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媒介の真実は?

『しかし、制約をつけたとしても、君たちはこの国に長居しない方がいいと思う。フィスタールは妹さんに相当執着しているようだ。こちらとしても監視はするつもりだが、念のためというか……』


 ノイエさんは困ったように頭を掻いた。


『元々、調べ物の目処がついたらここは去る予定でしたが……』

『して、目処はつきそうなのか?』

『いえ、それがなかなか……ギルドからの依頼でエディ・マクレガーの生涯について調べているのですが、かの魔法使いが元の世界に帰った部分がよくわからなくてですね』


 ノイエさんに説明するラズさんの言葉に、ヌェトさんが反応した。


『エディ・マクレガー?』

『はい。“媒介”とされているものがなんなのか、それを探しています』


 ラズさんが答えると、ヌェトさんは難しい顔をして考え込んだ。


『それを調べてなんとする』

『帰還の魔法陣自体が失われたようで見つかっていませんし、媒介がなにかだけでもわかれば、と思いまして。なにせ大陸を渡ってまで探しにきた依頼です。なんらかの成果はあげたいんですよね』


 難しい顔のヌェトさんとは対照的に、ラズさんはいい笑顔だ。なにを話してるんだろう。


『ふむ……たしかに完全なる魔法陣は失われたと聞く。此度は我が配下の者がどうしようもないことをしでかしたことだし、特に秘されたことでもないし、媒介について教えよう』

『『えっ!?』』

『局長殿! よろしいのですか⁇』


 ヌェトさんの発言に、ラズさんだけでなく、サジさん、ノイエさんまで声を上げた。そんなに驚くことを言ったのかと、カイと顔を見合わせる。


『禁書に書かれていることでもなし、問題なかろう。しかし、知ってもどうにもないがな。媒介は--人の命だ』


 焦った様子のノイエさんを手で制し、ヌェトさんは静かに告げた。


『人の--命』

「え?」


 簡単な言葉はわかるらしいカイが、ラズさんの漏らした言葉に反応する。なに? なんの話⁇


『エディ・マクレガーが帰還した際、エリカディア姫の叔父であるローゼルト国王を斬ったと伝えられている。その命を媒介としてかの魔法使いは元の世界に戻ったそうだ』

『そう--ですか。では、我々の目的は果たされたといってもいいですね。妹を連れて国に戻ります』

『その方がいいだろう。君たちの身元については厳重に扱うことを誓う。あの男が妹さんの前に現れることはないだろう』

『是非そうしてください』


 最後に深々とお辞儀をしてヌェトさんとノイエさんが帰ると、部屋にはいつものメンバーだけになった。

 先ほどの会話が気になったけれど、まずは心配をかけたみんなに頭を下げる。


「助けてくれて、ありがとう。みんながいて、無事だった」


 助けに来てくれなかったら、もうダメだった。あの時点でもギリギリだったし。


「気にしなくていいのよぉ!」

「うんうん、間に合ってよかったよ」


 深刻な表情を崩し、途端にニコニコする二人に、申し訳なさが募る。彼らは仕事をおいてわたしについてきてくれたのに、また、わたしのワガママで振り回すことになるんだ。どれだけ謝っても謝りたりない。

 でも、この国に、あの男がいるこの王都に今留まるのは怖かった。


「あのね、わたし……あいつが自由になる前にこの国を出たいです。なに言ってるのかわからなかったけど、なんか粘着……執着? されてるみたいな様子だったし。ごめんなさい! 二人にはなんて謝っていいか……」

「うん、その話なんだけど」


 言いにくそうにラズさんとサジさんが目配せしあう。


「媒介についてヌェトさんが教えてくれたの。だからもう目的は達したと言ってもいいわ」

「えぇっ!?」


 このタイミングでわかったの⁇ そんなことってある⁇

 タイミングのよすぎる展開に、思わずわたしは言葉を失った。


「なんだったの? 媒介って……」

「それはあとで教えるわ。まずはこの国を出て、ナザフィア大陸に戻る手筈を整えましょう。あいつから距離を置くのが先ね。ノイエさんが言っていたんだけど、あいつ、ナギちゃんに相当ご執心みたいなの。危ないから国に戻れって言ってたわ」


 げ、やっぱり。

 むこうでも陰険眼鏡司書に嫌がらせされて、こっちでも陰険眼鏡魔法使いに狙われるとか、今年のわたしは眼鏡がアンラッキーアイテムなんだろうか。


「ごめんね、みんな。振り回して……」

「そんなこと気にすんな。ナギちゃんは笑顔が一番だって。そろそろ新年だし、馬車の数も増えるだろ。早く手配しなくちゃな」


 しょんぼりしたわたしに、ラズさんは頭をわしゃわしゃと掻き混ぜて笑ってくれた。

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