オネエとデートしましょう⁇
「ここのデザートがねえ、おいしいのよぉ!」
サジさんに拉致られるように連れてこられたのは、可愛らしいカフェだった。カイと行ったのは食堂ばかりだったから、こんな店もあるんだ、と思わずキョロキョロしてしまう。か、可愛い! 外装も店員さんの服装も可愛すぎ!
「カイはデートでもこんなとこには連れてくる奴じゃないからね、知らなかったでしょう。アタシのイチオシのお店なのよ」
「うるせえ、悪いか」
「黙りなさいこの唐変木。アンタ酒飲みだから甘いもの食べないかもだけど、大概の女の子はこういうお店が好きなのよ! 覚えときなさい」
シャーベットオレンジの日よけがかかった入り口をくぐると、ふわりと甘い匂いがした。
隣でカイが眉をしかめる。甘いもの、苦手なんだ。お酒が好きって初めて知った気がする。旅の間、飲んでる姿見たことないし。半年一緒にいても、知らないことって結構あるものだ。
「カイ、大丈夫?」
「……すまんな、自分が食べないものだから、甘いものなんて気にしたことがなかった。ナギはこういうの好きか?」
「好き! 甘いのも、可愛いのも。でもね、カイが連れてってくれるお店も好き。とってもおいしいの」
サジさんの言葉で気になったらしく、カイが訊いてきたので、正直に答える。ホントね、久しぶり。こっちきてから甘いものって果物くらいしかなくて、たまに鞄に入ってたチョコをパクついてたのはいい思い出だ。
「そうか、ありがとな」
「うん?」
ちょっと眩しそうにカイが笑う。カイが連れてってくれたところはどこもかしこも男の人ばかりなお店だったけど、味はたしかだったのだ。
ランチ時でお店は混んでいたけれど、しばらくしてわたしたちは一番奥のテーブルに案内された。まわりは女性客ばかりで、ものすごくカイは居心地悪そうだ。
というか、わたしたち浮いてない!?
改めて見ると、オネエなサジさんと、鎧を着込んだカイと、子どもに見られがちなわたし。カオスだ。そぐわないにもほどがある。
「ランチセットがオススメよ。デザートはフォガッタがイチオシね。カイは足りないならあとで露店でなにか食べればいいわ」
そんなことは一向に気にせず、ニコニコとサジさんはメニューを指差す。カイの扱い冷たくありませんか?
「いいのよお、オトコなんて優しくする価値ないわね! でも、これでもカイには優しくしてるのよ、アタシ。なにせ可愛い弟分だもの」
オネエだけど、男性にはおしなべて厳しい模様です。あ、カイが頭抱えてる。
※ ※ ※ ※ ※
サジさんオススメのランチセットはおいしかった。メインのグラタンにサラダとフルーツジュース、そしてデザートがついてきていて、いかにも女性客向けな内容だった。あ、フォガッタって言ってたのはチョコレートケーキでした。最高。
「で、アンタたち、親父殿になんの用?」
「イセルルートのことで、ちょっと」
デザートをつついていると、サジさんが単刀直入に切り出した。カイは言葉を濁して答えたけど、納得はしてないみたい。
「カイ、アタシに言えないっていうの?」
「ナギ、甘いもの好きって言ってたな、これも食うか?」
話をそらすためにカイがデザートのお皿をこちらに押しやってきた。わたしが選んだものとは違うヤツだったので、ありがたく頂戴することにする。
「カイ、ありがとう。嬉しい」
「食べたきゃ他にも注文するか?」
「ちょっと、そこ、デートっぽい雰囲気出すのヤメて。いたたまれないでしょ!」
話をそらそうとしていたのがバレたのか、サジさんがジト目で突っ込んだ。まあ、あからさまだったしね。
「デートっぽいってなに?」
「……知らないことがいい言葉っていうのもあってな」
「別に濁す単語じゃないでしょ。ナギちゃん、つまりカイとナギちゃんが恋人同士--えっと、お互いに好きな相手で、一緒に仲良くお出かけしてるみたいだって言ったのよ」
好きな人同士……つまり恋人同士ってこと!? わたしとカイが⁇
顔にカッと血がのぼるのがわかった。え、そんな風に見える? 見て、もらえる?
「からかうのはやめろ。ふざけんな変態」
一瞬舞い上がりかけたが、カイが嫌そうに言うのにスッと醒めた。そうだよね、迷惑……だよね。はぁ。
しょんぼりしたわたしの肩を、サジさんが引き寄せた。
「カイったら照れてんのよ。気にしない気にしない、ナギちゃん。んもう、可愛いんだから!」
「ひゃぁっ」
隙を見てほっぺにちゅーとか、油断できないオネエだよ!
でも、このノリ、なんだかアヤちゃんを思い出すなぁ。アヤちゃんもよくほっぺちゅーしてきたし。
わたしは可愛いものが好きで、男に興味のない幼なじみを思い出す。アヤちゃんもサジさんも、残念美形っていうくくりが同じだ。
そう思うと、途端に親近感が湧くから不思議。言い回しとか、なんか似てるんだよね。まあ、あちらはオネエでなく、正真正銘の美女なんだけど。
「サジ、おまえなにを--」
「妬かない妬かない。大体、悔しいならカイもしてみなさいよ」
「するか!」
「いらないならもらうから」
「やるか!」
もはや掛け合い漫才の域に達している二人のやりとりを聞きながら、わたしはしばし幼なじみに思いを馳せていた。なぜかわたしの幼なじみは、男嫌いな上にことさらわたしに固執しているので、わたしがこんな風に男の人と過ごしてるとか知ったら怒り狂いそう。
アヤちゃん、誤解です。片方はオネエだし、片方はわたしの片想いだよ。




