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やったらやり返された……。

三本目。


 そういえばあのときもそんな事を考えていたな。

 その件も謝罪しよう。


 アイナ嬢の事件以来、何かとエレアノーラと二人にされることが増えたのだが、彼女からは一切何もしてこなかった。

 考えてみれば当たり前だな。

 他人を苦手とする彼女が、好き好んで私に近づくなどあり得ない。


 先日のオリビエ嬢との一件ではお互い不本意ながら共闘することになったが、もちろんそのときも何も無かった。

 そんな事してる場合ではないのだから当然だがな。


 オリビエ嬢との件では、結局あれやこれやと講じた策は全て裏目に出ることになったが、まぁなんとか収まったので良しとしよう。

 あれ以来、エレアノーラと目を合わせること不思議な気分になるため目を合わせられなくなったが、それは些細な問題だ。

 目を見なければいいのだからな、目線は眉間に集中さればいい。

 ほんの僅かのズレも許されないが、目を見ることに比べれば容易いことだ。


 だから全てが収まったのだ。

 問題など何も…………いや正直に言おう。問題が何も無いわけではない。


 本当にすまなかった。


 オリビエ嬢と対峙した際の出来事があまりに衝撃を受ける内容だったため、理性と感情が追いつかずついエレアノーラを囮にして逃げてしまった。

 そのせいなのかどうなのか、数日後にはオリビエ嬢はエレアノーラの忠実なる下僕となっていた。

 オリビエ嬢は満面の笑みだったが、エレアノーラは心底疲れ切っていたようだった。

 私が関わっていないとは言い切れないことだ。平身低頭、謝罪する。

 地に膝を突けというならすぐさま応じよう。


 だから私にもその餡ドーナツをくれないか!


「オリビエ様、どうぞ」


「頂きますわ」


 くそっ、やはり私に無いのか! 私はそれほど恨まれているのか!


 オリビエ嬢との一件からエレアノーラの部屋でお茶を楽しむ機会が増えたのだが、ここで出される菓子は本当に美味いのだ。

 今まで食べてきた菓子はクリームや砂糖ばかりをふんだんに使われた物ばかりだった。

 食べられないわけではないのだが、好きか嫌いか問われれば、どちらでもないと答える程度。


 だがこの部屋で出される菓子はどれもが美味いと感じた。

 しっとりした餡のほどよい甘さ。

 甘塩っぱい醤油煎餅の味。

 最近サースヴェール領から広まり始めているということは知っていたのだが、まさかこれほどのものとは思わなかった。

 素晴らしいの一言に尽きる。


 餡と言えば、エレアノーラの侍女をしているリーエとルーエは“こしあん”と“つぶあん”で喧嘩になるらしい。

 無理もない。今はまだ世に広まりきっていないからいいものの、あれは宗教戦争の如き争いに発展する可能性がある。

 今のうちに対策を考えねば。


 私とエレアノーラは両方好きなのだが、そのことを口にした私たち二人はリーエとルーエから叱られた。

 さすがサースヴェール家の侍女。必要とあれば誰が相手でも躊躇なく諫言を口にする。

 私の家臣も見習ってほしいものだな。


 話が逸れた。

 とにかくリーエとルーエの好みが異なるため、同じ餡の菓子でも日によって味が異なるのだ。

 同じ菓子でも全く違う味を楽しめる。

 なのに私には餡ドーナツを食べられない。

 オリビエ嬢との一件後、今日は久しぶりにエレアノーラの部屋を訪れることが出来たというのに私だけが食べられない!


 なんという仕打ち……ッ!!


「エレアノーラ様、殿下が泣きそうですが」


 泣けば食べられるのなら、今すぐに泣いてみせるぞ。


「……リーエ」


 渋々と言った感情を隠そうともしないエレアノーラの声だが、そんなことはどうでもいい。

 ようやく味わえるのだからな!


「面倒になったのですね」

「気のせいです」


 リーエが出してくるということは、今日はこしあんだな。

 では頂こう……うむ、やはり素晴らしい。

 ドーナツと餡がこれほど合うとは思わなかった。

 表面に粉砂糖をまぶしてあるのも憎らしい。

 また一つ良い物を知ったな。


「殿下、幸せそうですね」

「……そうですね(すっかり餌付けされたな……)」


 エレアノーラが何か失礼な事を考えていた気がするが、今はそんなことより餡ドーナツを楽しむべきだな。

 菓子にも作ったリーエにも失礼というものだ。


 それに恐怖と戦ってついに勝ち取った平和な時間だ。

 せめて今くらいは楽しみたいからな。


「でも殿下、この部屋には男性は殿下しか居ませんが、大丈夫なんですの?」


 今くらいは楽しみたいのだからもうしばらく忘れさせてくれ!!


 私だとて叶うことなら自室に籠もって一人で楽しみたい……。

 だがこの味はここでしか楽しめないのだから仕方がないのだ……っ!


 部屋の外にはこんなにも恐怖が溢れているというのに、幸せを求めれば常にそれと戦わなくてはならないジレンマ。

 世界とは、どうしてこうもままならないのか……。


 などと世界の理について悩みつつも餡ドーナツを楽しんでいると、誰か尋ねてきたらしくノックの音が聞こえてきた。

 誰か来る予定があればエレアノーラは私たちを部屋に入れないはずだから、これは突然の来訪なのだろう。

 エレアノーラも侍女たちと顔を見合わせているしな。


「ルーエ」


 エレアノーラの一言に従ってドアに向かうルーエ。

 この場に私とオリビエ嬢が居るのは、学園のほとんどの人間が知っているはずだ。

 あの件以来、私たちは行動を共にすることが増えたからな。

 オリビエ嬢の意識はエレアノーラばかりに向いているし、エレアノーラからは“女”というものを感じない。

 二人は女性なのだが、同室に居ても我慢できる範囲なのだ。


 だからよほど世情に疎い者でなければ、私たちがここに居るのは想像が付くだろう。

 であれば、客人は私たちにも用があると考えるべきだ。

 では、尋ねてきたのは……?


「エレアノーラ様。フェルドマン先生とレッテル先生がお見えです」


 カーティス・フェルドマン先生とサフィニア・レッテル先生?

 どちらもエレアノーラとの仲は悪くないので、尋ねてくること自体は不思議ではない。

 だが二人同時にというのはどういうことだ?

 エレアノーラも少し考えていうるようだが……。


「殿下、オリビエ様。よろしいですか?」


 迎えることに決めたようだ。


「特に反対する理由は無い」

「エレアノーラ様のご随意に」


 理由はすぐにわかるだろうからな。

 それなら迎えたほうが速い。


「失礼する」


 私たちの返事を受け、二人を迎え入れるエレアノーラ。

 闇魔法の講義を担当するレッテル先生はいつもの顔まで隠す黒ローブ姿。これ以外は見たことがない。

 その外見のおかげもあり、エレアノーラ同様“女”というものを感じさせない素晴らしい人物だ。


 もう一人、炎魔法を担当しているフェルドマン先生は、


「しっ、しつれっ、失礼いたします!」


 言葉を噛みながらも何とか言葉を口にしていた。

 魔法の話であればどんなことでも平気で言うのに、それ以外ではエレアノーラとまともに話が出来ないという不思議な男なのだ。

 ……まさか、レッテル先生は通訳のためという事ではないだろうな?


「何か用があるとは思いますが、まずはお茶をどうぞ。急ぎというわけではないのですよね?」

「その通り。頂く」

「いた、いただだだっ、頂きま!」


 通訳の可能性が高そうだな。

 能力は非常に素晴らしい先生なのに、唯一と言ってもいい欠点だろうな……。


「美味しい。早速だけど本題」


 お茶を一口二口飲んだらすぐに本題。

 本来であれば多少の雑談を挟むものだろうが、この場にそんなことを気にする人間は居ないからな。

 むしろ助かる。


「フェルッテ子爵領の魔物の領域で、魔物の異常が確認された。三人に調査、可能であれば原因の排除をお願いしたい」


 フェルッテ子爵領?

 ここからだと二つ隣の領地だな。馬車で行くと五日程かかる。

 だがどうして学生である我々に、そんな実戦を伴う依頼が?


「魔物の異常というのは?」


 我々に調査依頼が来る理由ではなく、異常について確認するエレアノーラ。

 私としたことが、まだまだだな。

 我々が調査する理由など後で聞けばいいことだ。内容を聞けば理由も推察できるだろう。推察出来なかった場合に改めて聞けばいいのだ。

 さすがはエレアノーラ、実戦と知っても慌てもしない。


「領域脅威度の上昇と、数の増加。一ヶ月ほどでC相当からB以上A未満」


 魔物にはその強さから脅威度というものが定められている。

 例えばCランクの魔物であればCランクハンター一人で倒せる、という具合にだ。

 実際は相性もあるので、確実に倒せるわけではないがな。


 それとは別に、その魔物が住む領域にも脅威度が定められている。

 Cランク以上の魔物が一定数以上確認されればその領域はCランクとなるのだが、逆にBランクが一体確認されたとしても、一体だけではBランクの領域脅威度にはならない。


 そして、今回は今までCランクだった領域がBランクに上昇。

 さらにA未満と言うのであれば、少数ながらAランクの魔物も確認されたということ。

 しかもそれが、僅か一ヶ月で。

 異常と言う他ない。


「……私たちが事に当たるのは、実戦実習のためですか」

「その通り」


 実戦実習だと?

 確かにこの学園には、授業の選択科目によっては実際に魔物を倒す実戦実習がある。

 私も去年経験した。Dランクの領域だったため、大した魔物は居なかったがな。


「どうして実戦実習と今回の件が関係あるのですか?」


 オリビエ嬢も気になったらしい、私と同じ疑問を口にした。

 特に関係があるようには思えないのだが……。


「一ヶ月でランクが上昇したということは、必ず何らかの原因があるはず。いくつか可能性は考えられますが、自然現象として一ヶ月でランク上昇した例はありません。であれば、まず人為的原因を疑うべきです」

「人為的原因なら、原因を取り除けばあとに残るのはただのBランク領域。その後、魔物を狩ればCランクに戻る可能性が高い」

「Bランクは二年生と三年生の優秀な生徒がパーティを組めば、十分に対処可能なランクです。去年はランクが低すぎて、実習に不満があった生徒も多かったはず」

「異常原因を取り除くことが出来れば、そこに残るのはただのBランクの魔物。しかもそれ以上増えることはない。そうなれば、そこは理想的な狩り場ということになる」


 エレアノーラとレッテル先生の説明により、深く納得した。

 確かに私も不満に思った一人だ。

 一度経験したから単位の上では問題ないが、行けるものであればもう一度行きたいと考えるだろう。


「そしてここれはただの想像ですが……恐らく、殿下(・・)にとっても実戦実習ということなのでは?」


 私、いや王家の者、ということか?


「その通り。学園長は陛下からお願いされていたそう。『可能であれば、在学中に実戦らしい実戦を経験させて欲しい』と。ただし放っておく訳にもいかないから、私たちは引率」


 ……実戦らしい実戦、か。

 整えられた狩り場で魔物を倒して満足するのではなく、予測不可能な実戦を経験してこいということか。

 それが理由なら、そんな危険な調査を我々生徒に依頼するのも頷ける。


 そして二人の先生が引率ということと、エレアノーラとオリビエ嬢が一緒ということも。

 私が実戦に出るのならば、サポートとして学園トップのエレアノーラが選ばれるのは当然だろう。

 そしてエレアノーラに同行可能な先生となると、この二人が選ばれるのも当然。

 この二人ほど、エレアノーラと仲の良い先生は居ないからな。


 これで全ての疑問は払拭された。

 そうなれば答えは決まっている。


「領域の調査、承りました。全力で任に当たります」


 断る理由などどこにも無い。

 むしろこちらから願い出たいほどだ。


「エレアノーラ、オリビエ嬢、頼めるか?」


 だから私から頼むのが筋だろう。

 この二人は、謂わば巻き込まれたようなものなのだからな。


「私も構いませんわ。あまり出番はないかもしれませんが」


 オリビエ嬢が含まれているのは、回復魔法の成績が優秀だからだろうな。

 エレアノーラは回復魔法でもオリビエ嬢を上回るほどの成績だが、二人居れば格段に安全度は上がる。

 いくら実戦だからとはいえ、一人で行けという意味ではないはずだ。

 むしろどれだけ優秀な人間を連れて行けるか、という事も含まれるだろう。

 そしてその、もう一人の優秀な人間はと言えば……。


「……私も調査に加わること自体は異論ありません。ですが一つ、お願いがあるのですが」


 少しだけ考えたあと、言葉を発していた。


「三年のサイア・ラットン様を加えて頂けないでしょうか。フェルッテ子爵領の魔物の領域は森だったはず。植物に明るい者が居ると、調査の選択肢が増えますので」


 サイア・ラットンは薬学で成績トップの者だったはずだ。

 学年が違うこともあり私は面識がないのだが、エレアノーラはそうでもないということか。


「殿下、オリビエ様、よろしいですか?」

「もちろんだ」

「構いませんわ」


 薬学には薬草から毒草まであらゆる植物を取り扱う。

 他にも動物由来の薬、鉱物由来の薬にも詳しいのだから、その知識は間違いなく役立つだろう。

 諸手を挙げて賛成する。


「……あの、殿下? 本当によろしいのですか?」


 なのに、自分も賛成したはずのオリビエ嬢から考え直すような言葉をかけられた。


「サイア・ラットンは薬学では類い希なる才能を持つと聞く。協力してもらえるのならば、早期解決の助けとなると思うのだが?」


 しかも男だからな。

 なんの問題も無い。


「ですが……」

「オリビエ様、これ以上はくどいかと。レッテル先生、打診をお願いします」

「わかった」


 なおも確認しようとするオリビエ嬢を遮ってエレアノーラは話を進めてしまったが、私にも異論は無い。

 ……無いのだが、オリビエ嬢の表情を見ていると何を言いたかったのかは気になるな。


 ん? エレアノーラの機嫌が良くなった気がするが……気のせいか?

 そんなにサイア・ラットンを連れて行けるのが嬉しいということか?

 自ら男を連れて行くように進言し、それが決まれば嬉しそうにする。


 もしや、エレアノーラはその者をそんなにも気に入っているのか?


 …………何故だ、そんな事を考えると訳もなく苛立ちが募る。

 人を苦手とするエレアノーラだが、誰一人として寄せ付けないわけではない。

 気に入った人間くらい居る。レッテル先生がそうだからな。

 だから他にもそんな人間が居ると知ったところで、私が不愉快になる理由は無い。

 それが男だからと言って、特に変わるわけではないはずだ。

 無いのだが……。

 くそっ、やはり気になる。

 オリビエ嬢が言いにくそうだったのは、このことか?


「殿下が構わないということであればよろしいのですが……」

「だが、どうした」


 なんともわざとらしいタイミングでの言葉だが、正直ありがたい。

 実際に言葉で聞けば何かが変わるかもしれん。

 さぁ、私の知りたいことを教えてくれっ。




「サイア・ラットン様は男性ですが、自分は女性の心を持つと公言している方なのです。男色家としても有名ですよ?」




 ……………………………………………………。


「ある意味では女性以上に女性らしいと言われるほどのお方で、もちろん恋の対象は男性ばかり。女性には興味の無いお方なのです」


 …………なん……だと……。


「殿下の賛同を頂けて助かりました。サイア様の知識は非常に幅広いのです。きっと、調査に役立つことでしょう」


 一応は隠そうとしているようなのだが、その言葉からは嬉しそうな気配がしっかりと伝わってくる。

 つまりエレアノーラが嬉しそうだったのは、私に仕返し出来てご機嫌とだったということか!


 男色家という部分については、まぁ目をつむろう。

 私自身がそれ望んでいるわけではないが、この国では禁じられていない。余所では禁じられている国もあるそうだがな。


 それより女性の心を持つというのはどういうことだ!

 しかも女性以上に女性らしいだと!?

 体が男性でも心が女性では、それは私の苦手とする“女”ということではないか!!


 やはりまだオリビエ嬢とのことを根に持っていたのだな……確かに無理もないだろうが、まさかこんな返し方をしてくるとは……っ。

 いやそのことはあとだっ、何とかして先ほどの言葉を撤回し……。


「フェルドマン先生、顔色が悪いですが、早めにお休みになっては?」


 先生を帰して言葉を撤回させないつもりか!


「では、私たちは失礼する」

「ありがとうございます失礼します!」


 くそっ、顔色の青いフェルドマン先生の、あの助かった表情を見ると引き止められないではないか!

 いやまだだ、まだ正式に決まったわけではない。

 このあとすぐに考え直すよう進言を――


「リーエ、サイア様に面会の申し入れを」

「承知いたしました」


 直接交渉するだと!?

 エレアノーラのことだ、必ず本人の同意を取り付けるだろう。

 学園側がそのメリットを見逃すわけがないし、そのうえ本人が希望するのだから私一人の意見など通るわけがないっ。


「ルーエ、龍籠の手配を。龍はクロコとクロミにして」

「承知いたしました」


 龍籠を二つも手配するのか!?

 人が乗った籠を龍に運ばせるというのは、私の知る限り最も速く最も安全な移動手段だ。

 ここから目的地までは馬車で五日程度だが、龍籠なら一日もかからないだろう。

 だが龍の調教や飼育には莫大な金がかかるため、貴族でも所有しているのはごく僅か。


 それを二つも手配する。

 仮に無駄になったとしたら手配にかかった費用だけでもそれなりの金が出て行くというのに、それを大したことでもないという風に……。


「一つは殿下とフェルドマン先生、もう一つはサイア様を含めた女性のみで使うから、そのつもりで」


 そ、その分け方は私を気づかってと言うことかっ。

 エレアノーラは調査のためにサイア殿の助力を仰ぎ、私のために龍籠を余分に手配する。

 なのに私がサイア殿の助力を拒否したのなら個人的感情だけで調査に全力を尽くさないということになり、そのうえ気づかいを無駄にし多額の金を捨ててしまうことになる。

 私はただの愚か者ということになってしまうではないか!


 エレアノーラ……さすがとしか言い様がないな……。

 実戦に対しては始まる前から思考を巡らし万全の対策を整え、たかが嫌がらせ一つにでも本気になるその姿勢。

 なるほど、戦いというものはもう始まっているのだな……。


 いや、そもそもエレアノーラには実戦という考え自体がが無いのだろう。

 ただあらゆる状況に対し全力で当たるだけ。それがどういったものであるかなど関係ない。

 求めるのはただ最善の結果のみ。そこにたどり着くことこそが至高の命題。


 ふふっ、ふはははははっ。

 いかん、つい笑みがこぼれてしまった。

 敵いそうにないほどの存在だというのに、その存在から学ぶことが出来ると考えるとつい嬉しくなってしまったのだ。

 魔物と戦う実戦も大事だが、今回はエレアノーラの動きこそ学ばせてもらおう。

 それはきっと私の血となり肉となる。


 さぁ、サースヴェールの至宝と呼ばれるその力、存分に見せるがいいっ。


「では殿下、お膳立てはしましたので、あとの指揮はお願いいたします」


 ……何?


「どうせ魔物とは戦う事になるのです。それとは別に、殿下は指揮官としての経験を積むべきかと」


 そ、それはそうだが。


「いきなりの指揮官でも問題ないでしょう。規模の大きな作戦ではありませんし、あまりにおかしいことであれば私が助言します。むしろ安全に経験を積める、いい機会かと」


 た、確かにそうだ。だがな……。


「そんな事に躊躇していては、実戦では死にますよ?」


 くっ、そう言われると何も言えんではないか……ッ!


「……わかった。その役、全力をもって当たらせて頂こう」


 くそ、今の私では勝負にならんか……。

 オリビエ嬢との件でエレアノーラを囮に出来たのは、よほど運が良かったのだな……。


 だがエレアノーラの言うことは本当に正しい。

 またとない機会なのだ、学べることはしっかりと学ばせてもらおう。

 エレアノーラの手の上というのは少々納得いかないものではあるが……。


「期待しております、殿下」


 その嬉しそうな声が聞けただけでも、良しとするか……。





いろんな意味で、どうしてこうなった。


次回更新はまた当分先となります。(やっぱり定型文)


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