前言撤回させてください!
「長いロープとかあればよかったのにな〜。夢なのに気の利かない」
わたしは持ち物を思い出し、ため息をついた。ないものは仕方ないけれど、我ながら本当に気の利かない夢だ。普段の持ち物でサバイバルとか、なにを考えてるんだ。
ガサガサと落ち葉や枯れ枝を踏み分けながら歩く。ひたすら歩く。相変わらずあたりは薄暗いが、だいぶ目が慣れてきたせいもあり、歩くのに支障はない。なにせ視力はいいほうだし、田舎育ちなせいか夜目もきく。
「せめて森を抜けたいなぁ。第一村人発見!とかさ。なんかイベントないの?」
一時間ほど探索したが、森を抜ける様子はない。そろそろ変わらない景色にも飽きてきた。
「はー、疲れた。お茶でも飲もうかな」
ふと喉の渇きを覚えてわたしは立ち止まった。お行儀悪いがここは立ち飲みだ。倒木に腰掛けるにも、見事に苔むしてて座るのがためらわれるし。
カバンから水筒を取り出すと、中身はいつも通りのアイスティーだった。お気に入りのフレーバーティーの味に、なんだか感心した。夢なのにディテールが細かいよ。すごい。
……とか、そんな呑気なことを考えていたときもありました。
飲み終わって水筒を仕舞ったわたしは、立ち止まる前の自分の言動を呪いたくなった。
「はあぁああっ⁉︎ と、虎ぁっ⁉︎」
誰だよ、イベントが欲しいとか言った奴! わたしか! すみません!
前言撤回するので、こういう危険なイベントは不要です!