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信者。またの名を……

※今回の注意事項

フェチストがいます。



 『(いくさ)とは、いつの世も空しいものである。』


  ~エレアノーラ・サースヴェール ある戦場での述懐~


 ってモノローグ入れちゃうくらいあっさり終わっちゃったから戦闘シーンはすっ飛ばしました!

 戦闘なんて呼べる代物ではなかったとも言う。

 だってさー。


 結界に踏み込む。

 三人揃ってのこのこ出てくる。

 私ら見てポカーンとしてるところ魔法一発撃って麻痺させて終了。


 今北産業で終わっちゃった!

 罠とか警戒して作戦考えてる時間のほうが長かった。時間返せ。

 今だって何か隠してないか警戒しながら武装解除してるけど、ほんとーに何も隠して無いっぽい。

 あんたらよくそんな装備で出てきたねー。『そんな装備で大丈夫か?』をしないからこうなるんだよ。してもこうなるんだけど。

 結局何も無かったから遠慮なくふん縛った。緊縛イケメンの姿造り三人前お待ち!


「何事もなく片が付いたのはいいのだが、このままでは何をしたかったのかもわからんな。一人でいい、話をできる程度に回復させてくれないか」


 三バカが出てきたのは何の変哲もない小屋。三人で暮らすには小さすぎる、物置小屋みたいなサイズ。

 でも結界通り抜けたからわかる。小屋は入り口なだけで、地下に何かあるっぽい。

 当然調べるんだけど、何があるのか全く知らないで入るのは危険なので、尋問を先にしないとねー。

 というわけで喋れる程度に回復させますよーっと。モブくんも居るし宰相子息でいいかな。

 では尋問開始。

 ふん縛られてのたうち回るイケメンをいじめる十八禁スレスレなシーン、はーじまーるよー!


「くっ、殺せ!」


 開口一番それかーい! それ男が言っちゃダメなセリフだっつーの!!

 え、それともそういう趣味? もしかして男三人だったのは……あっ(察し)


 そ、そっかーそうだよねー。おかしいと思ってたんだよ、うん。

 アイナ・ハリマーの取り巻きになってた件だってさ、あれこの国の法的には問題ない(一婦多夫OKだし)んだけどさ、でも普通に考えれば男爵令嬢と逆ハーなんて家格差とかの問題で無理だってわかるはずだし?

 つまりあの状況はアイナ・ハリマーに彼氏を取られないように三人で牽制し合ってたんだな!?

 アイナ・ハリマーを中心としつつも実はアイナ・ハリマーだけがどこにも接点が無い、三人で三角関係を作ってただけなんだな!?

 おーけー。謎は全て解けた!

 っていうかこれじゃ私らただのお邪魔虫じゃん。そっと退場してみて見ぬフリをしてあげるのがオトナの対応ってもんだよね。『その後、彼らは幸せに暮らしましたとさ……』ってモノローグ残して。今日モノローグ多いな。

 よし、そうと決まったらすぐ帰ろう今帰ろう!




 って、本気で現実逃避したくなるようなことを言いやがったこのアホ。




 くっころのセリフのあとね、尋問したらね、断崖絶壁に追い詰められた犯人みたいにペラペラ喋ってくれました。


Q:お前らの目的は?

A:この世に女神を降臨させることだ。


 もうこの時点で帰りたくなったねー。


Q:具体的には何をしている?

A:今は女神の器を作っている。


 これだけで大体察せられちゃうよねー。


Q:どこまで進んでいる?

A:外見はたった今完成した。素晴らしい、実に完璧だ。


 完璧ですかそーですかー。


Q:ホムンクルスを作っているのか?

A:女神の器だ。だが、貴様らのような愚物には同じに見えるのだろうな。


 この世界にも一応あるんだよ、人造人間というかホムンクルス。

 しかも禁忌でもなんでもないという恐ろしさ。

 でも昔は結構研究されてたっぽいけど、今は全然されてない。

 何故かといえば、コスパ最悪だから。

 うん、現実的な理由過ぎて笑っちゃいけないけど笑いそう。


 ホムンクルスと言えば自分の魂入れ替えて永遠に生きるぜーとか、よくあるでしょ。

 魂を入れ替えるってところは成功してるんだよね。でもイロイロ問題があって、永遠にーの辺りは無理だった。

 結局、『メリット無いね。むしろデメリット多過ぎ』ってことで捨てられた研究なので―す。


 なのにこいつら、そんなのを引っ張り出して研究してる。

 しかも“女”神。

 あとは言わなくてもわかるな?

 もうこの先聞きたくないよねー。

 でも容赦なく聞かせてあげるよ! 被害者を増やしてやる!


Q:女神というのは何のことだ?

A:この世で唯一、女神と呼べる存在。その女神の名はアイナ! アイナを真の女神として降臨させることこそ我らの使命なのだ! そのためには至上の微笑みをたたえる美しき尊顔はもちろん、全てを優しく包む指、軽やかに舞う足先、宝石よりなお輝く瞳、流れ星のような髪、美しき旋律を奏でる唇、慈愛の象徴たる胸、全てを抱えし(へそ)、魅惑の臀部、変幻自在の肘と膝、愛くるしい鎖骨、光り輝く爪、天上の触り心地をもつ耳たぶ、芳しい脇、清流の如(以下略)


 キーーーーモーーーーイーーーーわあああああああああああ!!!!


 現代日本でもびっくりの部位フェチ発言を全身くまなくやってくれた。膝裏とか土踏まずとか耳の裏まで。もう全身大好物ですの一言でいいよ……。

 しかも縛られてイモムシ状態で地面に転がってるイケメンが前半は真面目な顔で、後半は陶酔しながら語り尽くす誰得展開。隣の麻痺ってる二名も同じ顔。揃いも揃ってド変態フェチストどもめ。

 ねー、現実逃避したくなるでしょー?


 それに対してこっちサイド。

 殿下、本気でドン引き。いつもはクールフェイスだけどさすがに崩れてた。おぞましい物を見てしまった感じ。

 オリビエ、普段とあまり変わらない。でもよく見ると引きつってる。

 サイア、魂抜けかかってる。目が虚ろ。

 サフィ、『ヤっていい?』って感じでこっち見てくる。もうちょっと待って。

 フェルドマン先生、耳栓して本読んでる。それぐらいの図太さを私の前でも出せばいいのに。

 モブくん、泡吹いて痙攣してのたうち回ってる。裏部隊ならもうちょっと耐えなさい。


 それにしても拘束された状態で精神攻撃してくるとは、思ったよりやるじゃないか宰相子息。見事な攻撃だと褒めてあげよう。

 特に殿下に対してはクリティカルヒット。耐性の弱い精神攻撃で、しかも殿下の苦手な女性属性つき。そりゃ一瞬でHP削られるわ。


「――それが、人間全てが崇めるべき唯一神! 女神アイナだ!!」


 あ、やっと終わった。

 もちろん最後はキメ顔。マンガだったら二ページぶち抜きで集中線を背中に担ぐような感じ。

 今も満足してフンスーしてるし。ウザいなーこのツラ。


 まぁひとまず言いたいことは言い終わったっぽいし、そんなことより次はこっちのターンなんだけど……。

 殿下、おい殿下。こっちのターンだってば。正気に戻れ。

 ……何、無理?

 いやまぁわかるけどさ。殿下のキライな女性についてこうも語り尽くされちゃねー。

 恐怖の存在の恐ろしい箇所を余すことなく教え込まれて、しかもそれが三バカにとって何物にも代えられない至高の存在だって宣言されたんだから。

 多分殿下からしてみれば、今のこいつらは女性以上に理解不能な異次元生命体Xみたいな扱いになってるんじゃないかな。


 うーん、出来る範囲で頑張ってるなーとは思ってたけど、まだまだ経験不足か。ご褒美はお預けかなー?

 ま、とりあえずは目の前のことを何とかしますか。


 というわけで私のターンだ!


「女神を降臨させる、ですか。アイナ・ハリマーはとある修道院にいるはずですが」


 まずは当たり前のことから行ってみるよー。基本は大事。

 ほらほらー驚いてないでさっさと答えなさいよー。こっちサイドが全員怯んでるの見て宰相子息はドヤ顔してたけど、私まで怯んでたわけじゃないっつーの。現実逃避しながらぜーんぶ聞いてたよ。

 こちとら前世は世界最強のサブカル大国で純粋培養された生粋のヒキヲタだぞ! その程度のフェティシズムで前世日本人を精神攻撃しようなんざ千年早い! お前ら程度ならむしろ妄想の餌にしてくれるわ!!


「ふんっ、あんなのは降臨に失敗した出来損ないだ。本物なら常に私の隣に居るはずだからな」


 凄い暴論だなー。


「あんな尻軽が女神とは。面白いことを言いますね」


 ちょっと煽ってみよーっと。ニヤニヤ。


「女神の愛は全てに与えられる。与えられなかった者こそ滅ぶべきなのだ」


 おっ、そーきたかー。これはアイナ・ハリマーのビッチな日常を暴露してもダメなパターンだね。全て好意的に解釈するだろうし。

 んじゃあんたらをつつけばいいんだな!


「なるほど。仮に貴方の言うことが真実ならば、女神は全ての存在に愛を与えるはず。なのに今女神がそばに居ない貴方たちは、女神に見捨てられた存在だというわけですか」

「ぐっ!」


 あれー、どうしたのかなー? そんな悔しそうな顔しちゃってー。んー?


「女神に捨てられた事にも気付かず、女神を降臨させようとは。身の程知らずとはこういうのを言うのですね」

「違う! 女神は我らを見捨ててなどいない!!」


 いーよーいーよー、そのいかにも裏切られた三下ザコっぽいセリフ! ほらー言い返さないともっとつついちゃうよー?


「何が違うというのです? 現に貴方たちのそばには女神が居ない。これが事実ではないですか」

「我らは女神から見放されていない! 女神は我らなどには到底理解できない至高の存在。崇高なお考えがあってのことだ! そう、我らに試練を与えられたのだ! だが女神を具現化できたこで、その試練に打ち勝ったのだ!!」

「はぁ、女神の具現化ですか。ふふっ」


 おっとつい本気で失笑してしまった!


「何がおかしい! 貴様のような悪はすぐに滅びる! 女神が降臨さえすればな!」


 あーはいはい。女神サマサイキョーですねー。

 なんか幼稚なこと言い出したなー。この三人の中では頭脳担当のはずなのに、頭回ってないんじゃないですかー?

 でももっと煽ってみよーっと! どうなるのかなーわくわく!


「それにしても、女神というものは随分安いものなのですね。勉強になりました」

「貴様ぁ! 女神に対する侮辱は許さんぞ!」


 お前の許しなんているかーい!


「侮辱? 宰相職、一年分の給金で四人も作れる女神を、安いと言わず何と言うのです?」

「ッ!!」


 ホムンクルスx4=宰相職の年収。女神がその金額とかいくらなんでも安くない?

 そんなの誰でも作るってーの!


「そのうえ、貴方たちは女神の姿を完璧に再現したと、そう言いましたね」

「そ、そうだ! それこそ――」

「つまり女神は貴方たちに理解できる程度の存在、ということですか。人に理解できる程度のものを指して女神とは。冗談が過ぎるというものです」

「――ッ!?」


 人同士だって完璧になんて理解しきれないのに、自分たちより上の存在のはずの女神を、外見だけとは言え“完璧に”再現したとか。

 ちなみに姿を模倣する魔法とかそういう感じのは魔法はあるよ? でもこいつらにとって女神は『我らなどには到底理解できない至高の存在』らしいし? 三バカ理論で行くと外見だけでも再現できるほうがおかしくなーい?


「おやどうしました。自分たちには理解できないはずの存在を理解し、再現できたのですよ? もっと喜んだらどうですか」

「ぐぎッ、ぎざッ、ぎざまあッッ!!!!」


 文句言いたいのに矛盾してるって気付いて、歯ぎしりしたまま何も言えなくなっちゃった! こりゃまた見事な『ぐぬぬ』ですこと!

 本当にただのバカなら自分で言ってる矛盾点にも気付かずテキトーなこと言うんだろうけど、こいつってば中途半端に頭が回るからあっさり自滅してくれたね!


 それにしてもすごいなー、人ってこんなに顔真っ赤にできるのかー。もっとやったらどうなるのかなー!

 あっ、そういえば今の私って悪役令嬢っぽくない!?

 人の嫌がるところをチクチク攻撃して、自分はふんぞり返って悦に至る。立派な悪役令嬢だよね!

 本当は全て取り巻きにさせて自分は後ろで見てるだけなのが完璧なんだろうけどそれは仕方ない。オリビエ、サイア、次はお前らがやるんだぞ! って言ったら本気でやるから絶対言わないけどね!!

 その二人はウットリした表情でこっち見てる。『私も縛って欲しいです……』とか『あんなにも愉しそうに嘲笑ってもらえるなんて、羨ましいですわぁ……』とか聞こえてくる。やらないからな!


「それでは聞きたいことも聞きましたし、そろそろ女神様とやらを見せていただきましょうか」

「―――――!!!!」


 あーなんかもう理解できない言語で喚いてるから翻訳不可になっちゃった。

 あと打ち上げられた魚みたいにビッタンビッタン跳ね回って引き止めようとしてる。ホントキモイわー。

 そんな引き止める必要なんてないってばー。ちゃーんとあんたらも連れてってあげるからー。


「モブ、その三人を連れてきなさい。引きずって構いません」

「えっ!!」

「何か、異論でも?」

「ただちに連れて行きます!!」


 一瞬驚いたモブだけど、顔見てもう一回言ったらいい返事帰ってきた。それでよろしい。

 そんなわけで小屋の地下へレッツらゴー!

 私のターンはまだまだ終わらないよ!!




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