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ニューカップルたんじょ……う?

いつも通りお待たせしました。

今回は一本だけです……。

主人公視点に戻ります。


※ご注意

今回は性同一性障害のような表現が含まれております。

ネタのように扱っているため、不快な印象を与える可能性がございます。

ご了承のうえお読みくださいますよう、お願いいたします。


マズいようなら取り下げます……。



 殿下が魔物領域の調査を引き受けて二日。

 早速とばかりに出発の日となりました。


「……随分、準備が早いのだな」


 少し緊張、っていうか驚いてる殿下。

 いやいや遅い方だから。ていうか早いも何も龍籠は二日で到着するって言っといたでしょうが。


「本当に緊急なのであれば当日から動くべきです。二日では遅すぎます」


 今回はあくまで調査。

 魔物は強くなってるけど、被害は魔物ハンターにしか出てないから急いで準備したわけじゃない。

 魔物の大量暴走とか本当に緊急だったら一分一秒だって争うんだから、二日なんてのんびりコースですとも。


「龍籠は、準備に最低十日かかると聞いたことがあるが……?」


 他の領だとそうらしいね。遅過ぎって思ったけど。


「龍の機嫌次第だそうですわね。機嫌によってはもっとかかるとか」


 オリビエ様の言う通り、基本的に龍の機嫌次第で早くも遅くもなる。

 飛んでる最中に暴れられたらたまったもんじゃないもんね。


 いや暴れることは少ないけど、でも基本魔物な彼ら彼女らは本能的欲求には逆らえないわけで。

 機嫌の悪いときにレッドドラゴンとブルードラゴンがすれ違ったりしたら、もう間違いなく大変なことになる。

 あと発情期とか。これが一番ヤバイ。

 そういう状況になってもしっかりコントロールできるように躾けておくんだけど、でも念には念を入れて、仕事の前には入念なコンディションチェックが必要になる。


「うちの子は優秀ですので」


 優秀も優秀。ホント優秀。

 しかも今回来るクロコとクロミは私が躾けた龍だから、私の言うことはしっかり聞いてくれる。

 お手だってできるよ? 力加減間違えて、人間が地面にめり込んだりとかしないよ?

 母のキンゾーには敵わないけどね。

 一体どうやったら猫の鳴き真似を覚えさせられるの……。


 おっとそんな事考えてたら龍の到着ですよ。

 名前の通りのブラックドラゴンが二匹。足に籠をぶら下げて飛んできた。

 最後に見たのは学園入学前だから結構久しぶり。

 うん、いつ見てもいい黒光りする鱗。ワニ革バッグとか目じゃないね。


「優秀だとは聞いていたが……随分、大きくないか?」

「龍籠を見たことは数回しかありませんが、今までで一番大きいですわ」


 そうかな。普通でしょ。まだ成長期だし。

 ていうか殿下が驚くのってどうなの。王族なんだから龍籠くらい何度も乗って……ないか。

 女性から隔離するためにあんまり外出してないはずだし、多くを知らないのも無理ないよね。


「現時点でもSクラス。年を経れば間違いなくSSSに届く」

「なんと魔法耐性に優れた鱗だ……是非とも実験素材にさせて欲しい!」


 冷静なサフィと興奮気味のフェルドマン先生。

 素材用の鱗くらいならいくらでもあげるから、無理矢理剥ごうとしないでよ? ハゲが目立つから。


「龍籠用の龍は、普通CからBランクの小型龍を使うと聞いたのだが?」


 ああうん、それは私も聞いたことある。

 聞いたことあるけど、


「龍籠用ではありませんので」


 なんだよねー。


「では、普段は?」

「戦闘用です」


 それ以外にないってば。

 だって戦闘用に龍が居るのにわざわざ龍籠用の龍を飼育するってもったいないでしょ。

 龍籠用の龍は戦闘できなくても、戦闘用の龍は龍籠も運べる。

 大は小を兼ねるって素晴らしいよねー。


「……戦闘用は、気性が荒いと聞いたが?」

「そうですが、大丈夫です。躾けてありますので」


 心配性だなー殿下ってばー。


「……食いかかりそうな勢いで飛んできているのだが?」


 違いますぅー久しぶりに私に会えた嬉しさでものすっごい急いで飛んできてるだけですぅー。

 まだ小さい頃から躾けたからね、言ってしまえば私は母親代わりみたいなもんですよ。


「「GRUUUUUAAAAAA!!!!」」


 ほら、久しぶりーってあんな大きな声で鳴いて、可愛い子たちじゃん。

 怖がる必要なんて欠片もないってばー。


「威嚇してるようにしか見えないのだが」

「私に会えて嬉しくて鳴いているんです」

「周囲の獣が我先にと逃げ出しているように見えるが」

「獣の本能ですから、当然です」

「ブレスを撃つ体勢になっているようだが」

「ちょっとしたコミュニケーションです」


 殿下の言う通り、クロコもクロミも口を開いて挨拶代わりのドラゴンブレスを撃とうと力を溜めてる。でも結構溜めてるね。

 しかも二匹分だから、この辺一帯焼け野原になるくらいの強さかな。まともに食らうと校舎も寮も跡形も残らないね。

 結界あるから大丈夫だけど、久しぶりだからってちょっとはしゃぎすぎ。

 というわけで。


「やりすぎ」


スパン! スパン!


 飛行魔法で一気に近づいて、それぞれ平手を一発づつ入れてやった。

 ふっ、母譲りの黄金の平手を思い知ったか。


「「KYUUUUUUUUUN」」


 よろしい。

 甘えた声に満足して地上に戻る。


「お見苦しい姿をお目にかけました」


 領内ではこれくらい誰も気にしないけど、さすがに余所でやっちゃダメだよね。

 次はその辺に注意して躾けないと。


「……ああ、いや。問題ない。立派に躾けられているようだ」


 あ、疑ってるな?


「ご心配なく。あれだけ高速で飛行していても、龍籠の中は一切乱れておりませんので」


 カップ一つ割ってないし、クッションの配置だってズレてない。

 私が平手した瞬間だって龍籠を守るように衝撃を逸らしてたし。

 うん、完璧。


「……そうか。それは素晴らしいな」

「お褒め頂き、ありがとうございます」


 そんな呆れたような声で言われても、説得力ないけどなー? ていうか『常識知らずめ……』とか思ってるだろ。

 サースヴェール領ではこれが常識だからいいんですぅードラゴンに平手なんて肉屋のおばちゃんだってやりますぅー。

 そして美味しく頂きます。

 全くこれだから都会もんは……。


「龍も大きいですが、籠も大きいのですね。そのまま住めそうなほどです」


 殿下のヤレヤレオーラを無視したオリビエ様ののんびりボイス。

 いつもこの調子だったらいいのに、興奮すると人に聞かせらんないような声出すんだよね……。


 何故そんな事を知ってるかといえば、定期的に『ご褒美』をあげてるから。

 でないと私の貞操が危ない。リアルに危ない。


 真・面・目・に!! 危ないんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!


 なんか前にあったアレやコレやが有耶無耶になったようにオリビエ様が近くに居るけど、当然だけどこうなるまでにいろいろあったわけで。

 いろいろあったんだよ……うん……。

 一から十まで語るのはメンドクサイので端折っていえば、オリビエ様を手懐けた。おわり。

 うん、端折りすぎだね。


 こないだオリビエ様に奴隷化懇願されたあとにさ、これからどうしようかと対策考えたわけね。

 それでまずはオリビエ様の観察だって再度相手を調べたんだけど、そしたらすーぐにわかりました。


 オリビエ様、ただの『M』だった。


 Mマークの付いた帽子をかぶってる配管工のおっさんではない。


 性癖のほうだよ!


 視線とか言葉で痛めつけられるのがいいらしい。


 そりゃ私に惚れるわ!


 そしてわかってしまえば怖くない。ガチ百合だろうがドMだろうがかかってこい!

 ってことでM心をくすぐるあの手この手(未成年でも閲覧可)な手段で手懐けた。モン○ター○ールが有ればそっちに入れとくんだけど、無いんだから仕方ない。


 ここで、『あれ? 最初投げ飛ばしたとき華麗に着地しなかったっけ。ドMならそのまま叩き付けられるんじゃね?』って思い出した人。そんな細かいこと気にするなよ……ハゲるぞ?

 冗談ですごめんなさい。

 精神的Mであって肉体的Mではないらしい。痛いのはイヤなんだってさ。

 そんなM区分知るかーっ!


『もしそっちもイケたのでしたら、もっと強硬な手段をとっていましたわ♪』


 セーフ! 既にアウトな気もするけどセーフ!


 とにかくそんな危険物だから慣れるのに結構時間かかった……。

 放置しておいて何するか分からない状況より、手元に置いて監視したほうが精神的に楽だから仕方ない。

 とにかく、(歪んだ)愛の奴隷(兼永久就職希望)ができたわけです。


 ……あれ、何の話してたっけ。

 ああ、籠が大きいって話だった。

 普通の籠は馬車が一回り大きい程度。お茶が飲めるようにテーブル付いてるくらいかな。

 でも今クロコとクロミが地面に下ろした龍籠はそれの何倍もある。具体的にはコンビニ一件くらいのサイズ。

 しかも男性用と女性用の二つ。

 もちろん、ただ豪華だから大きいわけではありません。


「住めそうな、ではなく、そのまま住めるようになっていますので」


 寝室もキッチンもお風呂もトイレもある優れものですよ。

 普通の龍籠が軽自動車(無改造)だったら、これはキャンピングカー。

 街の外で寝るとなったら基本はテントなんだけど、それだと何かあったときに即座に移動ができないでしょ? テント片付ける必要があるし。

 でも龍籠だったらそのまま運べばはい終了。ほーら便利。

 ってことで作ってもらった。もちろん自分で稼いだお金で!

 大きくなり過ぎて、Aランク以上の龍じゃないと運べなくなっちゃったけどねー。


「それは素晴らしいですが、どうしてそこまで立派な籠を?」


 移動だけなら必要ないもんね。

 しかも数日かかる距離ならともかく、一日で行けるんだし、

 けどこれは私が言い出したんじゃなくって。


「私が頼んだのだ」

「殿下が?」


 そう、言い出しっぺは殿下。


「龍籠の用意は二日でできると聞いたからな、二日後ではあちら(フェルッテ子爵領)の受け入れ体勢が整うよりも早く着いてしまう。だからと言って日程を遅らせるなど馬鹿馬鹿しいからな。龍籠で寝泊まりできるよう、準備を頼んだのだ」


 問題の起きてるフェルッテ子爵領としては、国の第一王子が来るなんて一大事も一大事。

 しかも(公爵令嬢)オリビエ様(侯爵令嬢)まで居るから手に負えない。当然だけど先生二人も貴族だし。

 そんなのが纏めて来るフェルッテ子爵領が盆と正月とクリスマスが三年分纏めてきたような感じにるのは当たり前なわけで、二日で受け入れ準備しろってのは無茶振りが過ぎる。

 だったら自前で用意すればいいというのが殿下の言い分。


『実戦を経験してこいというなら可能な限りそれに沿うべきだろう。戦場では使用人など居るはずがない。身の回りのことも自分で行うのが当たり前だ。無論、全てを実戦形式にして、自らの力を発揮できないほど劣悪な環境に追い込むというわけではないが』


 フェルッテ子爵領には『調査隊が行くよ!』とは言ってあるけど誰が行くのかは言ってないので、いきなり龍籠で乗り込んで有無を言わせず『龍籠で寝泊まりするから邪魔すんな』と言い張る方向で動くということになった。


 殿下は全くの実戦経験ゼロというわけじゃない。

 去年に魔物討伐の実習やってるから簡単な野営訓練をやってるし、どうも騎士団の遠征にも数回参加したことがあるそうな。

 もちろん手厚いサポートがあったそうだけど。


 なので全くの無知から出た無謀な案というわけでもないので私も同意した。

 オリビエ様が知らなかったのは、当日知っても問題ないから放っておいただけ。


「ということは……これからしばらく、エレアノーラ様と一つ屋根の下で暮らせるのですねっ」


 うん、頬染めて言わなくていいから。


「屋根があるのはいいが……私は、『雨露を凌いで野営を行える程度の装備』と言ったはずだが……?」

「要件は十分に満たしているはずですが」

「それはそうだが……」


 いやうん、十分過ぎるって言いたいんでしょ。

 龍籠の中で寝られる用の毛布とか、あるいはテント程度を期待してたんでしょ。

 でも殿下が使うんだから下手なもの用意できないよね? だから一番良い龍籠にした。

 なーんてことは当然ない。


「私の龍籠は、これしかありませんので」

「……ならば仕方ない」


 サースヴェール家にはあるけど、私が自由に使えるのはこれだけ。

 そもそも人選ミスだったわけですね! いや私が勝手に準備したんだけど! とにかく残念だったな!


「ご安心ください。用意したのは籠だけです。食材の類いは一切ありませんし、生活用の魔道具を除き、結界用の魔道具などは揃えてありません。要は宿泊先のみ用意したとお考えください」


 でもさすがに全て揃えちゃうのは可哀相なのでその辺は準備しなかった。

 だから食料の現地調達とか不寝番とか、実戦で絶対必要な部分は経験できるようになってる。

 これくらいなら許容範囲内でしょ。


「そうか。ならば安心だ」


 途端にキリッとして嬉しそうな声になる殿下。そんなに実戦が楽しみなのか……。

 まぁお目付役が居るとはいえ初めての指揮官なんだから、男の子ならやる気が溢れるよね。

 その調子で頑張ってくださいな。


 第一の試練を突破してからね。


「お、お待たせしましたぁ」


 後ろから聞こえてきた、可愛らしいソプラノボイス。

 それは、こちらに向かって歩いてくる一人の生徒から発せられたものだった。


 小柄な体躯に柔らかく揺れるスカート。

 癖のない真っ直ぐな栗色の髪を、首もとで切り揃えたサラサラなショートヘア。

 少し垂れ気味で、優しげな目をたたえた小さな顔。

 一人遅れていたため申し訳なさそうな表情で急いでいるが、しかし決して品は損なわれない可憐な姿。

 サイア・ラットン。

 私の希望で急遽調査に加わることになった人物であった。


「すみません、温室管理の引き継ぎに手間取ってしまいまして……」


 私たち全員に向けて、丁寧に伝えられる謝罪の言葉。

 申し訳そうな表情と相まって、まるで怯える小動物のようにしか見えない。

 うん、可愛い可愛い。


「いや、謝罪すべきはこちらのほうだ。改めて、急な申し入れを受け入れて頂き感謝する」


 おお、女性が苦手な殿下がしっかり応対してるよ。

 いやそれくらいのことは前からやってたんだけど。


「おやめください殿下っ。私のような者に気づかいは無用にございますっ」

「それなら私にも気づかいは無用だ。今日からは目的を果たすべく、仲間として力を合わせなければならないのだからな」

「ですが……」

「どうか、力を貸して欲しい」


 しっかり頭まで下げて頼んでるよ。

 ちょっと軽く下げてしまった気はするけど、まぁそれだけ本気だってことでしょ。

 でもそんな事しちゃうと……。


「殿下……何ともったいないお言葉……。お話しに聞いていた通り、本当に真っ直ぐなお方なのですね……」

「っ」


 あ、やっぱり。

 殿下のキリッとした表情を真っ正面から見たサイアの頬が思いっきり赤く染まりましたよー。

 胸の前で手を組んで夢見る乙女になりましたよー。


「わかりました。私の力、この身の全てを持って、お力になることを誓います」

「あ、ああ。よろしく頼む」


 優美に礼を取るサイアと、ちょっと引き気味な殿下。

 乙女モードに入ったサイアだとかなり女の子女の子しちゃうから、殿下にはちょっと辛いだろうなー。

 だがしかし乙女スイッチを入れた殿下が悪い。


 まぁサイアの乙女スイッチ(脳内惚れ薬)はものすごーっく軽いんだけどね!


 惚れっぽいのに奥手だからなかなか彼氏が出来ないんだよね。

 相手にそれっぽい人が出来ると即座に身を退いちゃうタイプ。もちろんサイア自身に婚約者なんて居ない。

 家は子爵家だけど次男だから、両親祖父母と我が父はあまり気にしてないけどね。


 突然ですがここで問題でーっす!

 さっきの一文に間違った漢字が一文字だけ含まれております。

 どこの漢字が間違えているか、三択でお答えください


  ①『子』爵家

  ②次『男』

  ③我が『父』


   配点:20点


 ~制限時間は5秒です~




 はいしゅーりょー正解は①でしたー!

 子爵家ではなく伯爵家でーっす!

 それとどうして父が入ってるのかといえば、実は父の実家だから。

 ちなみに過去に一度も言ってません。全くのノーヒントでした。

 コラそこ、石投げない。クロミに踏みつぶさせるぞ。


 でもサイアも引き込もうって提案したときにオリビエ様がネタばらししてるから、答えだけはわかったでしょ?

 だから問題なし!


 そんなわけで②と③は誤字ではないのでしたー!

 でも大事なことなのでもう一度。


 次『男』で間違いありません。


 いくらスカート穿いてようと、そこらの女の子より小さい体で小顔な小動物だろうと、声変わりなんて無視したような高い声だろうと。


 男。


 つまり前世じゃ男の娘と呼ばれるファンタジーな種族なんですよーーーーー!!!!


 ちなみにこうなった原因は私なんだけどね!!


 てへぺろ☆


 父の実家だって言ったでしょ?

 まだヒッキー成分が抜けてなかった頃の私が、かなりの引っ込み思案で人と話すのが苦手なサイアと会わせられたのが出会い。

 似たような者同士だと仲良くなれるとか、簡単に(アホなこと)考えて会わせたんだろうね。

 マイナスにマイナス足してもマイナスにしかならないっつーの! かけ算は同性でやれ!

 会った瞬間とかね、はたから見たら私たちどっちも怯えて逃げることしか考えないヒヨコにしか見えなかったと思う。

 でも当時既に母の教育をみっちり受けてた私は0.03秒で正気を取り戻した。


 何もしなかったら(母に)ヤられる、と。


 というわけで攻めた。

 それで(尋問)してるうちにサイアは極端に自信がなさそうだということがわかったから、どっかのマンガの知識をそのまま流用して(パクって)女装させてみた。

 失敗してもとりあえず何か努力したという事実があれば、それだけで最悪のお仕置きは免れるからね!

 そんな何も考えずにやっちゃったんだけどね、困ったことに上手く行っちゃった。

 ていうか行きすぎた。


 サイア、メチャクチャ大喜び。


 もう即座に順応した。

 相手の目を見ずぼそぼそと小声でしか話せなかったはずがすぐフツーに話せるようになって、私のおかげで生まれ変わったと本気で言い放った。

 でもってそれを見たサイアの家族も大喜び。

 私、超感謝される。

 内心はもちろん『やっば、やりすぎた……』だったけどね!


 いいのかなぁ、これ。性同一性障害とか、そういうよくわからないアレじゃないの? よくわからないからどうしようもないんだけど。

 でもこの世界には性転換手術とか無いし、本人も家族も喜んでるから今回は見逃してください。本当お願いします。


 とにかくそんなわけで、サイアは女装っ子として元気に暮らすようになった。


 この国が同性婚OKで性別がどうとかその辺が緩い国で良かったよ。おかげで変な目で見られたりとかもしてないし。

 むしろ普通に可愛いから女性陣から対等なライバル扱いされてるし。仲が良い場合はマスコット扱いだけど。

 ナンパはもちろん求婚だってされたことあるみたいだよ? もちろん男から。

 あと一歩で婚約まで行ったこともあるんだって。何でダメになったかは知らないけど、どうせ自分から退いたんじゃないかな。

 立派な乙女に育ってくれて、先生嬉しいよ。


 あでも、クラスチェンジした原因は私だけど、ここまで乙女化させたのは断じて私じゃない。

 気が付いたら勝手にレベルアップしてたよ? ホントだよ?

 前々から凄くなってるとは聞いてはいたんだけど、でも会う機会がなくって久しぶりに学園で再会したら『……え、誰この美少女?』だったし。


 なのでこんな惚れっぽくなったのも私のせいじゃない。

 私のせいじゃないってば!

 だから殿下、そんな恨みがましい顔向けるな!

 ていうか連れてくって納得したのは殿下でしょうが! そうなるように仕向けたけど!


 まったく。

 さっきやる気出してた姿はそこそこカッコよかったのに、ヘタレるの早すぎだってば。

 サイアは絶対尽くすタイプだから、ダメ男でも平気で受け入れちゃうよ?


 サイアの誘い受け……は無理だな。総受けだな。

 殿下はヘタレ攻め一拓。異論は認めない。

 うん、私的にはおっけーだからいっか。

 いやー楽しみが増えちゃったなーうへへへへ。

 ふっ、こないだ私を置き去りにした罰だ! 存分に味わってもらおうか!


 しかし、そんな私の楽しい気分はすぐに消え去り、微妙な気分に苛まれるのだった。


「殿下っ、私頑張りますねっ」

「う、うむ。ほどほどにな……」

「はいっ」


 それは、楽しそうなサイアと殿下のやり取りを見てしまったからに他ならない。


「私も精一杯頑張りますね、エレアノーラ様っ」

「……ほどほどに」


 その光景に影響されて私にすり寄ってきたオリビエ様に腕を取られたせいで――


「あ、あの、オリビエ様? そのようにエレアノーラ様の側に寄るのは、その、はしたないのではないでしょうかっ」

「私は既にエレアノーラ様のモノ(・・)ですので、これくらい普通ですわ」

「それなら私も、小さな頃からエレアノーラ様のモノ(・・)として可愛がって頂いております!」

「あら、そうなのですね」

「そうなんです!」


 オリビエ様を見てすっ飛んできたサイアに反対側の腕を取られ、ドMと小動物に挟まれることになったから。


 ……あるぇ?




これならBLタグはいらないはずっ。

ちなみに取り下げになった場合は男の娘→ガチムチオネエ(ネタ枠)になります。


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