃんって思うけど、今のと同じくらいの品質を求めると黒いのは作れないんだよね。でも黒じゃないとイヤだってさ。
サフィがローブを脱ぎたがらない、その理由。
その始まりは、サフィの幼少期にまで遡る――
ってもったいぶってみたけど大した理由じゃないんだよね。
小さいときからずっとこうだったから黒以外は落ち着かないってさ。ていうか裸にされた気分になるんだって。そりゃ落ち着かんわな。
中身はすっごい可愛いからいろいろ着せてみたいんだけどなー。
フリフリ着せて、今みたいに袖をクイクイ引っ張ってもらうともう最高。
ていうかなんで袖引っ張ってんの? さすがに顔が見えないとアイコンタクトもできないよ?
「サフィ?」
「……大丈夫?」
どれのことだろう。殿下のことかなーオリビエ様のことかなーそれとも別のことかなー。
「どれのことかわかりませんが、今のところは大丈夫です」
「そう」
あくまで今のところね。
「だから何かあったら助けてください、サフィ」
「わかった」
サフィに頼ることはないだろうけど、一応ね。
先生の権限でいろいろ調べてもらうことも可能なんだけど、残念ながらうちの双子と殿下の部隊のほうが情報に関しては上だし。
頼るとなったら実力行使のときかな。それにしたって最後の手段だよね。
「では、私はこれで」
サフィが頷いたのを確認して、校舎のほうへ。
殿下を迎えに行かなきゃいけないんだよ。
これからはできるだけ殿下と行動を一緒にして他人を寄せ付けないようにするからねー。
今朝だって二人で登校したし(寮から校舎まで、わずか数分だけど)、これから二人で昼食を取るのだ。
昨日お茶しといて良かったよ。背中向けてたけど耐性はできてる。同じテーブルだって耐えられるはず。
ダメだったらそのとき何とかしよう、うん。
校舎に入って殿下の居る教室へ。
でも最短ルートからは一本外してわざと遠回りをする。
昼食時の廊下は、どこもかしこも生徒で一杯。
私が通る廊下は静かで誰も動かないけどねっ!
そんなだから目立ってくれるわけで、目立ってくれれば見つけてもらえるわけで。
「エレアノーラ様っ、あの、よろしければお昼をご一緒させていただけませんでしょうか……」
取り巻きげーっと。
殿下でなければオリビエ様でもない、ただのモブ。
でもこれも必要なんだよねー。
「今日は、殿下とご一緒させていただくことになっていますので」
「し、失礼しました! そのようなこととは思いもせず!」
慌てて頭を下げる取り巻きたち。でも今日の私は寛大ですのよ?
「構いません。その心遣いは嬉しく思います。せめて、近くのテーブルで見守っていただけませんか? 殿下との昼食はとても嬉しいものですが、みっともなくも舞い上がってしまっているのです。皆さんが側にいてくれることで、私の心は落ち着くのですから」
「エレアノーラ様……なんてお優しいお言葉を……」
感動に震える取り巻きたち。
いやお前らに見守られても全然落ち着かないけどね!
じゃあ何でそんなの連れて行くのかって?
肉壁ですよ肉壁。あ、言い過ぎた。壁モンスターだった。
どうやったって殿下と私が居れば目立つしね、こそこそ隠れるよりもいっそ目立ってしまおうということですよ。
そんでもって周りの席は取り巻きで壁を作ってしまう。
友好的な者以外は近寄りもできないし、頑張って攻めても監視の目がきつくて何もできないってわけですよ!
まぁあのふんわりオリビエ様は空気読まずに話しかけてきそうだけどね、でもお茶に誘ったりはしないんじゃないかな。
そんなことしたら周りが黙ってないし、それくらいはオリビエ様も警戒してくれるでしょ。
殿下のほうも男子生徒を引き連れてくるはずだし、誰かインターセプトしてオリビエ様を先に誘ってくれるのがベストな流れ。
そこまでは望みすぎだけど。
そんなことを考えつつ食堂へ到着。
計ったようなタイミングで殿下も登場。
優雅に挨拶を交わして食堂の真ん中のテーブルにつく。
周りは取り巻きが我先にと奪い取っていく。椅子取りゲームみたいだな。
テーブルは丸テーブルね。二人用のテーブルじゃなくて四人まで座れるようになってるけど、私と殿下のテーブルに着くような勇者は居ない。長テーブルじゃなくてよかった。
テーブルに着いたところで食事が運ばれてきたので、私たちは食事を始めた。
……そこまではいいんだけど……。
やっぱこわっ! すっごいこわっ!
食堂中の視線が集中してるんだよ! 男も女も関係なく!
見てないやつも意識はこっちに向けてるしね、全ての人間が集中してんじゃないかってくらい。
しかも敵意が多いんだよ……男子も女子も……。
嫌われ者のトップと人気者のトップが食事してるわけだからしょうがないんだけどね、ホント死ね死ねオーラがすごいんだよ。
でも私お前らになんかしたか? 存在するだけで害悪ですかそうですか。
あと知り合いが居なくなったってやつは結構いそうだな。
やっぱ恨まれるわ。
ううっ、自業自得はほんの少しだけとはいえ、やっぱ敵意向けられるのは怖いよぅ……。
殿下も殿下でねー女子からものすっごい見られてる。
イケメンが優雅に食事してりゃーそりゃ絵になるよ。
しかも一緒に居る私もそれなりに美人だから、絵としてのランクはさらに上がってるはず。
嫌われ者の私にも、熱い視線が増える程度には。
ちなみに私の場合は異性だけでなく同性からも増えてるっぽい。いいなーとかそういう意味だよな? そこの席に行きたいなーってそういう意味だよな? 他の意味なんて……いや考えるのよそう……。
とにかく殿下も見られまくってるので結構きつそう。
大半は憧れとかそういう感じだけど、中には獲物を狙うような視線もあるし。
夜会じゃないんだからそこまでがっつくなよ……だから殿下が怯えるんだっつーの。
しかもこんなときに聖母のお出ましですよ……はっ、ダメージを受けた殿下にその癒やしスマイルでつけ込もうってことか!
やるなこの人、冷静に狂ってるって一番やりづらいぞ!
「ごきげんよう、殿下、エレアノーラ様」
「ああ」
「ごきげんよう、オリビエ様」
殿下素っ気なさ過ぎ。それで正解だけど。
「仲睦まじいお二人の姿を見ることができて、今日も幸せですわ」
いえいえこちらこそ、今日も見事な聖母の微笑みをありがとうございます。
見てるだけならいいんだけどねぇ……。
「ところで、放課後のご予定はいかがでしょうか? 実は美味しいお菓子が手に入りまして」
ぶーーーーーっ!!
ちょっと! さっきまでオリビエ様はお茶に誘ってこない理論を展開してたのにあっさり無視しないでくれるかな!
折角頭がパーに見えて実は考えてるんだぜってのを装ってたのに、本当にただのパーじゃん……。
ギャララリーも役に立たないなー、お前ら何のためにそこに居ると思ってるんだ。今度から観覧料取るぞ。
大体男ども。お前ら全ての人気を殿下に取られて、男子=モブの図式になりかけてるってわかってるか?
少しは男気見せろや! 男なら攻めだ! 受けてるだけじゃ彼氏は出来ても彼女は出来んぞ!
がっつかれたら私は逃げるけどね。怖いから。
ホンット役に立たんやつらめ。午後の予定も組んどいてよかったよ。
「申し訳ありません。今日は殿下と魔法戦の訓練することになっておりまして」
「素晴らしいですわエレアノーラ様。既に魔法授業の単位はほとんど取り終わっているのに、さらに力を伸ばそうと言うその向上心。私も見習いたいものです」
本当に感心したように褒めてくれるオリビエ様。
その後ちょっと残念そうにしつつも、すぐに引いてくれた。
そう、聖母なオリビエ様はそのイメージ通り、戦闘が苦手なのだ!
私は魔法関係なら戦闘も含めオール一位。
殿下は水・風・土の三属性しかないけど、魔法戦に限ればそれなりにいい勝負ができる。
剣も使用したら互角に近いなんじゃないかな?
剣のみだったら私のぼろ負けだけど。
オリビエ様は魔法関係の成績はいいけど戦闘は全然ダメ。
だから魔法戦の訓練と言えば引いてくれると考えた。もし引き下がっても足手まといの一言で終了。
……でも結局こうなるなら、わざわざこんな舞台を整える必要なかったんじゃね?
んじゃ明日は無しってことで。……ていうのはダメだよねー。
――明日はどうします?
――どうしたい?
――続けるしかないかなと。
――そうだろうな。
――疲れますけどね……。
――不本意だがな……。
――はぁ……。×2
二人揃ってため息したくなるってもんですよ。
今日だけでやめるのは簡単。
この日だけが特別だったんだってことで、私と殿下の話はすぐに収まる。
けど前例ができてしまえばその後に続こうとするものも出てくる。
殿下は入学以来、一度も異性と食事をともにすることはなかった。
それはあのアイナ様でさえなかった。
まぁテーブルは四人がけ、取り巻きが三人、殿下が余る、だったからうまく逃げられたらしいけど。
そんな殿下が、今日初めて私とテーブルをともにした。
となれば殿下を狙う野獣が次を狙って動き出すのは当然のことなわけで、私が逃げてしまえば殿下は野獣の前に一人置き去りにされるわけで……。
さすがにそれはできない……。
いくら殿下のことが怖いって言っても、それはね……。
そんなわけでここまで来たら一蓮托生。誰もそんな気がなくなる程度に睨みを効かせてからじゃないとやめられない。
……あれ、もしかしてこれって、ものすっごいアホなことやったんじゃね?
どうやってオリビエ様の突撃を防ごうかとしか考えてなかったけど、準備は大変で後始末はもっと大変で。
しかも肝心のオリビエ様には全く効果無し。
普通に声かけられたら訓練しまーっすて言うだけでよかったよね。
……何……この徒労感……本気で疲れた……。
ちなみに言い出しっぺは殿下。
何言ってくれてんだよ!
その案を増改築したのは私。
何しちゃってくれてんだよ!
――申し訳ありません殿下……。
――私もすまなかった……。
やっぱ頭脳労働はできる人に任せよう……。
ちょっとすっきりしたかったので、放課後の訓練では思いっきり殿下を吹っ飛ばしてやった。
それはもうギャラリー全員が敵になるくらい吹っ飛ばした。
そしたら次回は剣有りで訓練することになった。
しかも訓練用じゃなくて殿下の愛剣で。
アレって確かドラゴン素材の超高いやつだって聞いた気がするんだけど。
魔法もスパスパ切っちゃうようなスゴイやつ。
え、そんなの持ち出すの? ホントに? 謝ったら許してくれたりとか……。
……やっばー、やりすぎた。